前回のナトリウム(Na)の摂取基準と摂取量等に引き続き、今回は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」におけるカリウム(K)の摂取基準と摂取量等について書きます。
Ⅱ各 論 1エネルギー・栄養素 1-7 ミネラル (1)多量ミネラル ②カリウム(K)
1 基本的事項
1-1 定義と分類
カリウム(potassium)は原子番号19、元素記号Kのアルカリ金属元素の一つである。カリウムは野菜や果物などに多く含まれているが、加工や精製度が進むにつれて含量は減少する。
1-2 機能
カリウムは、細胞内液の主要な陽イオン(K+)であり、体液の浸透圧を決定する重要な因子である。また、酸・塩基平衡を維持する作用がある。神経や筋肉の興奮伝導にも関与している。
健康な人において、下痢、多量の発汗、利尿剤の服用の場合以外は、カリウム欠乏を起こすことはまずない。日本人は、ナトリウムの摂取量が諸外国に比べて多いため、ナトリウムの摂取量の低下に加えて、ナトリウムの尿中排泄を促すカリウムの摂取が重要と考えられる。また、近年、カリウム摂取量を増加することによって、血圧低下、脳卒中予防につながることが動物実験や疫学研究によって示唆されている。
1-3 消化、吸収、代謝
カリウムの吸収は受動的であるが、回腸や大腸ではカリウムが能動的に放出される。大腸でカリウムが吸収されるのは、大腸内カリウム濃度が25mEq/L 以上のときである。したがって、重度の下痢では、1日16Lに及ぶ腸液が失われる場合もあるので血漿カリウム濃度が激減する(低カリウム血症)。
2 指標設定の基本的な考え方
カリウムの不可避損失量を補い平衡を維持するのに必要な値と、現在の摂取量から目安量を設定した。また、高血圧を中心とした生活習慣病の発症予防の観点から目標量を設定した。
3 健康の保持・増進
3-1 欠乏の回避
3-1-1 必要量を決めるために考慮すべき事項
カリウムは、多くの食品に含まれており、通常の食生活で不足になることはない。また、推定平均必要量、推奨量を設定するための科学的根拠は少ない。
3-1-2 目安量の策定方法
・成人・高齢者(目安量)
成人におけるカリウム不可避損失量の推定値として、便:4.84mg/kg体重/日、尿:2.14mg/kg体重/日、皮膚:2.34mg/kg体重/日(高温環境安静時 5.46 mg/kg 体重/日)、合計 9.32 mg/kg体重/日(高温環境安静時12.44mg/kg 体重/日)とする報告、合計15.64mg/kg体重/日とする報告がある。また、便からの喪失は400mg/日、尿からの排泄は200〜400mg/日であり、普段の汗、その他からの喪失は無視することができ、800 mg/日の摂取で平衡が維持できるとした報告もある。しかし、体内貯蔵量が減少し、何人かの被験者で血漿濃度が低下したため、1,600mg/日(23 mg/kg 体重/日)を適切な摂取量としている。また、カリウムの体内貯蔵量を正常に保ち、血漿及び組織間液の濃度を基準範囲に維持するには、1,600mg/日を摂取することが望ましいとした報告もある。これらの報告から、1,600mg/日は安全率を見込んだ平衡維持量と考えることができる。
平成28年国民健康・栄養調査における日本人の成人のカリウム摂取量の中央値は、男性1,893〜2,505mg/日、女性1,685〜2,294mg/日であった。この値は、カリウム平衡を維持するのに十分な摂取量である。75歳以上の男性のカリウム摂取量の中央値は約2,500mg/日であり、現在の日本人にとってカリウム摂取量2,500 mg/日は無理のない摂取量であると考えられる。これを根拠に、男性では年齢区分にかかわらず目安量を2,500mg/日とした。女性は、男性とのエネルギー摂取量の違いを考慮して、2,000mg/日を目安量とした。
・小児(目安量)
(略)
・乳児(目安量)
(略)
・妊婦(目安量)
(略)
・授乳婦(目安量)
(略)
3-2 過剰摂取の回避
3-2-1 耐容上限量の策定方法
