前回の水の摂取基準と摂取量等に引き続き、今回と次回は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」における高齢者の特性等について書きます。先ず今回は、高齢者におけるエネルギー代謝、栄養と健康、フレイル及びサルコペニアと栄養の関連等について書きます。
Ⅱ各 論 2対象特性
2-1 妊婦・授乳婦(略)
2-2 乳児・小児(略)
2-3 高齢者
1 はじめに
我が国では急速に高齢化が進展しており、平成29年の高齢化率(65歳以上人口割合)は27.3%、75歳以上の人口割合は13.3%となっている。
近年、超高齢社会における栄養の問題として、健康寿命の延伸や介護予防の視点から、過栄養だけではなく、75歳以上のいわゆる後期高齢者(以下「後期高齢者」という。)が陥りやすい「低栄養」の問題の重要性が高まっている。
脳卒中を始めとする疾病予防の重要性は言うまでもないが、後期高齢者が要介護状態になる原因として無視できないものとして、「認知症」や「転倒」と並んでフレイル(frailty)があり、低栄養との関連が極めて強い。また、高齢者の身体機能障害の危険因子、転倒の危険因子として加齢に伴う筋力の減少又は老化に伴う筋肉量の減少(以下「サルコペニア」(sarcopenia)という。)も注目されている。この病態はフレイルとも関連が強く、転倒予防や介護予防の観点からも重要である。
また、認知症は、要介護状態に至る原因の一つである他、医療、介護、福祉、その他多くの分野に関わるという点で、超高齢社会が抱える大きな課題である。最近の調査によると、認知症の有病率は、65歳以上の高齢者では15%にも及ぶと推定されている。高齢者の更なる増加が予測されている我が国にとって、認知症予防の重要性は言うまでもない。そこで、本項では、各栄養素の食事摂取基準の項における要点を整理するとともに、フレイルとそれに関連するサルコペニアの予防及び認知症並びに認知機能障害の予防と栄養素等との関連について、最新の知見を紹介する。
2 基本的事項
2-1 エネルギー代謝
基礎代謝は、加齢とともに減少し、縦断調査の結果からおおよそ10年の経過により1〜3%程度減少し、特に男性での減少率が大きいことが報告されている。この現象は、加齢に伴う除脂肪組織の減少によることが想定され、実際に、除脂肪組織量で調整しても高齢者では成人に比較し5%程度基礎代謝量が低いことが報告されているが、その原因は十分解明されていない。また、加齢に付随する基礎代謝量の減少は、必ずしも直線的に変化するわけではなく、男性では40歳代、女性では 50歳代に著しく減少することが報告されている。女性の場合は、閉経後の除脂肪組織が減少するためと考えられる。
食事誘発性体熱産生は、総エネルギー消費量の10%程度に相当し、この食事誘発性体熱産生については、加齢とともに減少するとの報告もあれば、加齢による影響は受けないとする報告もあり、一定の結論に至っていない。
2-2 たんぱく質代謝と筋肉
食事摂取により骨格筋のたんぱく質合成が増加し、一方でたんぱく質異化は減少する。これは、食事摂取により増加する栄養素及びホルモンによるものである。特に、血中のアミノ酸やインスリンの増加は、食後の骨格筋たんぱく質同化作用の主要な要因として理解されている。一方、筋肉において炎症性サイトカイン、酸化ストレス、グルココルチコイドなどの刺激により様々なたんぱく質分解酵素を介して異化が起こる。この異化を導く刺激が強いと、アミノ酸などによるたんぱく質の同化を上回り、筋肉は萎縮する。
アミノ酸の全てに骨格筋たんぱく質同化作用があるわけではなく、不可欠アミノ酸(必須アミノ酸)、特にロイシンに強い筋たんぱく質同化作用が存在することが知られている。すなわち、これらの不可欠アミノ酸は、たんぱく質合成の基質となる役割のほか、筋たんぱく質合成を誘導する重要な mammalian/mechanistic target of rapamycin complex(mTORC)1やその下流のシグナルの活性化を介して同化作用を誘導する作用がある。
