二度目の人生における健康的な食生活 65~生命と健康長寿に必要なビタミンKの摂取基準と摂取量等

ビタミンKの機能と食品のイメージ画像 生命と健康長寿に必要な栄養素の摂取基準と摂取量等

 前回までのビタミンE摂取基準摂取量等に引き続き、今回は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」におけるビタミンK摂取基準摂取量等について書きます。

Ⅱ各 論 1エネルギー・栄養素 1-6 ビタミン (1)脂溶性ビタミン ④ビタミンK

1 基本的事項

1-1 定義と分類

 天然に存在するビタミンKには、ナフトキノンを共通の構造として、側鎖構造のみが異なるフィロキノンビタミン K1)とメナキノン類がある。フィロキノンは、側鎖にフィチル基をもつ化合物である。メナキノン類は、側鎖のプレニル基を構成するイソプレン単位の数(4〜14)によって11種類の同族体に分かれる。このうち、栄養上、特に重要なものは、動物性食品に広く分布するメナキノン-4ビタミンK2)と納豆菌が産生するメナキノン-7である(図 5)。フィロキノンメナキノン-4及びメナキノン-7は、ヒトにおける腸管からの吸収率や血中半減期がそれぞれ異なることより、生理活性も異なるものと考えられる。近年ビタミンK1に比して、ビタミンK2の効果が大きいことが報告されているが、現時点ではビタミンK同族体の相対的な生理活性の換算は困難なので、分子量のほぼ等しいフィロキノンとメナキノン-4についてはそれぞれの重量を、また、分子量が大きく異なるメナキノン-7は下記の式によりメナキノン-4相当量に換算して求めた重量の合計量をビタミンK量として食事摂取基準を算定した。
 メナキノン-4相当量(mg)=メナキノン-7(mg)×444.7/649.0

1-2 機能

 ビタミンKは、肝臓においてプロトロンビンやその他の血液凝固因子を活性化し、血液の凝固を促進するビタミンとして見いだされた。肝臓以外にもビタミンK依存性に骨に存在するたんぱく質オステオカルシンを活性化し、骨形成を調節すること、さらに、ビタミンK依存性たんぱく質MGP(Matrix Gla Protein)の活性化を介して動脈の石灰化を抑制することも重要な生理作用である。ビタミンKが欠乏すると、血液凝固が遅延する。通常の食生活では、ビタミンK欠乏症は発症しない

1-3 消化、吸収、代謝

 生体内のメナキノン類は、食事から摂取されるものの他に、腸内細菌が産生する長鎖のメナキノン類と、組織内でフィロキノンから酵素的に変換し生成するメナキノン-4がある。腸内細菌によるメナキノン類産生量や組織でのメナキノン-4生成量が、ヒトのビタミンK必要量をどの程度満たしているのかは明らかでない。しかし、健康な者において通常の食事から体重1kg当たり0.8〜1.0µg/日の量でフィロキノンの摂取を続けると、潜在的なビタミンK欠乏症に陥る危険性があるので 、腸内細菌や組織でのメナキノン類産生量は、生体の需要を満たすほどには多くない
 最近、ビタミンK同族体は、酵素UBIAD1によってメナキノン-4に代謝されることが報告されている。またビタミンKの古典的作用は、肝臓において、血液凝固因子(第II・VII・IX・X因子)にカルボキシル基を導入する酵素γ-カルボキシラーゼの補酵素作用であるが、最近、骨など肝臓以外におけるビタミンK依存性たんぱく質の意義が注目されている。
 また、更に近年、核内受容体SXRを介する新規作用が報告されている。

2 指標設定の基本的な考え方

 欠乏充足実験や介入研究によるデータが十分ないため、健康な者を対象とした観察研究を基に目安量を設定した。

3 健康の保持・増進

3-1 欠乏の回避

3-1-1 必要量を決めるために考慮すべき事項

 ヒトでビタミンKの欠乏症が明確に認められるのは血液凝固の遅延である。我が国において、健康な者でビタミンK欠乏に起因する血液凝固遅延が認められるのは稀であり、手術後の患者や血液凝固阻止薬ワルファリンの服用者を除き、ビタミンKの栄養はほぼ充足していると考えられる。血液凝固因子の活性化に必要なビタミンK摂取量は明らかでなく、欠乏充足実験として、10人の若年男性(28.3±3.2歳)を対象として40日間にわたってビタミンK欠乏食を与えた研究があるが、例数が非常に少なく、これをもって設定することはできないものと考えられた。
 一方、大腿骨近位部骨折とビタミンK摂取量との関連を検討した最近のコホート研究によると、100µg/日程度(又はそれ以上)を摂取していた群で、それ未満の摂取量の群に比べて発生率の低下が観察されている。骨におけるビタミンK作用不足の指標である血中低カルボキシル化オステオカルシン(ucOC)高値は、骨密度とは独立した骨折の危険因子であり、ucOCを低下させるためには、肝臓で凝固因子の活性化に必要な量以上(おおむね 500 µg/日以上)を要することが示されている。骨折の予防に必要なビタミンK摂取量は、血漿中非カルボキシル化プロトロンビンを指標とする場合に比べて多い可能性が考えられる。ビタミンKのサプリメント投与による骨折発生率の減少に関するメタ・アナリシスが発表されているが、45mg/日という多量のメナキノン投与によるものである。
 以上より、骨折予防のためには肝臓の血液凝固因子活性化より多くのビタミンKを必要とすることが考えられるものの、現状では正常な血液凝固能を維持するのに必要なビタミンK摂取量を基準として適正摂取量を設定するのが妥当と考えた。また、現時点では推定平均必要量及び推奨量を算定するに足る科学的根拠はないものと考え、目安量を設定した。

