前回に引き続いて、今回は「多様な食品をバランス良く食べることについて」で書いた「日常的に食べている多様で健康的な食品等」のうち、オメガ3(ω3、n-3)系(多価不飽和)脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)・DPA(ドコサペンタエン酸)の作用(機能、働き) とこれらのサプリメントを摂取していた理由と中断した理由等について書きます。
サプリメントの摂取に関する基本的考え方
(本項の内容は「常食している健康的な食品の栄養素と機能性成分 26」の「サプリメントの摂取に関する基本的考え方」と同じです。)
私は、必要とする栄養素や機能性成分は、出来るだけホールフードから摂ることを基本としています。
そして、サプリメントについても、様々なエビデンス等で勉強し、検討した上で本当に必要だと判断したものだけを試行的に摂取し、その効果等を踏まえて続けるものは続け、止めるべきものは止めていますが、その理由は大きく次の2つです。
1 二度目の人生における本気の生活習慣の改善 6~『「完全自炊」による食事とその内容について』の説明の「健康に悪影響を及ぼすとされる次のような食品は出来る限り食べない。」で書きましたとおり、精製された食品はできる限り食べないようにしているから。
2 二度目の人生における健康的な食生活 6〜サプリメント等の健康食品についてで書いたサプリメントを摂取する場合における留意事項等を踏まえて。
脂質と脂肪酸の概要
脂質の機能
脂質の機能について、日本人の食事摂取基準(2020年版)では次のとおり書かれています。
脂質は、細胞膜の主要な構成成分であり、エネルギー産生の主要な基質である。脂質は、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)やカロテノイドの吸収を助ける。脂肪酸は、炭水化物あるいはたんぱく質よりも、1 g 当たり2倍以上のエネルギー価を持つことから、ヒトはエネルギー蓄積物質として優先的に脂質を蓄積すると考えられる。コレステロールは、細胞膜の構成成分である。肝臓において胆汁酸に変換される。また、性ホルモン、副腎皮質ホルモンなどのステロイドホルモン、ビタミン D の前駆体となる。 |
脂肪酸
代表的な脂質であるトリグリセリド(中性脂肪)は1分子のグリセロールに3分子の脂肪酸がエステル結合したものです。
脂肪酸は、炭化水素鎖(-CH2-CH2-CH2-CH2-)の一端がメチル基(CH3-)、その反対側の末端がカルボキシ基(-COOH)となっているカルボン酸(CH3–CH2・・・CH2-CH2–COOH)であり、不飽和結合(-CH=CH-)の有無により、飽和脂肪酸(CH3–CH2・・・CH2–CH2-COOH)と不飽和脂肪酸(CH3-CH2・・・CH=CH・・・CH2-CH2-COOH)に分けられます。
不飽和脂肪酸には、不飽和結合が1ヶ所の1価不飽和脂肪酸、2ヶ所の2価不飽和脂肪酸、3ヶ所の3価不飽和脂肪酸・・・があり、2価以上の不飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸と言います。
脂肪酸は「X:Y」の数値で表記され、Xは炭素数を、Yは不飽和結合の数を表し、例えば動物性脂肪の主成分である炭素数16の飽和脂肪酸であるパルミチン酸は16:0、菜種を原料としたサラダ油の主成分である炭素数18、不飽和結合2ヶ所のリノール酸は18:2と表記されます。
また、不飽和脂肪酸の場合、 メチル基(含む)から数えてZ番目とZ+1番目の炭素間に不飽和結合(多価不飽和脂肪酸の場合は最初の不飽和結合)がある脂肪酸を「ω(オメガ)Z」又は「n(エヌ)-Z」と表記し、例えば、前述のリノール酸は6番目と7番目の炭素間に最初の不飽和結合があるため「18:2 ω6」又は「18:2 n-6」と表記されます。
必須脂肪酸
人体で必要とし、かつ、人体内で合成することができないため、食物から摂取することを必要不可欠とする脂肪酸を必須脂肪酸と言い、オメガ6(ω6、n-6)系脂肪酸とオメガ3(ω3、n-3)系脂肪酸が必須脂肪酸となります。