運動、特にレジスタンス運動によって筋たんぱく質合成がmTORC1を介して誘導されることが知られているが、アミノ酸が十分に供給されない空腹時に運動を実施すると、筋たんぱく質合成よりも異化反応が亢進し、正味たんぱく質量が減少する。したがって、筋たんぱく質合成に最も有効なのは運動(特にレジスタンス運動)とアミノ酸の供給を同時期(運動後1時間程度後)に実施することである。一方で、食後(たんぱく質摂取後)に誘導される筋たんぱく質合成は、高齢者では成人に比較して反応性が低下しており、同化抵抗性(anabolic resistance)が存在すると報告されている。
2-3 高齢者における栄養と健康
2-3-1 高齢者の栄養管理上の問題点
栄養評価の方法は、種々提案されてはいるが、今のところ絶対的な評価法はない。一般的に栄養状態の評価として身体計測が広く用いられている。例えば、BMIは栄養アセスメントの項目としては最重要項目であり、種々の評価法の中に組み込まれている。このBMIの値を得るには身長と体重の値が必要であるが、高齢者における身長や体重の測定には多くの問題がある。
一般に、身長測定は立位で行うが、要介護高齢者では極度の亀背や筋肉・関節の拘縮のため身長が測定できない場合が稀ではない上、寝たきり又は立位困難な高齢者に立位での身長測定を行うと過小の測定値となる可能性がある。また、立位保持ができたとしても、椎体の骨折、更には関節腔の狭小化のため、成人のときに比較して明らかに身長の短縮が起こる。たとえ体重が成人のときと同じであったとしても、加齢とともに身長の短縮が起こり、BMIの値は上昇する。体重についても、要介護高齢者では日常生活動作(activity of daily living:ADL)障害のため、特別な測定機器がなければ在宅での体重測定が困難な場合がある。このように、高齢者では成人において栄養評価として一般的に使用される身体計測値が得られにくく、たとえ得られたとしても成人と同一の解釈でよいかどうか判断が難しいという問題がある。また、BMIに代わって上腕周囲長計測値を使用する報告もあるが、まだ一般的ではない。
こうした様々な要因が、高齢者の栄養管理を困難にしており、栄養素等摂取量の減少等を通じて、健康障害につながっていると考えられる。
2-3-2 低栄養・過栄養
加齢に伴う生理的、社会的及び経済的問題は、高齢者の栄養状態に影響を与える。表1に高齢者の代表的な低栄養の要因を挙げた。

過栄養は、肥満症、糖尿病、脂質異常症、高血圧、メタボリックシンドロームなどにつながり、ひいては動脈硬化性疾患を誘導する。しかしながら、このような過栄養は高齢者、特に後期高齢者に対しても、成人と同様に生命予後に著しい影響を与えるか否かは議論のあるところである。高齢者では、内臓脂肪が蓄積しやすく、メタボリックシンドロームの有症率が高いことは知られているが、一方で心血管病が関わる生命予後、全生命予後については、メタボリックシンドロームの存在の影響が少ないことが報告されている。さらに、血清コレステロール値や肥満の生命予後に与える影響も、加齢とともに少なくなることが知られている。
欧米からの報告では、過栄養(BMIが30kg/m2以上)の存在もフレイルに関連していることが報告されているが、一方で、BMIが低いこともフレイルのリスクであり、BMIとフレイルのリスクとの関係はいわゆるU字型であると考えられる。
3 フレイル及びサルコペニアと栄養の関連
3-1 基本的概念と高齢者に与える影響
フレイルとは、老化に伴う種々の機能低下(予備能力の低下)を基盤とし、様々な健康障害に対する脆弱性が増加している状態、すなわち健康障害に陥りやすい状態を指す。健康障害の中にはADL障害、要介護状態、疾病発症、入院や生命予後などが含まれる。フレイルは、老化の影響のみならず、併存症(comorbidity)の影響を当然受けている。この病態は、単一の疾患などによるものや単一臓器の機能低下によるものよりも、臨床的な症状は呈していないものの、多くの臓器の機能低下に起因することも多い。
