前回までに引き続いて、今回は「その1 多様な食品をバランス良く食べることについて」で書いた「日常的に食べている主な食品等」のうち、胡桃、アーモンド、カシューナッツに含まれている栄養素と機能性成分について書きます。
胡 桃
胡桃に含まれる栄養素
胡桃を含む種実類(しゅじつるい)は表面が硬い殻で覆われていて食用になる植物の種子や果実の総称であり、種実類のうち、木になる種実をナッツと呼んでいます。
種実類は、限られた体積に十分なエネルギーを蓄える必要があるため一般的に脂質が多く、かつ、アミノ酸バランスが良い蛋白質やミネラル、ビタミン、機能性成分を豊富に含んでいるものが多いです。
胡桃の2/3以上(約69%)は脂質であり、脂質のうちの約60%がω6系多価不飽和脂肪酸(リノール酸)、約15%が一価不飽和脂肪酸、約13%がω3系多価不飽和脂肪酸(α-リノレン酸)、約10%が飽和脂肪酸です。
YouTube等のネット上では、『胡桃には健康に良いω3系多価不飽和脂肪酸が豊富』といった情報が溢れていますが、実際にはω6系がω3系の4倍以上含まれていますので『胡桃は、他の食品と比べたらω3系多価不飽和脂肪酸の比率が高い方である。』ということです。
ω3系とω6系の比率は、一般的にω3系:ω6系=1:2〜4が良いとされていますが、ω3系の比率を高めようと胡桃を食べれば食べるほど、返ってω6系の比率が高まることに注意が必要です。
蛋白質も比較的豊富(約15%)であり、9種類の必須アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、トリプトファン)がバランス良く含まれています。
ミネラルの中では浸透圧調整やナトリウム排出作用があるカリウム、様々な代謝に必要不可欠なマグネシウムや亜鉛、ビタミンの中では過酸化脂質の生成を抑制し強い抗酸化作用を有するEやエネルギー代謝における補酵素として必要不可欠なB群(B12を除く。)が比較的豊富に含まれています。
胡桃に含まれる栄養素の一般成分、脂肪酸とアミノ酸については、下記「食品成分データベース」の検索結果をご参照ください。
胡桃に含まれる機能性成分
胡桃については前項のω3系多価不飽和脂肪酸に注目が集まっていますが、胡桃には機能性成分であるポリフェノールも豊富に含まれています。
胡桃に含まれるポリフェノールについて、「国産および輸入クルミのポリフェノールと in vitro 抗酸化能」(日本食品科学工学会誌 第62巻 第1号)に次のとおり書かれています。
胡桃について、クルミにはエラグ酸と関連するポリフェノールが含まれ、in vitro でのLDL酸化を抑制することを報告し、エラジタンニン類の存在が示唆された。 クルミの種皮にはポリフェノールが存在していて、成分は加水分解性タンニンモノマー、ダイマー、複合型タンニン、カテキン、エラグ酸誘導体である。 クルミ中の主要なポリフェノールは加水分解性タンニン類で、中でもエラジタンニンモノマーが多く、主な化合物はペドゥンクラジン、テリマグランジン、カスアリクチン、テリマグランジンンルゴシン C、カスアリニン、エラグ酸等である . 他にも肝保護作用や高脂血症改善作用、糖尿病予防作用が報告されている。 |
胡桃に含まれるポリフェノール量については、国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)」の「機能性成分含有量情報(種実類)」をご参照ください。
アーモンド
アーモンドに含まれる栄養素
アーモンドの半分以上(約54%)は脂質であり、脂質のうちの約65%が一価不飽和脂肪酸、約23%がω6系多価不飽和脂肪酸、約8%が飽和脂肪酸で、ω3系多価不飽和脂肪酸はほとんど含まれていません。
(オリーブ油に多く含まる)一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸にLDLコレステロール値を下げる作用があるという説もありますが、一価不飽和脂肪酸は人体内で合成できる(必須脂肪酸ではない)ため、ω3系やω6系の多価不飽和脂肪酸とは異なり、「日本人の食事摂取基準」において摂取基準(目安量)は定められていません。
YouTube等のネット上では、脂質の観点で胡桃とアーモンドを同列に扱っている場合がありますが、両者に含まれている脂質の種類毎の比率は全く異なることに留意しておくことが必要だと思います。
蛋白質は胡桃の約4/3(約20%)と豊富であり、9種類の必須アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、トリプトファン)がバランス良く含まれています。