n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸について、日本人の食事摂取基準(2020年版)では次のとおり書かれています。
n-6系脂肪酸と n-3系脂肪酸は、体内で合成できず、欠乏すると皮膚炎などが発症する。したがって、必須脂肪酸である。 |
n-6系脂肪酸には、リノール酸(18:2 n-6)、γ-リノレン酸(18:3 n-6)、アラキドン酸(20:4 n-6)などがあり、γ-リノレン酸やアラキドン酸はリノール酸の代謝産物である。生体内では、リノール酸をアセチルCoAから合成することができないので、経口摂取する必要がある。 日本人で摂取されるn-6系脂肪酸の 98%はリノール酸である。γ-リノレン酸やアラキドン酸の単独摂取による人体への影響について調べた研究は少ない。 |
n-3系脂肪酸は、生体内で合成できず(他の脂肪酸からも合成できない)、欠乏すれば皮膚炎などが発症する) 。したがって、必須脂肪酸である。また、n-3系脂肪酸の生理作用は、n-6系脂肪酸の生理作用と競合して生じるものもある。さらに、n-3系脂肪酸はα-リノレン酸(18:3 n-3)、EPA(20:5 n-3)及び docosapentaenoic acid(DPA、22:5 n-3)、DHA(22:6 n-3)に大別されることから、それぞれの健康効果についても研究が進められている。 |
上記において、n-6系脂肪酸である「18:3 n-6」とn-3系脂肪酸である「18:3 n-3」の名前は同じリノレン酸(linolenic acid)であるため、前者をγ-リノレン酸(gamma linolenic acid)とし、後者をα-リノレン酸( alpha linolenic acid)として区別しています。
因みに、α-リノレン酸は健康のために極めて重要な必須脂肪酸であり、その英語表記( alpha linolenic acid)の頭文字でALAと表記しますが、生命の根源アミノ酸とも言われていて、ネット上で盛んに取り上げられ多くのサプリメントも販売されている5-ALA(5-アミノレブリン酸:5-aminolevulinic acid、これもALAと略称されることがある)とは全くの別物です。
n-3系脂肪酸
n-3系脂肪酸の作用(機能、働き)
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、n-3系脂肪酸の生活習慣病の発症予防について、次のとおり書かれています。
n-3系脂肪酸摂取量、特に、EPA 及び DHA の摂取が循環器疾患の予防に有効であることを示した観察疫学研究が多数存在し、そのメタ・アナリシスもほぼこの考えを支持している。しかしながら類似の目的で行われた介入研究の結果をまとめたメタ・アナリシスはこの考えを支持せず、予防効果があるとは言えないと結論を述べている。α-リノレン酸と循環器疾患の発症率及び死亡率との関連を調べたコホート研究をまとめたメタ・アナリシスでは、弱いものの有意な負の関連を報告している 。 n-3系脂肪酸摂取量、特に、EPA 及び DHA の摂取による認知機能低下や認知症の予防効果も期待されている。一方で、治療効果についてまとめたメタ・アナリシスでは治療効果があるとは言えないと報告している。 また、糖尿病の発症率との関連を検討したコホート研究をまとめたメタ・アナリシスでは n-3系脂肪酸摂取が糖尿病の発症を増加させる可能性を示唆しているが、その結果は他の要因によって修飾されるため、結論を下すのは難しいとしている。 |
厚生労働省のeJIM(統合医療に係る 情報発信等推進事業)のオメガ3系脂肪酸には次のとおり書かれています。詳細についてはリンク先をご参照ください。
