二度目の人生における健康的な食生活 82~生命と健康長寿に必要な銅(Cu)の摂取基準と摂取量等

推奨量を満たしている銅のイメージ図 生命と健康長寿に必要な栄養素の摂取基準と摂取量等

 前回亜鉛(Zn)摂取基準摂取量等に引き続き、今回は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」における銅(Cu)摂取基準摂取量等について書きます。

Ⅱ各 論 1エネルギー・栄養素 1-7 ミネラル(2)微量ミネラル ③銅(Cu)

1 基本的事項

1-1 定義と分類

 銅(copper)は原子番号29、元素記号Cuであり、金、銀と同じ11族に属する遷移金属元素である。

1-2 機能

 銅は、成人の体内に約100mg存在し、約65%は筋肉や骨、約10%は肝臓中に分布する。
 銅は、約10種類の酵素の活性中心に存在し、エネルギー生成や鉄代謝、細胞外マトリクスの成熟、神経伝達物質の産生、活性酸素除去などに関与している。

1-3 消化、吸収、代謝

 食事から摂取された銅の吸収は、特異的なトランスポーターによって行われる。すなわち、銅イオンは十二指腸において2価から1価に還元され、小腸粘膜上皮細胞の微絨毛の刷子縁膜に存在する copper transporter1と特異的に結合して細胞内へ取り込まれる。そして、基底膜側に存在する ATPase7Aによって細胞内から門脈側に排出される。吸収された銅は、門脈を経て肝臓へ取り込まれ、セルロプラスミンとして血中へ放出される。
 体内銅の恒常性は、吸収量と排泄量の調節によって維持されている。食事からの銅の摂取が1.56mg/日の場合、0.75mg/日が吸収される。肝臓からは約5mg/日の銅が胆汁を介して排泄されるが、4.25mg/日は再吸収されるため、糞への排泄は食事からの未吸収分と合わせて約1.5mg/日となる。汗や皮膚の落屑に伴う体表消失は約0.04 mg/日、尿への排泄は約0.02mg/日である。
 銅欠乏症には、先天的な疾患であるメンケス病銅の摂取不足に起因する後天的なものとがある。メンケス病では ATPase7A に変異があるため、銅を吸収することができず、血液や臓器中の銅濃度が低下して、知能低下、発育遅延、中枢神経障害などが生じる。一方、摂取不足に起因する後天的な銅欠乏症は、外科手術後に銅非添加の高カロリー輸液や経腸栄養剤を使用した場合に多く発生している。食事性欠乏における症状は、鉄投与に反応しない貧血、白血球減少、好中球減少、脊髄神経系の異常などである。
 銅過剰症のウイルソン病は、肝臓から銅を胆汁に排出するATPase7Bに変異があるため、肝臓、脳、角膜に銅が蓄積し、角膜のカイザー・フライシャー輪、肝機能障害、神経障害、精神障害、関節障害などが生じる

2 指標設定の基本的な考え方

 我が国に銅必要量を検討した研究がないため、欧米人を対象に行われた研究に基づき、銅の平衡維持量と血漿・血清銅濃度を銅の栄養状態の指標として推定平均必要量を設定した。

3 健康の保持・増進

3-1 欠乏の回避

3-1-1 推定平均必要量、推奨量の策定方法

・成人・高齢者(推定平均必要量、推奨量)
 最近の総説は、アメリカ人を対象にした複数の研究を解析した結果、銅の出納は摂取量0.8mg/日未満で負2.4mg/日を超えると正になるとしている。一方、この総説では、偏りの大きい研究を除外した場合、血漿・血清銅濃度は、摂取期間にかかわらず銅の摂取量0.57〜6.9mg/日の範囲では一定としている。これらより、0.8mg/日を銅の最小必要量と判断した。解析対象となった研究が複数であることから、この値は、アメリカ人男性(18〜30歳)の参照体重である76.0kgの成人に対するものと考えた。以上より、0.8mg/日を参照値として、性別及び年齢区分ごとの推定平均必要量を、それぞれの参照体重に基づき、体重比の0.75乗を用いて算定した。
 推奨量は、推定平均必要量に推奨量算定係数1.2を乗じた値とした。なお、一部の年齢区分(18〜29歳の男性)において値の平滑化を行った。
・小児(推定平均必要量、推奨量)
(略)
・妊婦の付加量(推定平均必要量、推奨量)
(略)
・授乳婦の付加量(推定平均必要量、推奨量)
(略)

3-1-2 目安量の策定方法

・乳児(目安量)
(略)

3-2 過剰摂取の回避

3-2-1 摂取状況

 平成 28 年国民健康・栄養調査における日本人成人(18 歳以上)の銅摂取量(平均値±標準偏差)は、1.2±0.4 mg/日(男性)、1.1±0.3 mg/日(女性)であり、通常の食生活において過剰摂取が生じることはないが、サプリメントの不適切な利用に伴って過剰摂取が生じる可能性がある。

