二度目の人生における健康的な食生活 94~生活習慣病(高血圧)とエネルギー・栄養素との関連 2

高齢女性の自宅での血圧測定のイメージ画像 生命と健康長寿に必要な栄養素の摂取基準と摂取量等

 前回に引き続いて、高血圧とエネルギー・栄養素との関連について書きます。

Ⅱ各 論 3 生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連(続き)

3-1 高血圧(続き)

2 特に関連の深いエネルギー・栄養素(続き)

2-3 アルコール

 アルコール単回投与は、数時間持続する血圧低下を来すが、長期に飲酒を続けると血圧は上昇する。多くの疫学研究では、習慣的飲酒量が多くなればなるほど、血圧値及び高血圧の頻度が高く、経年的な血圧上昇も大きいことが示されている。また、飲酒習慣のある男性高血圧患者において飲酒量を約80%減じると、1〜2週間のうちに降圧を認めた。我が国の介入試験では、飲酒習慣のある軽症高血圧患者の飲酒量をエタノール換算で平均56.1mL/日から26.1mL/日に減じると、収縮期血圧の有意な低下を認めた。介入試験のメタ ・ アナリシスでもアルコール制限の降圧効果が確認されており、29〜100%のアルコール制限で有意な血圧低下を認め、アルコール制限の程度と血圧低下には量・反応関係を認めた。我が国の「高血圧治療ガイドライン 2019」では、高血圧者の飲酒は、エタノールで男性20〜30mL/日以下、女性10〜20mL/日以下にすべきであるとされている。このアルコール摂取量の目標値は、先述の我が国の介入試験の報告に近い値であり、海外のガイドラインでも同様である。エタノールで20〜30mLはおおよそ日本酒1合、ビール中瓶1本、焼酎半合弱、ウイスキーダブル1杯,ワイン2杯弱に相当する。
 一方、少量から中等量の飲酒により冠動脈疾患リスクが低下することが、内外において報告されている。しかしながら、飲酒量が増加するほど脳卒中、特に脳出血のリスクが上昇することも報告されており、脳卒中の多い日本人では高血圧予防の意味でも飲酒をしない者には少量の飲酒を勧めるべきではない

2-4 カリウム

 野菜、果物、低脂肪乳製品が豊富な食事パターンであるDASH食は、その血圧低下効果が証明されているが、カリウムはその主要な栄養素の一つである。介入試験のメタ・アナリシスでは、カリウム摂取量増加は高血圧者では有意な血圧低下効果を認めた。コホート研究のメタ・アナリシスでは、カリウム摂取量が高いほど脳卒中のリスクが低下したが、冠動脈疾患のリスクには有意の関連はなかった。一方、近年、ナトリウム/カリウム摂取比あるいは尿ナトリウム/カリウム排泄比が循環器疾患リスクと関連することが報告されている。すなわち、カリウムは、食塩過剰摂取の血圧上昇などの作用に拮抗していると考えられている。2012年のWHOのガイドラインでは、血圧低下及び脳卒中リスク低下のためにカリウム摂取量90mmol(3,510mg)/日以上を推奨しており、また、WHO ガイドラインの推奨摂取量を達成した場合、ナトリウム/カリウム摂取比はほぼ1対1(単位は mmol/mmol)になり、健康への好影響をもたらすとしている。なお、腎障害を有する者では高カリウム血症を来し得るので、カリウムの積極的摂取は避けるべきである。以上の点から「高血圧治療ガイドライン 2019」では、野菜・果物の積極的摂取を推奨している(カリウム制限が必要な腎障害患者を除く)。

2-5 カルシウム

 カルシウムも、DASH食の主要な栄養素の一つである。これまで多くの疫学研究で、カルシウム摂取量の増加に伴い血圧が低下することが示されている。2006年のメタ・アナリシスでは、平均1,200 mg/日のカルシウム摂取量で有意な血圧低下を示すことが報告されている。また、同年の別のメタ・アナリシスでもカルシウム投与による有意の血圧低下作用は示されているが、その程度は大きくなく、我が国を含む各国の高血圧ガイドラインでは血圧低下のためのカルシウム投与は推奨されていない

