前回のたんぱく質の摂取量と摂取源としている主な食品等に引き続いて、今回は、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」における不可欠アミノ酸(必須アミノ酸)に関する記述の要点と摂取状況について書きます。
「日本人の食事摂取基準(2020版)」における不可欠アミノ酸に関する記述の要点
〈参考資料〉 不可欠アミノ酸の必要量
たんぱく質の栄養価は、それを構成するアミノ酸(特に不可欠アミノ酸)組成により評価され
る。ヒトの必要とする個々の不可欠アミノ酸量がその評価の基準となるため、不可欠アミノ酸必要
量を正確に把握することは重要である。
2007 年にWHO/FAO/UNU から報告された成人の不可欠アミノ酸の必要量を参考表に示す。ただし、上記のアミノ酸必要量の測定では、測定しようとするアミノ酸の摂取量を不足から過剰の範囲で変
化させ、その他の全てのアミノ酸の必要量は満たされた条件に設定されている。したがって、参考
表の合計の不可欠アミノ酸(総不可欠アミノ酸)量を摂取しても全てのアミノ酸の必要量が満たさ
れるわけではないことに注意すべきである。
食品中のたんぱく質のアミノ酸スコアは、化学的に分析された食品中のアミノ酸組成を用いて計
算されたものである。しかし、ヒトが摂取する場合は、たんぱく質の消化吸収率やアミノ酸の有効
性についても考慮する必要がある。そこで、通常のアミノ酸評点パターンにたんぱく質の消化率を
加味したたんぱく質消化率補正アミノ酸評点パターンが、より正確な評価法として用いられるよう
になってきた。また、加熱、アルカリ処理などによってもアミノ酸の有効性は変化するので、
これらの要因についても考慮する必要がある。
〈参考表〉たんぱく質必要量に対する不可欠アミノ酸の必要量(男女共通)
含硫アミノ酸と芳香族アミノ酸
上記〈参考表〉に記載されている含硫アミノ酸とは、名前のとおり、硫黄原子を含むアミノ酸であり、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」のⅡ各 論 1エネルギー・栄養素 1-2 たんぱく質 1 基本的事項 1-1 定義と分類において不可欠アミノ酸とされているメチオニンは上記〈参考表〉には記載されていませんが含硫アミノ酸の一種です。
〈参考表〉に記載されている芳香族アミノ酸とは、ベンゼン環などの芳香族基を有するアミノ酸であり、同前で不可欠アミノ酸とされているフェニルアラニンも〈参考表〉には記載されていませんが、芳香族アミノ酸の一種です。(なお、トリプトファンとヒスチジンも芳香族アミノ酸ですがこれらは〈参考表〉に記載されています。)
不可欠アミノ酸の摂取状況
私の不可欠アミノ酸の摂取量
下記の表は、私が常食している全ての食品を「食品成分データベース」で検索して得られた結果をNumbersで集計した不可欠アミノ酸(必須アミノ酸)の摂取量です。(単位:mg)
アミノ酸種類 | ヒスチジン | イソロイシン | ロイシン | リシン | 含硫アミノ酸 | 芳香族アミノ酸 | トレオニン | トリプトファン | バリン | 合 計 |
必要量 ※1 | 561 | 1,071 | 2,142 | 1,683 | 816 | 1,428 | 867 | 230 | 1,428 | 10,226 |
摂取量 | 3,100 | 4,100 | 7,100 | 5,800 | 3,700 | 7,800 | 4,000 | 1,200 | 5,000 | 42,000 |
植物性食品からの摂取量 | 1,600 | 2,400 | 4,200 | 2,900 | 2,200 | 4,900 | 2,300 | 780 | 3,000 | 24,000 |
動物性食品からの摂取量 | 1,400 | 1,700 | 2,900 | 2,900 | 1,500 | 2,900 | 1,700 | 440 | 1,900 | 17,000 |
過不足 | 2,500 | 3,000 | 5,000 | 4,100 | 2,900 | 6,400 | 3,100 | 990 | 3,600 | 32,000 |
※1 : 現在の体重(51kg)で計算
不可欠アミノ酸の摂取状況についての考察
1 たんぱく質の消化吸収率等を考慮しても、9種類の不可欠アミノ酸(必須アミノ酸)全てについて、必要量を十分に満たすよう余裕を持って摂取出来ています。
2 一般的に、植物性食品よりも動物性食品の方がアミノ酸スコアが高いとされているとおり、植物性食品と動物性食品からのたんぱく質の摂取比が約7:3であることに対して、不可欠アミノ酸(必須アミノ酸)の摂取量については、植物性食品と動物性食品からの摂取比が若干ながら均衡化しています。
その上で、多様な食品をバランス良く食べることで、植物性の食品からだけで、9種類の不可欠アミノ酸(必須アミノ酸)全ての必要量を十分に満たすよう摂取出来ていますので、一部のネット上で言われている『必須アミノ酸を摂取するためにはアミノ酸スコアが高い動物性たんぱく質を重視して摂取することが必要である』ということはないものと考えています。
3 不可欠アミノ酸の中でも、筋肉の維持等のため、特に重要とされている分岐鎖アミノ酸(BCAA:バリン、ロイシン、イソロイシン)の全て、3,000mg以上の余裕を持って摂取出来ていますので、一部のネット上で推奨されている「分岐鎖アミノ酸(BCAA:バリン、ロイシン、イソロイシン)のサプリメントの摂取」の必要は無いものと考えています。
また、逆も真なりという考え方なのか、一部には、分岐鎖アミノ酸を摂れば摂るほど筋肉が増えるといった情報もありますが、そのようなエビデンスは見たことがありませんせんし、分岐鎖アミノ酸だけが不足している状態においてはその摂取量を増やせば筋肉量も増えますが、その不足が解消されるまで増やせばそれ以上分岐鎖アミノ酸の摂取量を増やすだけでは筋肉量が増えることはないと考えます。
次回と次々回は、9種類の不可欠アミノ酸(必須アミノ酸)の主な摂取源としている食品について書きます。
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