3-1-2 目安量の策定方法

・成人(目安量)
 血液凝固因子の活性化に必要なビタミンK摂取量は明らかでなく、我が国において、健康な者でビタミンK欠乏に起因する血液凝固遅延が認められるのは稀であり、現在の食事摂取においてビタミンKの栄養はほぼ充足していると考えられる。平成 28 年国民健康・栄養調査における20歳以上のビタミンK摂取量は、平均値236µg/日中央値181µg/日であり平均値と中央値が乖離している。これは多量摂取者の存在を示しており、日本人では納豆摂取の影響が大きい納豆摂取者のビタミンK摂取は336.2±138.2µg/日非摂取者は154.1±87.8 µg/日との報告があり、納豆非摂取者においても、明らかな健康障害は認められていないことから、これに基づいて150µg/日を目安量とした。ただし、この論文は、20歳代女性を対象としたものであり、他の性・年齢区分に対する妥当性は、今後検討を要する。
・高齢者(目安量)
 高齢者では、胆汁酸塩類や膵液の分泌量低下、食事性の脂質摂取量の減少などにより、腸管からのビタミンK吸収量が低下すると考えられる。また、慢性疾患や抗生物質の投与を受けている場合には、腸管でのメナキノン産生量が減少することやビタミンKエポキシド還元酵素活性の阻害によるビタミンK作用の低下が見られる。このような理由から、高齢者に対してはビタミンKの目安量を更に引き上げる必要があると考えられ、また、高齢者ではより多量のビタミンKを要するとの報告もあるが、この点に関する報告がいまだ十分に集積されていないので、50〜64歳と同じ値とした。
・小児(目安量)
(略)
・乳児(目安量)
(略)
・妊婦(目安量)
(略)
・授乳婦(目安量)
(略)

3-2 過剰摂取の回避

 ビタミンKの類縁化合物であるメナジオンは、大量摂取すると毒性が認められる場合があるが、フィロキノンとメナキノンについては大量に摂取しても毒性は認められていない。我が国では、メナキノン-4が骨粗鬆症治療薬として45mg/日の用量で処方されており、これまでに安全性に問題はないことが証明されている。この量を超えて服用され、副作用が発生した例は今までに報告がないので、ビタミン Kの健康障害非発現量を設定することはできない。したがって、ビタミンKの耐容上限量は設定しなかった

3-3 生活習慣病の発症予防

 ビタミンK不足と種々疾患リスクに関する報告はあるものの、いまだ十分な根拠はないことから、目標量は設定しなかった

4 生活習慣病の重症化予防

 ビタミンK不足は骨折のリスクを増大させることが報告されているが、栄養素としてのビタミンK介入による骨折抑制効果については、更に検討を要するものと考え、重症化予防のための量は設定しなかった

5 活用に当たっての留意事項

 通常の食事において、ビタミンK不足が起きることは稀であるが、脂質吸収障害によりビタミンKの吸収が障害されるので、そのような例では注意を要する。

ビタミンKの食事摂取基準及び私の摂取量と摂取源としている主な食品

ビタミンKの食事摂取基準(μg/日)

ビタミンKの摂取量

 毎日食べている挽き割り納豆40gからだけで、目安量150μg/日2倍以上の約370μg/日ビタミンKを摂取しています。もちろん、納豆以外にも、ブロコリー、ワカメ、豆乳、鶏肉、鶏卵等、様々な食品からビタミンKを摂取していますが、耐容上限量も設定されていないため、詳細な摂取量を把握することは不要であり計算していません。

まとめ

目安量を満たすビタミンKの摂取

 「1-2 機能」において、『通常の食生活では、ビタミンK欠乏症は発症しない。』と書かれているとおり、ビタミンKは納豆以外の様々な食品にも含まれていますので、偏食していない限りはあまり不足することはないと思います。

ビタミンKのサプリメント

 前々回のビタミンEの摂取基準と摂取量等 1の「ビタミンEのサプリメント」において、『ビタミンEのサプリメントも結構売れているようであり不思議に感じています。ビタミンEのサプリメントを摂取している人の中には、何らかの理由で本当に必要としている人もいると思いますが、ネット通販のコメント等を読んでみると、ビタミンEの過不足に関係なく、何となく健康に良いからとか、大は小を兼ねる的な理由で摂取している人もおられるようです。』と書きましたが、ビタミンKのサプリメントが売れていることも不思議に感じています。

 次回は、ビタミンB1摂取基準摂取量等について書きます。

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 今回は、ビタミンEの抗酸化等の様々な機能をイメージした画像を作成してもらいました。

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