前回のビオチン(ビタミンB7)の摂取基準と摂取量等に引き続き、今回は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」におけるビタミンCの摂取基準と摂取量等について書きます。
Ⅱ各 論 1エネルギー・栄養素 1-6 ビタミン (2)水溶性ビタミン ⑨ビタミンC
1 基本的事項
1-1 定義と分類
ビタミン C(アスコルビン酸)とは、図15に示した構造式を有する化合物である。ビタミンCは、食品中でもたんぱく質などと結合せず、還元型のL-アスコルビン酸(AsA)(分子量=176.12)又は酸化型のL-デヒドロアスコルビン酸(L-dehydroascorbic acid;DAsA)(分子量 =174.11)として遊離の形で存在している。日本食品標準成分表2015年版(七訂)では、成分値は両者の合計で示されている。食事摂取基準は還元型のL-アスコルビン酸の重量(図15)として設定した。分子量の違いはわずかであるため、食事摂取基準を活用する上では両者を区別する必要はほとんどない。

1-2 機能
ビタミンCは、皮膚や細胞のコラーゲンの合成に必須である。ビタミンCが欠乏すると、コラーゲン合成ができないので血管がもろくなり出血傾向となり、壊血病となる。壊血病の症状は、疲労倦怠、いらいらする、顔色が悪い、皮下や歯茎からの出血、貧血、筋肉減少、心臓障害、呼吸困難などである。また、ビタミンCは、抗酸化作用があり、生体内でビタミンEと協力して活性酸素を消去して細胞を保護している。
1-3 消化、吸収、代謝
ビタミンCは、消化管から吸収されて速やかに血中に送られる。消化過程は食品ごとに異なり、一緒に食べる他の食品によっても影響を受ける。ビタミンCはビタミンとしては例外で、食事から摂取したものも、いわゆるサプリメントから摂取したものも、その相対生体利用率に差異はなく、吸収率は200 mg/日程度までは90%と高く、1g/日以上になると50%以下となる。酸化型のデヒドロアスコルビン酸も、生体内で還元酵素により速やかにアスコルビン酸に変換されるため生物学的な効力を持つ。体内のビタミンCレベルは、消化管からの吸収率、体内における再利用、腎臓からの未変化体の排泄により調節されており、血漿濃度は、およそ400mg/日で飽和する。
2 指標設定の基本的な考え方
ビタミンCの欠乏によって影響を受けるのは、主として間葉系組織である。代表的な疾患は、壊血病である。主要な症状は、全身の点状・斑状出血、歯肉の腫脹・出血などである。また、ビタミンCには抗酸化作用があり、心臓血管系の疾病予防効果が期待できる。ビタミンCの欠乏実験はわずかに存在するものの、最近では、倫理上ビタミン欠乏実験を遂行することは困難である。そこで、心臓血管系の疾病予防効果及び有効な抗酸化作用が期待できる量として、推定平均必要量を策定した。
3 健康の保持・増進
3-1 欠乏の回避
3-1-1 必要量を決めるために考慮すべき事項
ビタミンCを1日当たり10mg程度摂取していれば欠乏症(壊血病)は発症しない。一方、心臓血管系の疾病予防効果や有効な抗酸化作用は、血漿ビタミンC濃度が50µmol/L 程度であれば期待できることが疫学研究及び in vitro 研究で示されている。そして、ビタミンCの摂取量と血漿濃度の関係を報告した36論文(対象は15〜96歳)のメタ・アナリシスでは、血漿ビタミンC濃度を50µmol/Lに維持する成人の摂取量は83.4mg/日であることが示されている。
このように、壊血病予防が期待できる量と、心臓血管系の疾病予防効果及び有効な抗酸化作用が期待できる量との差が極めて大きい。
3-1-2 推定平均必要量、推奨量の策定方法
・成人(推定平均必要量、推奨量)
上述のように、心臓血管系の疾病予防効果及び有効な抗酸化作用は、血漿ビタミンC濃度が50µmol/L程度であれば期待できる。そして、血漿ビタミンC濃度を50µmol/L に維持する成人の摂取量は、83.4 mg/日であることが示されている。そこで、丸め処理を行って85 mg/日を心臓血管系の疾病予防効果及び有効な抗酸化作用を示す推定平均必要量とした。推奨量は、推定平均必要量に推奨量算定係数1.2を乗じて100mg/日とした。参考としたデータが男女の区別なくまとめていたため、男女差は考慮しないこととした。成人男女で実施したビタミンCの枯渇・負荷実験において未変化体の尿中排泄は 50〜60 mg/日では認められず100 mg/日で起こること、体内ビタミンCプールを反映する白血球ビタミンC濃度は100mg/日で飽和することが示されている。これらのデータからも、100 mg/日という推奨量は妥当であると考えられる。
・高齢者(推定平均必要量、推奨量)
上述のメタ・アナリシスでは、成人を用いた研究と高齢者を用いた研究に分けた検討も行っており、同じ血漿ビタミンC濃度に達するために必要とする摂取量は前者に比べて後者で高いことが示されている。そのため、高齢者では、それ未満の年齢に比べて多量のビタミンCを必要とする可能性があるが、値の決定が困難であったため、65歳以上でも65歳未満の成人と同じ量とした。
・小児(推定平均必要量、推奨量)
(略)
・妊婦の付加量(推定平均必要量、推奨量)
(略)
・授乳婦の付加量(推定平均必要量、推奨量)
(略)
3-1-3 目安量の策定方法
・乳児(目安量)
(略)
3-2 過剰摂取の回避
3-2-1 摂取源となる食品
