前回のビタミンB1の摂取基準と摂取量等に引き続き、今回は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」におけるビタミンB2の摂取基準と摂取量等について書きます。
Ⅱ各 論 1エネルギー・栄養素 1-6 ビタミン (2)水溶性ビタミン ②ビタミンB2
1 基本的事項
1-1 定義と分類
ビタミンB2の化学名はリボフラビン(図4)である。食事摂取基準は、リボフラビン重量として設定した。正式な化学名は7,8-ジメチル-10-〔(2R,3R,4S)2,3,4,5-テトラヒドロキシペンチル)ベンゾ[g]プテリジン-2,4(3H,10H)ディオンである。ビタミンB2にリン酸が一つ結合したフラビンモノヌクレオチド(FMN)、FMNにAMPが結合したフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)ともに、消化管でビタミンB2にまで消化された後、体内に取り込まれるため、ビタミンB2と等モルの活性を示す。

1-2 機能
ビタミンB2は、補酵素FMN及びFADとして、エネルギー代謝や物質代謝に関与している。
TCA回路、電子伝達系、脂肪酸のβ酸化等のエネルギー代謝に関わっているので、ビタミンB2が欠乏すると、成長抑制を引き起こす。また、欠乏により、口内炎、口角炎、舌炎、脂漏性皮膚炎などが起こる。
1-3 消化、吸収、代謝
生細胞中のリボフラビンの大半は、FAD又はFMNとして酵素たんぱく質と結合した状態で存在している。食品を調理・加工する過程及び胃酸環境下でほとんどのFAD及びFMNは遊離する。
遊離したFAD及びFMNのほとんどは、小腸粘膜のFMNホスファターゼとFADピロホスファターゼによって加水分解され、リボフラビンとなった後、小腸上皮細胞において能動輸送で吸収される。これらの過程は食品ごとに異なり、一緒に食べる食品にも影響を受けると推測される。我が国で食されている平均的な食事中のビタミンB2の遊離型ビタミンB2に対する相対生体利用率は、64%との報告がある。
2 指標設定の基本的な考え方
ビタミンB2は、摂取量が増えていくと、肝臓内の量が飽和し、同時に血中内の量が飽和することを示す直接的なデータはないものの、水溶性ビタミンであることから、ビタミンB1と同様の挙動を示すと考えられる。すなわち、ビタミンB2は、飽和量を満たすまではほとんど尿中に排泄されず、飽和量を超えると、急激に尿中排泄量が増大することから、この変曲点(= 飽和量)を必要量と考える。
3 健康の保持・増進
3-1 欠乏の回避
3-1-1 必要量を決めるために考慮すべき事項
ビタミンB2の必要量を、欠乏症からの回復に必要な最小量から求めた実験はない。そこで、ビタミン B2摂取量と尿中のビタミン B2排泄量との関係式における変曲点から求めた値を必要量とした。尿中へのビタミンB2排泄量から必要量を推定する場合、欠乏症を予防するに足る最小摂取量という観点から考えると、欠乏症からの回復実験による必要量に比べて多くなる。
ビタミンB2の主要な役割は、エネルギー産生栄養素の異化代謝の補酵素及び電子伝達系の構成分子である。したがって、必要量はエネルギー消費量当たりで算定すべきである。
3-1-2 推定平均必要量、推奨量の策定方法
・成人・小児(推定平均必要量、推奨量)
ビタミンB1の推定平均必要量を算定した方法と同じ方法を採用した。すなわち、尿中にビタミンB2の排泄量が増大し始める最小摂取量を推定平均必要量とした。健康な成人男性及び健康な若い女性への遊離型リボフラビン負荷試験において、約1.1mg/日以上の摂取で尿中リボフラビン排泄量が摂取量に応じて増大することが報告されている(図5の矢印)。なお、この実験時のエネルギー摂取量は 2,200 kcal/日であった。ビタミンB2は、エネルギー産生に関与するビタミンである。1〜64歳の推定平均必要量を算定するための参照値を、0.50mg/1,000kcal(1.1mg/日÷2,200kcal/日)とし、対象年齢区分の推定エネルギー必要量を乗じて推定平均必要量を算定した。推奨量は、推定平均必要量に推奨量算定係数1.2を乗じた値とした。

各々の●は平均値を示す。線は回帰直線である。1.1mgビタミンB2摂取量/日を変曲点とする。
・高齢者(推定平均必要量、推奨量)
65歳以上の高齢者における必要量は、若年成人と変わらないという報告があることから、成人(18〜64歳)と同様に、0.50mg/1,000kcalを推定平均必要量算定の参照値とし、対象年齢区分の推定エネルギー必要量を乗じて推定平均必要量を算定した。推奨量は、推定平均必要量に推奨量算定係数1.2を乗じた値とした。
・妊婦の付加量(推定平均必要量、推奨量)
(略)
・授乳婦の付加量(推定平均必要量、推奨量)
(略)
3-1-3 目安量の策定方法
・乳児(目安量)
(略)
3-2 過剰摂取の回避
3-2-1 摂取源となる食品
通常の食品で可食部100g当たりのビタミンB2含量が1mgを超える食品は、肝臓を除き存在しない。通常の食品を摂取している者で、過剰摂取による健康障害が発現したという報告は見当たらない。
3-2-2 耐容上限量の策定
リボフラビンは、水に溶けにくく、吸収率は摂取量が増加するとともに顕著に低下する。また、過剰量が吸収されても、余剰のリボフラビンは速やかに尿中に排泄されることから、多量摂取による過剰の影響を受けにくい。偏頭痛患者に毎日400mgのリボフラビンを3か月間投与した実験や、健康な者に 11.6mgのリボフラビンを単回静脈投与した場合においても健康障害がなかったと報告されている。したがって、ビタミンB2の耐容上限量は設定しなかった。なお、単回のリボフラビン投与による吸収最大量は、約27mgと報告されており、一度に多量摂取する意義は小さい。
3-3 生活習慣病の発症予防
ビタミンB2摂取と生活習慣病の発症予防の直接的な関連を示す報告はないため、目標量は設定しなかった。
4 生活習慣病の重症化予防
ビタミンB2摂取と生活習慣病の重症化予防の直接的な関連を示す報告はないため、生活習慣病の重症化予防を目的とした量は設定しなかった。
5 活用に当たっての留意事項
推定平均必要量は、舌縁痛、口唇外縁痛が起こり、歯茎、口腔粘膜より出血という欠乏症を回避する最小摂取量からではなく、体内飽和を意味すると考えられる尿中排泄量が増大する最小摂取量から算定しているため、災害時等の避難所における食事提供の計画・評価のために、当面の目標とする栄養の参照量として活用する際には留意が必要である。
ビタミンB2の食事摂取基準及び私の摂取量と摂取源としている主な食品
ビタミンB2の食事摂取基準(mg/日)