3-2-2 耐容上限量の策定方法

・成人・高齢者(耐容上限量)
 先に述べたように、血漿・血清銅濃度は、銅の摂取量 0.57〜6.9mg/日の範囲で一定である。血漿・血清銅濃度の上昇を直ちに健康障害の発現とみなすことはできないが、6.9mg/日は参考にすべき数値である。一方、10mg/日の銅サプリメントを12週間継続摂取しても異常を認めなかったとする報告がある。以上より、健康障害非発現量を10mg/日とみなし、血漿・血清銅濃度の上昇を起こさないために、不確実性因子を1.5として、耐容上限量を男女一律に7mg/日とした。なお、EU では耐容上限量を5mg/日アメリカ・カナダとオーストラリア・ニュージーランドでは耐容上限量を10mg/日としている。
・小児・乳児(耐容上限量)
(略)
・妊婦・授乳婦(耐容上限量)
(略)

3-3 生活習慣病の発症予防

 0.6mg/日未満の銅の摂取が継続した場合に、免疫機能の低下や不整脈が生じたという報告はあるが、今回策定した推定平均必要量及び推奨量で十分に対応が可能である。また、銅の摂取と血清コレステロール値の関連については一致した結果が得られていない。以上より、生活習慣病発症予防のための目標量(下限値)は設定しなかった

4 生活習慣病の重症化予防

 高齢女性を対象に、様々なサプリンメントの使用と全死亡率との関連を検討した疫学研究において、銅サプリメントの使用が全死亡率を上昇させることが認められている。このことは、サプリメントの使用が、推奨量を大きく超える量の銅の摂取につながり、健康に悪影響を及ぼすことを意味している。また、冠状動脈造影を受けている患者について、血清銅濃度を指標にして群分けし、追跡した研究では、血清銅濃度の高い集団において、全死亡率と冠状動脈疾患の死亡率が上昇している。このように、血清銅濃度の上昇は生活習慣病を重症化させる可能性があるが、今回策定した耐容上限量未満の摂取であれば、血漿・血清銅濃度の上昇は生じないと考えられることから、重症化予防のための量(上限値)も設定しなかった

5 活用に当たっての留意事項

 日本人は、平均的に見て十分な銅摂取が達成できているので、主要栄養素のバランスのとれた献立であれば銅の摂取は適切に保たれていると判断できる。

6 今後の課題

 銅サプリメントの使用がもたらす健康影響について、更なる情報収集が必要である。

銅(Cu)の食事摂取基準及び私の摂取量と摂取源としている主な食品

銅の食事摂取基準(mg/日) 

銅(Cu)の摂取量と主要な摂取源

 私は、生命健康長寿に必要な栄養素や機能性成分を出来るだけ多く含み、かつ、命と健康に悪い成分が出来るだけ少ない多様な食品バランス良く食べるよう心がけています。
 そして、活用に当たっての留意事項において「日本人は、平均的に見て十分な銅摂取が達成できているので、主要栄養素のバランスのとれた献立であれば銅の摂取は適切に保たれていると判断できる」とされていますが、私の場合も、多様でバランスのとれた食品の中のナッツ類舞茸黒胡麻ココア豆乳納豆からだけで、推奨量0.9mg/日の2倍近い1.6mg/日の銅を摂取しているので、詳細な摂取量を把握することは不要であり計算していません。

まとめ(亜鉛と銅のサプリメントについて)

 ネット通販サイトでは、銅だけのサプリや銅も含むマルチミネラルサプリメント以外に、亜鉛と銅だけを含むサプリメントも販売されています。
 そうしたサプリメントの説明には「亜鉛と銅はお互いの吸収を阻害する拮抗関係にあるので両方同時に摂取することが必要」等と書かれていますが、亜鉛は不足しがちであるのに対して、銅は平均的に見て十分摂取できているとされています。
 亜鉛だけが不足しているとするならその不足分を補う量の亜鉛のサプリメントだけを摂取すれば良いと考えるのですが、コメント欄を見ると「亜鉛の過剰摂取による貧血緩和のため」「亜鉛サプリのお供」「亜鉛を摂る者には必要」と言った理由で銅のサプリメントを購入されている方々が多いようです。

 亜鉛や銅に限らず、サプリメントを摂取する場合は、各栄養素の過不足量を把握した上で何をどれだけ摂るかを決めることが必要だと考えていますが、特に銅は多くの食品に含まれている上に耐容上限量も比較的低く設定されていることに留意が必要だと考えています。

 次回は、マンガン(Mn)摂取基準摂取量等について書きます。

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