フレイルは、要介護状態に至る前段階として捉えることができ、介護予防との関連性が高い状態と言える。実際、後期高齢者の要介護状態に至る原因は、脳卒中のような疾病よりも「高齢による衰弱」を要因とする割合が高くなる。Fried らは、表2に挙げた5項目、すなわち①体重減少、②主観的疲労感、③日常生活活動量の減少、④身体能力(歩行速度)の減弱、⑤筋力(握力)の低下、のうち3項目が当てはまればフレイルとし、1〜2項目が当てはまる場合はフレイル前段階と定義した。

一方、サルコペニアは造語であり、「加齢に伴う筋力の減少又は老化に伴う筋肉量の減少」を指す。2010年にヨーロッパ老年医学会、更には栄養学に関連する四つのヨーロッパ又は国際学会が共同で European Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)を立ち上げ、表3のようなサルコペニアの定義を提唱した。すなわち、筋肉量の減少を必須として、それ以外に筋力又は身体能力の低下のいずれかが存在すれば、サルコペニアと診断するという定義である。それぞれの項目についてのアジア人のカットオフ値が、Sarcopenia in Asia: consensus report of the Asian Working Group for Sarcopenia から提唱されている。
フレイルの診断項目には、身体機能の減弱や筋力の低下が組み込まれており、サルコペニアとフ
レイルは密接な関連があることが分かる。サルコペニアの存在は、高齢者の「ふらつき」、「転倒・
骨折」、更には「フレイル」に関連し、身体機能障害や要介護状態との関連性が強い。

3-2 フレイル及びサルコペニアの病態と栄養
フレイルの原因の一つに、サルコペニアが存在する。サルコペニアの要因は、いまだ十分解明されているわけではない。図1はFriedらの論文を参照し改変したものであるが、低栄養が存在すると、サルコペニアが発症し、それが活力低下、筋力低下・身体機能低下を誘導し、活動度、消費エネルギー量の減少、食欲低下をもたらし、更に栄養不良状態を促進させるというフレイル・サイクルが構築される。

3-3 たんぱく質
3-3-1 たんぱく質摂取と高齢者の健康維持
近年、先進国での人口の高齢化、平均寿命の延伸を背景に、要介護状態になることなくできるだけ自立した生活を目指すという健康寿命の延伸の重要度が高まる中で、将来の身体機能障害との関連が強いフレイルとサルコペニアの予防の重要性が注目されている。この予防は、骨格筋とその機能維持である。骨格筋量、筋力、身体機能は栄養素ではたんぱく質摂取量と強く関連するため、たんぱく質の重要性が注目されている。
3-3-2 たんぱく質摂取とサルコペニア及びフレイルの関係(観察研究)
アメリカの地域在住の70歳代の高齢者を3年間観察した研究では、3年間の除脂肪体重の減少が、登録時の総エネルギー摂取量当たりのたんぱく質摂取に依存し、五分位でエネルギー摂取量当たりのたんぱく質摂取量が最も多い群(平均91.0g/日、1.2 g/kg体重/日)では、最も低い群(平均56.0g/日、0.8g/kg体重/日)に比較し、交絡因子調整後においても除脂肪体重の減少が40%抑制されていた。また、イタリアのコホート研究でも、たんぱく質摂取量が少ないことは、3年後の筋力の低下と関連していた。
フレイルとたんぱく質摂取の関連について、日本人の地域在住高齢者の横断研究では、男性48g/日、女性43.3g/日以上のたんぱく質摂取は、これよりも少ない量を摂取している場合に比べて、有意にフレイルのリスクが低いと報告されている。また、別の日本人の高齢女性2,108人(平均±標準偏差:年齢 74.7±5.0歳、体重51.4±7.8kg、BMI 22.7±3.2 kg/m2)を対象にした横断調査では、1日のたんぱく質摂取量を五分位階級別に検討すると、たんぱく質摂取が最も低い群(62.9g/日未満)と比較し、たんぱく質摂取量が多い群ほどフレイルと診断される対象者は少なかった。また、多変量解析では、第三階級(69.8〜76.1g/日)以上の群において、フレイルと判定されるオッズ比が有意に低下〔第三階級のオッズ比(95%信頼区間)、0.64(0.45〜0.93)〕していた。この研究は、先の研究よりも全体的にたんぱく質摂取量が多い集団を対象としているが、このような条件でも、たんぱく質摂取量の多さは、フレイルのリスクの低下と関連していた。