ビタミンB2の摂取量
私の現在のビタミンB2の摂取量は、推奨量1.5mg/日を0.32mg上回る1.82mg/日であり、必要とする量を多少の余裕を持って摂取出来ていると考えています。
ビタミンB2の主要な摂取源
多様な食品をバランス良く
生命と健康長寿に必要な栄養素や機能性成分を出来るだけ多く含み、かつ、命と健康に悪い成分が出来るだけ少ない多様な食品をバランス良く食べるよう心がけています。
しかしながら、ビタミンB2も、前回書きましたビタミンB1同様、ビタミンA、ビタミンDやビタミンEに比較すれば多くの食品に含まれてはいますが、ビタミンB2摂取量上位2食品(ブロッコリー、鶏卵)だけで、全摂取量1.82mg/日中0.53mg/日を摂取していて、仮に、両食品を摂らなければ、ビタミンB2の摂取量は1.29mg/日となり、推奨量1.5mg/日に対して若干ながら不足することになります。
また、他の食品からの摂取量は、一つ一つの食品からの摂取量は多くはありませんが、塵が積もって山となっていて、即ち多様な食品をバランス良く食べることによって推奨量を満たしていることにもなっています。
なお、ブロッコリーや鶏卵は、ビタミンB2に限らず、多くの栄養素の主要な摂取源となっていて大変優れた食品だと考えています。
ビタミンB2の摂取源としている食品(上位20食品)
下記の各表は、私が常食している全ての食品を「食品成分データベース」で検索して得られた結果をNumbersで集計したビタミンB2の摂取量が多い上位20食品です。(単位:mg)
なお、当然ながら食べている食品の種類は日々異なりますが、これらの食品の多くはほぼ毎日食べているものであり、頻度が少ないものでも1週間に1回以上は食べています。
また、それぞれの摂取量も日によって変動しますので1日当たりの概算的な平均摂取量です。
食品 | ブロッコリー | 鶏卵 | ナッツ類 | ヨーグルト | 納豆 | バナナ | 乾燥ワカメ | むき甘栗 | 鯖缶 | 酒粕 |
食品摂取量(g) | 124 | 63.6 | 28.7 | 100 | 40.0 | 157 | 6.0 | 33.3 | 15.8 | 20.0 |
ビタミンE摂取量(mg) | 0.29 | 0.24 | 0.18 | 0.17 | 0.14 | 0.06 | 0.06 | 0.06 | 0.06 | 0.05 |
食品 | 榎茸 | 人参 | ブナシメジ | 豆乳 | 舞茸 | 鰯缶 | 鮭 | 黒胡麻 | 鶏胸肉 | オートミール |
食品摂取量(g) | 27.0 | 71.9 | 25.0 | 200 | 19.0 | 11.7 | 23.3 | 20.0 | 23.3 | 30.0 |
ビタミンE摂取量(mg) | 0.05 | 0.04 | 0.04 | 0.04 | 0.04 | 0.04 | 0.03 | 0.03 | 0.03 | 0.02 |
まとめ
推奨量を満たすビタミンB2の摂取
前回、ビタミンB1はビタミンB群の中でも不足しやすいと書かれている情報が多いと書きましたが、ビタミンB2も不足しやすいビタミンのようです。
多様な食品をバランス良くでも書きましたとおり、一般的な食品に含まれているビタミンB2も少ないため、推奨量を満たすだけのビタミンB2を摂取するためには、少しでもビタミンB2を含む食品を一品でも多く食べることが必要であることに加えて、ビタミンB群は水溶性で体内で貯蔵出来ないため、毎日、コツコツと摂取し続けることが必要だと考えています。
チームプレーで働くビタミンB群
前回、ビタミンB1は解糖系とクエン酸回路(TCA回路)における補酵素としても必要不可欠なビタミンであると書きましたが、ビタミンB2は、解糖系とクエン酸回路(TCA回路)に加えて、たんぱく質や脂質からのエネルギー代謝における補酵素としても必要不可欠なビタミンです。
また、たんぱく質や脂質からのエネルギー代謝においても、解糖系同様、ビタミンB2以外のビタミンB群も補酵素として必要であり、他のビタミンが全て揃っていても、一種類のビタミンが不足しただけでエネルギー代謝が滞ることになりますので、様々な食品から各々のビタミンの必要量を満たすことが必要だと考えています。
次回は、ナイアシンの摂取基準と摂取量等について書きます。
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今回は、ビタミンB2の機能をイメージした画像を作成してもらいました。
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