2-6 マグネシウム

 マグネシウムもDASH食の主要な栄養素の一つである。2012 年の介入試験のメタ・アナリシスではマグネシウム補充による軽度の血圧低下を認めているが、別のメタ・アナリシスでは有意な血圧低下は認めなかった

2-7 n-3 系脂肪酸

 DASH食では魚を増加させており、魚油由来の長鎖n-3系脂肪酸(オメガ3系脂肪酸)エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサペンタエン酸(DPA)など〕は要素の一つとなっている。これに関連して「高血圧治療ガイドライン(2019)」では、多価不飽和脂肪酸の積極的摂取が推奨されている。 INTERMAPからの報告などの観察研究で、n-3系脂肪酸の摂取量が多い者は血圧が低いことが示されている。また、EPA、DHA、DPAの総和の血中レベルが高い者は血圧が低いという報告もある。介入試験のメタ・アナリシスでは、中央値3.7g/日の魚油の投与で有意な血圧低下が認められた。特に、45歳以上、血圧が140/90mmHg以上の者で、その効果は顕著であった。有意な血圧低下を得るには、3g/日以上のn-3系脂肪酸の摂取が必要と考えられる。INTERMAPでは、植物油由来のα-リノレン酸を含む n-3系脂肪酸摂取量は日本人では約3g/日、EPAとDHAの合計が約1g/日であり、欧米に比べるとかなり摂取量が多い
 n-3系脂肪酸摂取による循環器疾患リスク低下を示す観察研究の報告は国際的に多く、血圧低下以外のメカニズムも推測されている。魚油由来n-3脂肪酸摂取が世界でも特に多い日本人においても、コホート研究において心筋梗塞、脳卒中、心不全などのリスク低下が報告されている。一方、n-3系脂肪酸投与を行う大規模介入試験においては、循環器疾患リスク改善効果が必ずしも一定していないn-3系脂肪酸摂取の長期にわたる循環器疾患予防効果については、更なる知見の集積が必要である。

2-8 その他の脂質

 血圧低下効果を有する食事パターンであるDASH食では、総脂肪、飽和脂肪酸、食事性コレステロールを減少させている。我が国を含む国際共同研究INTERMAPでは、食事性コレステロール摂取量と血圧の正の関連n-6系脂肪酸(リノール酸)摂取量と血圧の負の関連が報告されている。30 歳以120〜159/80〜99mmHgの者を対象にした介入試験であるOm-niHeart 研究では、炭水化物が豊富な食事に比べて不飽和脂肪酸が豊富な食事において血圧低下を認めている〔炭水化物が豊富な食事は炭水化物 58%、脂肪27%(一価不飽和脂肪酸13%、多価不飽和脂肪酸8%)、不飽和脂肪酸が豊富な食事は炭水化物48%、脂肪酸37%(一価不飽和脂肪酸21%、多価不飽和脂肪酸10%)〕。不飽和脂肪酸(一価及び多価)が降圧作用を有する可能性がある。以上を受けて、「高血圧治療ガイドライン(2019)」では、飽和脂肪酸、食事性コレステロールの摂取を控え、多価不飽和脂肪酸を積極的に摂取することを推奨している。

2-9 食物繊維

 DASH食では、野菜と果物を増加させており、食物繊維は要素の一つとなっている。「高血圧治療ガイドライン(2019)」では、野菜・果物の積極的摂取を推奨している。介入試験のメタ・アナリシスでは平均10.7g/日の摂取量の増加で血圧は低下傾向を示し、高血圧者対象の研究や8週間以上の介入期間の研究で有意な血圧低下を認めた。