本文中の必要摂取量、推奨摂取量、上限値・下限値等はアメリカ人を対象としたデータです。日本人に関するデータについては「日本人の食事摂取基準(厚生労働省)」などをご覧ください。 魚介類(魚および甲殻類)を1週間に1~4回食べる人は、ほとんど食べない人やまったく食べない人よりも、心疾患で死亡する可能性が低いことが示された。 積極的な魚介類の摂取を勧める公衆衛生に関するメッセージが、食事からのオメガ3脂肪酸摂取の増加につながった可能性がある。普段から魚介類を食べている人がオメガ3脂肪酸の摂取量を増やしても、さらなる有益性(ベネフィット)は得られない可能性がある。 魚介類(魚と甲殻類)を食べると、脳卒中のリスクがやや低下することがわかっている。 魚油などの海産物由来のオメガ3脂肪酸には、脳卒中の一種である虚血性脳卒中(脳の血管の狭窄または閉塞によって生じる脳卒中)のリスクを減らす可能性があるとするエビデンスはあるが、オメガ3が全ての脳卒中や脳卒中による死亡を減らすことは示されていない。 魚介類をよく食べる人は、認知機能低下のリスクが下がる可能性があることが、一部の研究で示されている。しかし、オメガ3サプリメントが認知機能症やアルツハイマー病の予防と、これらの症状の改善に有用であるとは示されていない。 |
また、eJIMのオメガ3脂肪酸について知っておくべき7つのことの冒頭には次のとおり書かれています。詳細についてはリンク先をご参照ください。
本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。 オメガ3脂肪酸は、体内のさまざまな機能にとって重要な多価不飽和脂肪酸に属しています。オメガ3脂肪酸のEPAやDHAは、脂肪が多い魚(たとえば、サケ、マグロ、マス)や甲殻類・貝類(たとえば、カニ、ムール貝、カキ)のような海産物に含まれています。オメガ3の異なる種類であるALAは、植物油(たとえば、セイヨウアブラナ、大豆)など他の食物に含まれています。オメガ3脂肪酸はサプリメントとしても摂取できます。たとえば、魚油サプリメントはEPAやDHAを含み、亜麻仁油はALAを含んでいます。海産物の摂取による健康的利点に関してわずかな根拠はありますが、オメガ3サプリメントの健康的利点は明確ではありません。 |
ALA(18:3 n-3)、EPA(20:5 n-3)、 DPA(22:5 n-3)、DHA(22:6 n-3)の関係
人間を含む動物にとってω3系脂肪酸は必須脂肪酸ですが、食物から摂取したALAから、炭素鎖を伸長させたり、飽和結合を不飽和結合に変換することにより、ALA:α-リノレン酸(18:3 n-3)➡︎EPA:エイコサペンタエン酸(20:5 n-3)➡︎ DPA:ドコサペンタエン酸(22:5 n-3)➡︎DHA:ドコサヘキサエン酸(22:6 n-3)と変換することが出来ます。
しかしながら、ALAからDHAまで変換されるのは10%程度と言われており、ALAだけでなく、EPA、 DPA、DHAも食物から摂取することが必要であるとされています。
ご参考までに、エイコサペンタエン酸のエイコはギリシャ語で0、サは20、ペンタは5、ドコサペンタエン酸のドコは2、ドコサヘキサエン酸のヘキサは6です。
n-3系脂肪酸のサプリメントを摂取していた理由と中断した理由
n-3系脂肪酸のサプリメントを摂取していた理由
「二度目の人生における健康的な食生活 2〜日本人の食事摂取基準(2020年版)の概要等について」で書きましたとおり、私は、「日本人の食事摂取基準(以下「摂取基準」とします。)」を「多様な食品をバランス良く食べるための準拠」としています。
摂取基準ではn-3系脂肪酸の65歳以上74歳以下の男の1日の摂取の目安量を2.2gとしており、私は、数日分の日常の食事を平均すればこの目安量程度のn-3系脂肪酸を摂取しています。
しかしながら、n-3系脂肪酸の主な摂取源である魚を食べない日におけるn-3系脂肪酸の摂取量は目安量を下回っているため、試行的にサプリメントを摂取していました。
n-3系脂肪酸のサプリメントを摂取を中断した理由
不飽和脂肪酸を含む精製油やサプリメントの酸化による健康への悪影響が問題視されていることに加え、n-3系脂肪酸のサプリメントの摂取を開始した頃においてもその不足によると思われる身体の不調等は無く、摂取による効果を実感できなかったため中断しました。
本ブログをお読み頂く際にお願いしたい事項
「本ブログをお読み頂く際のお願い」をお読みください。
下のバナーをポチッとして頂き、100万以上の日本語ブログが集まる「日本ブログ村」を訪問して頂ければ大変ありがたいです。
コメント