カリウムは多くの食品に含まれているが、腎機能が正常であり、特にカリウムのサプリメントなどを使用しない限りは、過剰摂取になるリスクは低いと考えられる。このため、耐容上限量は設定しなかった。
3-3 生活習慣病の発症予防
3-3-1 主な生活習慣病との関連
コホート研究のメタ・アナリシスでは、カリウム摂取の増加は脳卒中のリスクを減らしたが、心血管疾患や冠動脈疾患のリスクには有意な影響はなかった。さらに、一般集団を対象とした疫学研究で、ナトリウム/カリウム摂取比が心血管病リスク増加や全死亡に重要であるという報告もあり、その摂取は食塩との関連で評価すべきであると考えられる。2012 年に発表された WHOのガイドラインでは、カリウム摂取量90mmol(3,510mg)/日以上を推奨している。これはWHO が行ったメタ・アナリシスにおいて、90〜120mmol/日のカリウム摂取で収縮期血圧が7.16 mmHg 有意に低下したことを根拠としている。
3-3-2 目標量の策定方法
・成人・高齢者(目標量)
WHOのガイドラインでは、成人の血圧と心血管疾患、脳卒中、冠動脈性心疾患のリスクを減らすために、食物からのカリウム摂取量を増やすことを強く推奨し、カリウム摂取量と血圧、心血管疾患などとの関係を検討した結果、これらの生活習慣病の予防のために3,510mg/日のカリウム摂取を推奨している。また、2016年に発表された量・反応メタ・アナリシスでは、カリウム摂取と脳卒中の発症の間には逆相関が確認され、カリウム摂取量が3,510mg/日で脳卒中のリスクが最も低いことが報告されている。日本人は、ナトリウムの摂取量が多く、高血圧の発症予防を積極的に進める観点からもこの値が支持される。したがって、WHOのガイドラインで示された値を目標と考えることとした。
しかし、日本人の現在のカリウム摂取量は、これらよりもかなり少なく(表 2)、WHOの値を目標量として掲げても、その実施可能性は低いと言わざるを得ない。そこで、次の方法で目標量を算定することとした。
平成28年国民健康・栄養調査に基づく日本人の成人(18 歳以上)におけるカリウム摂取量の中央値(2,168 mg/日)と3,510mg/日との中間値である 2,839mg/日を、目標量を算出するための参照値とした。次に、成人(18歳以上男女)における参照体重の平均値(58.3kg)と性別及び年齢区分ごとの参照体重の体重比の0.75乗を用いて体表面積を推定する方法により外挿し、性別及び年齢区分ごとに目標量を算定した。ただし、参照体重の平均値には、性別及び年齢区分(全10 区分)における値の単純平均を用いた。
具体的には、
2,839mg/日×(性別及び年齢区分ごとの参照体重kg÷58.3kg)0.75とした。次に、この方法で算出された値と、現在の摂取量の中央値(平成28年国民健康・栄養調査)との差を検討し、高い方の値を目標量として用いることにした。その際、200mg/日で数値の丸め処理を行うとともに、隣接する年齢区分間における数値の平滑化処理を行った(表 2)。
・小児(目標量)
(略)

4 生活習慣病の重症化予防
食塩過剰摂取の血圧上昇作用に対するカリウムの拮抗作用が認められている。疫学研究でもナトリウム/カリウム摂取比が心血管疾患リスク増加や全死亡に重要であるという報告がある。
先に述べたように、2012年に発表されたWHOのガイドラインでは、カリウム摂取量3,510mg/日以上を推奨している。また、2018年に発表された ACC、AHA他の治療ガイドラインでは、カリウム 3,500〜5,000 mg/日が、摂取目標として示されている。
以上のような国内外のガイドラインの検討により、高血圧の重症化予防のためには、発症予防のための目標量よりも多くのカリウムを摂取することが望まれるが、重症化予防を目的とした量を決めるだけの科学的根拠はないことから、重症化予防のためのカリウム摂取量の設定は見送った。
5 活用に当たっての留意事項
カリウム単独で考えるのではなく、ナトリウムの項で記述したように、ナトリウム/カリウムの摂取比を考慮することも大切である。