また、フランスでの横断研究では、1.0 g/kg/日以上のたんぱく質摂取は、フレイルのリスク低下と有意に関連していたと報告されている。
また、アメリカの女性のみのコホート研究では、1.1g/kg/日以上のたんぱく質摂取が3年後のフレイルの発症リスク低下と関連していたとし、スペインの地域在住高齢者のコホート研究では、1.28g/kg/日以上のたんぱく質摂取は、3年半後のフレイルの発症リスクを低減したと報告されている。我が国の研究を含む四つの横断研究と海外の三つの縦断研究のシステマティック・レビューの結果では、たんぱく質摂取量が多いことが、フレイルの発症リスク低下と関連すると結論付けられている。
3-3-3 たんぱく質及びアミノ酸の介入研究
高齢男性において、食事の調整によってたんぱく質摂取量が0.8g/kg体重/日(15 人)と1.6g/kg 体重/日(14 人)の2群に分けて10週間で比較した試験では、0.8g/kg 体重/日の群では筋肉量が減少したのに対し、1.6g/kg体重/日の群では維持できたと報告されている。
一方、通常の食品以外の食品としてアミノ酸やたんぱく質を用い、その摂取が筋肉量に与える影響を検討した介入研究をまとめた二つのシステマティック・レビューでは、ともに、筋肉量や筋力への有意な改善効果は認められなかった。ただし、対象者や介入方法に大きなばらつきがあり、介入へのアドヒアランスの問題などの可能性もあることから、更なる研究が必要である。
一方で、レジスタンス運動を中心とした運動療法と栄養療法を組み合わせた介入試験も多く実施されている。最近発表された17の介入試験の結果のメタ・アナリシスによると、運動とたんぱく質の補充との組合せによって、運動単独に比べて、有意に優れた筋肉量と筋力の改善が得られることが報告されている。サルコペニアの予防のためには、十分なたんぱく質を摂取することとともに、主にレジスタンス運動を合わせて実施することも重要であると考えられる。
3-3-4 たんぱく質摂取と腎機能
腎機能の低下した高齢者では、高たんぱく食の摂取による腎機能への影響について注意が必要である。実際、2.0g/kg体重/日の高たんぱく食摂取により、健康な高齢者でも腎障害のリスクが上昇すると報告されている。また、軽度の腎障害のある高齢女性〔estimated glomerular filtra-tion rate (eGFR):55〜88mL/分/1.73m2〕を対象とした前向きコホート研究では、高たんぱく食摂取(>1.3 g/kg体重/日)により、腎機能が悪化する(10g/日のたんぱく質摂取の増加に伴い、11 年間で eGFR7.72mL/分/1.73m2低下)と報告されている。しかし、慢性腎臓病の項にあるように、高齢者でも軽度の腎機能障害(ステージG3a:eGFR45〜60mL/分/1.73 m2)では、一律にたんぱく質制限を行うのではなく、個々の病態に応じて設定する必要があるとされている。
3-3-5 たんぱく質の推奨量
推奨量は、推定平均必要量から算出されたものであることから明らかなように、新たな疾病発症を予防するために設けられている指標ではない。また、たんぱく質の推定平均必要量及び推奨量は窒素出納維持量を基に算出されている。これは、比較的に短期間の介入試験によって測定された値に基づくため、加齢が進む高齢者における長期間の健康維持を保証するものではない。
3-3-6 たんぱく質の目標量
たんぱく質の目標量は、生活習慣病の発症予防を目的とした指標であり、フレイルの発症予防も視野に入れて設定されたものである。また、サルコペニアの発症予防も考慮されている。
さらに、フレイルやサルコペニアに陥り、今後骨格筋の増量を図らねばならない高齢者にとっては、窒素消失を満たすだけのたんぱく質の摂取では不十分である可能性が高い。例えば、定められた推奨量に準じたたんぱく質を2週間摂取させたアメリカの研究では、高齢者の除脂肪体重は2週間後には明らかに減少していた。このように、高齢者の骨格筋のたんぱく質同化作用を期待するには、成人と同等以上のたんぱく質量を摂取しなければならない可能性がある。また、過去の疫学研究で体重当たりのたんぱく質摂取量と四肢骨格筋量の関係は、たんぱく質摂取量が少なくなるにつれ、四肢骨格筋量が減少するとの報告がある。また、高齢者では同化抵抗性が存在しており、アミノ酸が筋肉に供給されたとしても筋たんぱく質同化作用が成人に比較して弱い可能性がある。十分量のたんぱく質摂取やアミノ酸摂取により、高齢者においても成人と同等の筋たんぱく質の合成が起こることが報告されている。