ミネラルの中では浸透圧調整やナトリウム排出作用があるカリウム、様々な代謝に必要不可欠なマグネシウムや亜鉛、ビタミンの中では過酸化脂質の生成を抑制し強い抗酸化力を有するEやエネルギー代謝における補酵素として必要不可欠なB2が豊富に含まれています。
アーモンドに含まれる栄養素の一般成分、脂肪酸とアミノ酸については、下記「食品成分データベース」の検索結果をご参照ください。
アーモンドに含まれる機能性成分
アーモンドには、イソラムネチン他のポリフェノールが含まれています。
産総研の「ポリフェノールが持つ心房細動の予防効果を発見」によると、イソラムネチンの投与が心房細動の発症の予防に有効であるとのことです。以下はその概要です。
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という) 食薬資源工学オープンイノベーションラボラトリ 青沼 和宏 産総研特別研究員、富永 健一 副ラボ長、国立大学法人 筑波大学(以下「筑波大」という) 生命環境系 礒田 博子 教授、医学医療系 許 東洙 准教授は、天然に存在するポリフェノールの一種であるイソラムネチンが不整脈の一種である心房細動の発症を予防する生理活性を持つことを見いだしました。 心房細動の発症に深く関与するアンギオテンシン IIの負荷により心房細動を誘発させたマウスを用いて、イソラムネチンの予防効果を評価しました。その結果、アンギオテンシン IIを負荷する前に、イソラムネチンを予防投与することで心房細動の発症に関連する心房の電気的リモデリングと構造的リモデリングの両方が同時に改善されることを確認しました。これら心房のリモデリングを同時に改善する医薬品はこれまでありませんでした。イソラムネチンの投与は、心房細動の発症を予防するアップストリーム治療法として期待されます。 |
アーモンドに含まれるポリフェノール量については、国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)」の「機能性成分含有量情報(種実類)」をご参照ください。
カシューナッツ
私が常食している「ナッツ&フルーツ」という商品に胡桃、アーモンドとカシューナッツの3種類のナッツが含まれていますが、前2者については前述しましたのでカシューナッツに含まれる栄養素と機能性成分について書きます。
カシューナッツに含まれる栄養素
エネルギー、蛋白質、脂質、利用可能炭水化物、食物繊維について、3種類のナッツ(胡桃、アーモンド、カシューナッツ)の含有量を比較すると下記表のとおりとなります。同表のとおり、カシューナッツは蛋白質と利用可能炭水化物が多く、エネルギー、脂質、食物繊維が少ないという特性があります。
1 | 2 | 3 | |
エネルギー | 胡桃 713kcal | アーモンド 608kcal | カシューナッツ 591kcal |
蛋白質 | アーモンド 20.3g | カシューナッツ 19.8g | 胡 桃 14.6g |
脂 質 | 胡 桃 68.8g | アーモンド 54.1g | カシューナッツ 47.6g |
利用可能炭水化物 | カシューナッツ 20.2g | アーモンド 10.9g | 胡 桃 3.7g |
食物繊維 | アーモンド 11.0g | 胡 桃 7.5g | カシューナッツ 6.7g |
カシューナッツの脂質については、一価不飽和脂肪酸が約58%、飽和脂肪酸が約21%、ω6系高脂肪酸(リノール酸)が約17%であり、ω3系多価脂肪酸は僅か0.2%しか含まれていません。
一価不飽和脂肪酸についてはアーモンドの項を参照してください。
9種類の必須アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、トリプトファン)がバランス良く含まれています。
ミネラルの中では様々な代謝に必要不可欠なマグネシウムや亜鉛、ビタミンの中ではエネルギー代謝における補酵素として必要不可欠なB群(B12を除く。)が比較的豊富に含まれています。
カシューナッツに含まれる栄養素の一般成分、脂肪酸とアミノ酸については、下記「食品成分データベース」の検索結果をご参照ください。
カシューナッツに含まれる機能性成分
カシューナッツの機能性成分としては、ポリフェノールが含まれていますが、カシューナッツのポリフェノールの特異的な機能性についての資料を見出すことは出来ていません。
カシューナッツに含まれるポリフェノール量については、国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)」の「機能性成分含有量情報(種実類)」をご参照ください。
また、ポリフェノールの一般的な機能性については、健康長寿ネットの「ポリフェノールの種類と効果と摂取方法」をご参照ください。
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