通常の食品で可食部100g当たりのビタミンC含量が100mgを超える食品が少し存在するが、通常の食品を摂取している者で、過剰摂取による健康障害が発現したという報告は見当たらない。
3-2-2 耐容上限量の策定方法
健康な者がビタミンCを過剰に摂取しても消化管からの吸収率が低下し、尿中排泄量が増加することから、ビタミンCは広い摂取範囲で安全と考えられている。したがって、耐容上限量は設定しなかった。
ただし、腎機能障害を有する者が数gのビタミンCを摂取した条件では、腎蓚酸結石のリスクが高まることが示されている。ビタミンCの過剰摂取による影響として最も一般的なものは、吐き気、下痢、腹痛といった胃腸への影響である。1日に3〜4gのアスコルビン酸を与えて下痢を認めた報告がある。
ビタミンCの摂取量と吸収や体外排泄を検討した研究から総合的に考えると、通常の食品から摂取することを基本とし、通常の食品以外の食品から1g/日以上の量を摂取することは推奨できない。
3-3 生活習慣病の発症予防
ビタミンCの摂取量と血液中濃度、体外排泄を検討した研究から、1g/日以上を摂取する意味はないことが示されている。種々の疾病発症に対するビタミンCサプリメントの有益な効果はいまだ明確になっていない。慢性腎臓病患者では、ビタミンCの過剰の補給は、尿路結石や高蓚酸血症を来すので避けるべきである。尿路結石の既往のある患者にビタミンCを摂取させた研究では、2,000 mg 以上のビタミンCを摂取すると尿中蓚酸排泄量、尿中ビタミンC排泄量が増加したので、2,000mg以上のビタミン Cを摂取することは推奨されない。
以上より、生活習慣病の発症予防のためのビタミンCの量を策定するための科学的根拠は十分ではなく、目標量は設定しなかった。
4 生活習慣病の重症化予防
ビタミンC摂取と生活習慣病の重症化予防の直接的な関連を示す報告はないため、生活習慣病の重症化予防を目的にした量は設定しなかった。
5 活用に当たっての留意事項
喫煙者は、非喫煙者よりもビタミンCの必要性が高く、同様のことは受動喫煙者でも認められている。該当者は、まず禁煙が基本的対応であることを認識し、同年代の推奨量以上にビタミンCを摂取することが推奨される。
また、推定平均必要量は、ビタミンCの欠乏症である壊血病を予防するに足る最小必要量からではなく、心臓血管系の疾病予防効果及び抗酸化作用の観点から算定しているため、災害時等の避難所における食事提供の計画・評価のために、当面の目標とする栄養の参照量として活用する際には留意が必要である。
ビタミンCの食事摂取基準及び私の摂取量と摂取源としている主な食品
ビタミンCの食事摂取基準(mg/日)

ビタミンCの摂取量
私の現在のビタミンCの摂取量は、推奨量の100mg/日を132mg/日上回る232mg/日です。
ビタミンCの主要な摂取源
多様な食品をバランス良く
生命と健康長寿に必要な栄養素や機能性成分を出来るだけ多く含み、かつ、命と健康に悪い成分が出来るだけ少ない多様な食品をバランス良く食べるよう心がけています。
しかしながら、ビタミンCを豊富に含む食品は極めて限られているため、現状では、232mg/日のビタミンC摂取量中、ブロッコリーからだけで174mg/日を摂取しているのが実態であり、仮に、ブロッコリーを食べていなければ、ビタミンCの摂取量は推奨量100mg/日の僅か2/3にも満たない58mg/日になります。
ビタミンCの摂取源としている食品(1mg/日以上の摂取源となっている12食品)
下記の各表は、私が常食している全ての食品を「食品成分データベース」で検索して得られた結果をNumbersで集計した1mg/日以上のビタミンCの摂取源となっている12食品です。(単位:mg)
なお、当然ながら食べている食品の種類は日々異なりますが、これらの食品の多くはほぼ毎日食べているものであり、頻度が少ないものでも1週間に1回以上は食べています。
また、それぞれの摂取量も日によって変動しますので1日当たりの概算的な平均摂取量です。
まとめ
推奨量を満たすビタミンCの摂取
多様な食品をバランス良くで書きましたとおり、ビタミンCは意識して摂取しなければ不足しやすい栄養素であり、私の場合、ブロッコリーを摂ることによって何とか推奨量を満たしています。
ビタミンCのサプリメントの摂取
ビタミンCの摂取をブロッコリーだけに頼っている現状はあまり良くないと考えています。
しかしながら、ビタミンCを豊富に含み、かつ、日常的に食事に取り入れ易い他の食品がなかなかない見当たりません。例えば、昔からビタミンCが豊富な食品の代表のように言われてきたレンモン果汁のビタミンC含有量は50mg/gで、レモン1個(果汁40g程度)から摂取出来るビタミンCは20mg程度に過ぎず、また、アセロラには1,700mg/gという極めて豊富なビタミンCが含まれていますが近所のスーパーでは売っていません。
このため、サプリメントの摂取も考えているところですが、ビタミンCのサプリメントについては肯定的な情報も多いですが、否定的な情報もあるといった状況です。
次回からミネラルについて書きます。先ず、次回はナトリウム(Na)の摂取基準と摂取量等について書きます。
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今回は、ビタミンCの機能をイメージした画像を作成してもらいました。
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