2-10 たんぱく質

 INTERMAP では、植物性たんぱく質摂取量と血圧の負の関連、また、植物性たんぱく質に多いアミノ酸であるグルタミン酸の摂取量と血圧の負の関連が報告されている。OmniHeart研究では、食事の炭水化物の一部をたんぱく質で置き換えると、軽度であるが有意な血圧低下を認めた(炭水化物が豊富な食事は炭水化物58%、たんぱく質15%、たんぱく質が豊富な食事は炭水化物48%、たんぱく25%)。この研究では、特に植物性たんぱく質の増加の程度が大きかった。未治療で120〜159/80〜99mmHg の者を対象にしたPREMIER研究のサブ解析でも、植物性たんぱく質の摂取量増加が18か月後の高血圧リスクを減らした。同様の血圧レベルの者で、40g/日の大豆たんぱく又は40g/日の乳たんぱくの負荷は40g/日の炭水化物負荷(対照群)に比べて、収縮期血圧の軽度の低下を示した。大豆たんぱくの血圧低下効果についてはメタ・アナリシスがあり、大豆たんぱくの中央値30g/日で有意な血圧低下を示した。乳製品や低脂肪乳製品は、疫学研究のメタ・アナリシスで高血圧リスクを抑えることが示された。DASH食事パターンにおいて野菜や低脂肪乳製品が増加されていることは、以上の知見と整合性がある
 たんぱく質は、他の食事性因子との組合せも考えて、バランスよく摂取すべきである。

2-11 炭水化物

 食事の炭水化物の一部をたんぱく質や不飽和脂肪酸で置き換えると血圧が下がるというOmni-Heart 研究の結果は、見方を変えると炭水化物が血圧を上げる可能性を示す。観察研究では、思春期女児においてグリセミック・インデックス、グリセミック負荷、炭水化物摂取量、糖類摂取量、果糖の摂取量は血圧上昇と正の相関を示したという報告がある。また、INTERMAPでは、甘味飲料に多い果糖の摂取量と血圧の正の関連を報告している。

2-12 栄養素の複合的な摂取

 単独では血圧低下効果が弱い栄養素でも、組み合わせて摂取することによって大きな血圧低下効果を示すと考えられる。野菜、果物、低脂肪乳製品が豊富な食事パターンであるDASH食事パターンは飽和脂肪酸と食事性コレステロールが少なく、カリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維が多いが、大きな血圧低下効果のエビデンスがあり、多くの高血圧治療ガイドラインで取り上げられている。
 DASH食事パターンは、更に減塩と組み合わせることにより相乗的な作用を有している。ただし、本食事パターンはアメリカの食事を想定して作られており、我が国の食事における同様の食事パターンの確立は不十分である。類似の食事パターンとして地中海食があるが、血圧低下効果のエビデンスは乏しい

まとめ

カリウムや食物繊維の摂取量と血圧の関係等

 前述したとおり、再誕後の二度目の人生における1歳(2017年)から2歳(2018年)頃にかけての健康診断の結果がそれまでの人生において最悪の状態であった中で血圧が比較的マシな方であったのはどんなに食生活が乱れていた時も出来るだけ野菜を食べてカリウムや食物繊維を摂取していたからだと思います。
 しかしながら、その後もカリウム以外のミネラルやビタミンといった他の栄養素や機能性成分を摂取するために様々な野菜の摂取量を増やしてきた結果、カリウムが過剰摂取気味となっていることが気になっています。

栄養素の複合的な摂取について

 単独では血圧低下効果が弱い栄養素でも、組み合わせて摂取することによって大きな血圧低下効果を示すとあるとおり、私は、多様な食品をバランス良く食べることによって正常血圧(120/80mmHg未満)まで下げることが出来ました。しかしながら、ここ数年間は再び上昇傾向にあるので血圧を安定させるように更に努めたいと考えています。

 次回から、脂質異常症とエネルギー・栄養素との関連について書きます。

画像とお願い事項.etc

本ブログで使用している生成画像/創作画像(アイキャッチ画像と北アルプスの日の出)

 本ブログで使用しているアイキャッチ画像を含む全ての生成画像ChatGPT(生成AI)のシエルさんが作成してくれています。
 今回は、高齢女性の自宅での血圧測定をイメージした画像を作成してもらいました。
 また、下記の画像はブログの内容とは無関係(オマケ)ですが、最新の画像生成モデルで作成してもらった私の故郷である岐阜県と長野県の県境を走る「北アルプス(飛騨山脈)の槍ヶ岳から穂高連峰(奥穂高岳、前穂高岳、北穂高岳、西穂高岳)の稜線と奥穂高岳の山頂から登る日の出」をイメージした創作画像です。

北アルプス(飛騨山脈)の槍ヶ岳から穂高連峰(奥穂高岳、前穂高岳、北穂高岳、西穂高岳)の稜線と奥穂高岳の山頂から登る日の出

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