日本人のナトリウム摂取量からすると、一般的にはカリウムが豊富な食事が望ましいが、特に高齢者では、腎機能障害や、糖尿病に伴う高カリウム血症に注意する必要がある。
6 今後の課題
近年の報告では、ナトリウム、カリウムの摂取量は食事調査に加えて、24 時間尿中排泄量の値を用いるようになってきている。摂取量の評価方法について検討、整理することが必要である。
カリウム(K)の食事摂取基準及び私の摂取量と摂取源としている主な食品
カリウムの食事摂取基準(mg/日)

カリウムの摂取量
私の現在のカリウムの摂取量は、目標量3,000mg/日を2,700mg/日上回り、過剰摂取とも言える5,700mg/日です。
カリウムの主要な摂取源
多様な食品をバランス良く
生命と健康長寿に必要な栄養素や機能性成分を出来るだけ多く含み、かつ、命と健康に悪い成分が出来るだけ少ない多様な食品をバランス良く食べるよう心がけています。
そして、定義と分類で『カリウムは野菜や果物などに多く含まれている』と書かれているとおり、日常的に食べている野菜や果物等から大量のカリウムを摂取しています。
カリウムの摂取源としている食品(上位20食品)
下記の各表は、私が常食している全ての食品を「食品成分データベース」で検索して得られた結果をNumbersで集計したカリウムの摂取量が多い上位20食品です。(単位:mg)
なお、当然ながら食べている食品の種類は日々異なりますが、これらの食品の多くはほぼ毎日食べているものであり、頻度が少ないものでも1週間に1回以上は食べています。
また、それぞれの摂取量も日によって変動しますので1日当たりの概算的な平均摂取量です。
食品 | ブロッコリー | バナナ | 濃縮野菜ジュース | 豆乳 | 乾燥ワカメ | 納豆 | 人参 | 林檎 | ココア | むき甘栗 |
食品摂取量(g) | 124 | 157 | 180 | 200 | 6.0 | 40.0 | 72.0 | 164 | 7.0 | 33.3 |
ビタミンB6摂取量(mg) | 571 | 566 | 540 | 428 | 360 | 280 | 216 | 197 | 196 | 187 |
食品 | ナッツ類 | ココナッツミルク | ヨーグルト | 干し芋 | 玉葱 | ハイカカオチョコレート | ブナシメジ | 榎茸 | 鶏胸肉 | 味噌 |
食品摂取量(g) | 28.7 | 80.5 | 100 | 17.3 | 96.8 | 15.0 | 25.0 | 27.0 | 23.3 | 19.0 |
ビタミンB6摂取量(mg) | 185 | 185 | 180 | 170 | 145 | 135 | 93 | 92 | 86 | 84 |
まとめ(カリウムの過剰摂取?)
私の現在のカリウムの摂取量5,700mg/日は、2018年に発表されたACC(米国心臓病学会)、AHA(米国心臓病協会)などの治療ガイドラインにおけるカリウムの摂取目標3,500〜5,000mg/日の上限値をも700mg/日上回っています。
耐容上限量の策定方法において『腎機能が正常であり、特にカリウムのサプリメントなどを使用しない限りは、過剰摂取になるリスクは低いと考えられる。』と書かれている一方、活用に当たっての留意事項においては『特に高齢者では、腎機能障害や、糖尿病に伴う高カリウム血症に注意する必要がある。』ともされています。
今のところ、腎機能は正常であり、糖尿病でもなく、高カリウム血症の自覚症状もありませんが、果してこのまま過剰とも言えるカリウムを摂取し続けて良いのかどうか、特に腎機能を悪化させないのか気になり色々と勉強していますが答えが出ていません。また、カリウムの摂取量を減らす場合、他の栄養素や機能性成分の摂取との兼ね合いで何の食品をどの程度減らすべきか迷っています。
次回はカルシウム(Ca)の摂取基準と摂取量等について書きます。
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今回は、カリウム(K)の機能をイメージした画像を作成してもらいました。
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