以上のように、高齢者のサルコペニア予防には十分なたんぱく質を摂取する必要性が指摘されている。良質なたんぱく質を毎食25〜30g 程度摂取するためには、理論上、1日75g以上のたんぱく質を摂取することが必要であり、例えば60〜70kgの体重の高齢者では、たんぱく質1.0〜1.25 g/kg 体重/日以上を摂取する必要があるとする指摘もある。今回算定された目標量は、参照体位を想定した限りにおいては、この摂取量以上になっている(たんぱく質、表8を参照のこと)。
3-4 ビタミン D
ビタミンDは、カルシウム代謝や骨代謝に密接に関わっており、高齢者においては骨粗鬆症との関連が以前より注目されている。ビタミンDは、腸管でのカルシウム吸収を促すことから、カルシウム摂取量が相対的に少ない日本人にとって重要な栄養素である。近年、ビタミンDは骨以外の骨格筋などの組織にも何らかの本質的な役割を果たしている可能性が示唆されている。高齢者を対象とした三つの横断研究及び一つの縦断研究(合計3,000人程度)から、血中25-ヒドロキシビタミンD濃度が25ng/mL未満であると身体機能の低下、筋力の減少、血中副甲状腺ホルモン濃度の増加、転倒及び骨折のリスクが高いことが報告されている。17の横断研究と五つの縦断研究の結果をまとめたメタ・アナリシスでも、血中ビタミンDの不足状態が、筋力の低下と関連すると結論付けられた。このほか、複数の横断研究の結果が、血中25-ヒドロキシビタミンD濃度が20ng/mL/未満であるとフレイルのリスクが高いことで一致しており、七つの前向きコホート研究のシステマティック・レビューでも、低ビタミンD状態は、フレイルの発症リスクとなると結論付けられている。
幾つかの介入試験の結果、ビタミンD欠乏に対する10〜20µg/日のサプリメントによるビタミンDの摂取は、身体機能や筋力を向上させ、転倒や骨折のリスクを下げるが、血中ビタミンDが不足していない(血清25-ヒドロキシビタミンDが20ng/mL以上)対象者や筋力が低下していない対象者に対して、サプリメントによるビタミンD摂取の効果はあまり期待できないと示され、幾つかのメタ・アナリシスでも同様の結論が示されている。また、ビタミンDのサプリメント量を20µg/日以上に増やしても、それ以上の効果は期待できないとする報告もある。
なお、ビタミンDは、紫外線を浴びることにより皮膚でも産生されるため、適度な日光浴は有効な手段である。
3-5 その他の栄養素
高齢者では、加齢に伴いフリーラジカル産生が増加し、種々の臓器障害に関連していることが知られている。そのため、これらに関連する栄養素、例えばビタミンC、ビタミンE、カロテン類、亜鉛、セレン、マンガンについて、これらの生体内濃度やこれらの摂取量と身体機能低下やフレイル、サルコペニアとの関連が検討されている。しかしながら、研究の質・量ともに十分でなく、結果も十分な一致が得られていない。ミネラル摂取量とサルコペニアとの関連を検討した研究をまとめたメタ・アナリシスでも、検討したミネラルにそれぞれ一つずつ研究が存在した程度で、結論を下すには十分ではなかった。
また、加齢に伴い、血漿ホモシステイン濃度は上昇し、この血中濃度の上昇は多様な疾患発症との関連が報告されている。また、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸は、いずれが欠乏してもホモシステインが上昇する。しかしながら、これら栄養素とフレイルやADL障害の独立した要因か否かについては、いまだ十分な科学的根拠が得られていない。
次回は、認知機能低下及び認知症と栄養との関連、高齢者における食事摂取基準等について書きます。
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