二度目の人生における健康的な食生活 68~生命と健康長寿に必要なナイアシンの摂取基準と摂取量等

ナイアシンの機能のイメージ画像 生命と健康長寿に必要な栄養素の摂取基準と摂取量等

 前回ビタミンB2摂取基準摂取量等に引き続き、今回は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」におけるナイアシン(ビタミンB3)摂取基準摂取量等について書きます。

Ⅱ各 論 1エネルギー・栄養素 1-6 ビタミン (2)水溶性ビタミン ③ナイアシン

1 基本的事項

1-1 定義と分類

 ナイアシン活性を有する主要な化合物は、ニコチン酸ニコチンアミドトリプトファンである(図6)。狭義では、ニコチン酸ニコチンアミドを指す。広義では、トリプトファンのナイアシンとしての活性が、重量比で 1/60 であるので、ナイアシン当量は下記の式から求められる
  ナイアシン当量(mgNE)=ナイアシン(mg)+1/60トリプトファン(mg)
 食事摂取基準はニコチン酸量として設定し、ナイアシン当量(niacin equivalent:NE)という単位で設定した。

 日本食品標準成分表 2015 年版(七訂)追補 2017において、初めて、ニコチンアミドニコチン酸総量であるナイアシン量と、体内でトリプトファンから生合成されるナイアシン量を加味したナイアシン当量(ナイアシン+トリプトファンから生合成されるナイアシン量)が記載された。

1-2 機能

 ニコチン酸及びニコチンアミドは、体内でピリジンヌクレオチドに生合成された後、アルコール脱水素酵素やグルコース-6-リン酸脱水素酵素、ピルビン酸脱水素酵素、2-オキソグルタル酸脱水素酵素等、酸化還元反応の補酵素として作用する。ATP産生ビタミンC、ビタミンEを介する抗酸化系脂肪酸の生合成ステロイドホルモンの生合成等の反応に関与している。NADは、ADPリボシル化反応の基質となり、DNAの修復合成細胞分化に関わっている。ナイアシンが欠乏すると、ナイアシン欠乏症(ペラグラ)が発症する。ペラグラの主症状は、皮膚炎、下痢、精神神経症状である。

1-3 消化、吸収、代謝

 生細胞中のナイアシンは、主にピリジンヌクレオチドとして存在する。食品を調理・加工する過程でピリジンヌクレオチドは分解され、動物性食品ではニコチンアミド植物性食品ではニコチン酸として存在する。食品中のピリジンヌクレオチドは、消化管内でニコチンアミドに加水分解される。ニコチンアミド、ニコチン酸は小腸から吸収される。穀物中のニコチン酸の多くは糖質と結合した難消化性の結合型ニコチン酸として存在する。消化過程は食品ごとに異なり一緒に食べる他の食品によっても影響を受ける。我が国で食されている平均的な食事中のナイアシンの遊離型ナイアシンに対する相対生体利用率は、60%程度であると報告されている。

2 指標設定の基本的な考え方

 ナイアシン欠乏症のペラグラの発症を予防できる最小摂取量から、推定平均必要量を求めた。ヒトを用いたナイアシン欠乏実験より、尿中のN1-メチルニコチンアミド(MNA)排泄量が1mg/日を下回った頃から、ペラグラ症状が顕在化することが報告されている。そこで、MNA排泄量を1mg/日に維持できる最小ナイアシン当量摂取量を必要量とした。ナイアシンは、エネルギー代謝と深い関わりがあることから、エネルギー摂取量当たりで算定した。

3 健康の保持・増進

3-1 欠乏の回避

3-1-1 必要量を決めるために考慮すべき事項

 ナイアシン不可欠アミノ酸のトリプトファンから、肝臓で生合成もされる。この転換比は、おおむね重量比で60mg のトリプトファンから1 mg のニコチンアミドが生成するとされている。すなわち、60mgのトリプトファンが1mg のナイアシンと当価となる。

3-1-2 推定平均必要量、推奨量の策定方法

・成人(推定平均必要量、推奨量)
 ヒトを用いてトリプトファン-ニコチンアミド転換率を求めた報告から、トリプトファン-ニコチンアミド転換比を重量比で1/60とした。
 ナイアシンエネルギー代謝に関与するビタミンであることから、推定平均必要量はエネルギー当たりの値とした。ナイアシン欠乏実験において、欠乏とならない最小ナイアシン摂取量は、4.8mgNE/1,000kcalであったと報告されている。この値を成人(18〜64歳)の推定平均必要量算定の参照値とし、対象年齢区分の推定エネルギー必要量を乗じて推定平均必要量を算定した。
 推奨量は、推定平均必要量に推奨量算定係数1.2を乗じた値とした。
・高齢者(推定平均必要量、推奨量)
 65歳以上の高齢者については、ナイアシン代謝活性は、摂取量と代謝産物の尿中排泄量から推定した場合、成人と変わらないというデータがあることから、成人(18〜64歳)と同様に、4.8mgNE/1,000kcal を推定平均必要量算定の参照値とし、対象年齢区分の推定エネルギー必要量を乗じて推定平均必要量を算定した。推奨量は、推定平均必要量に推奨量算定係数1.2を乗じた値とした。
・小児(推定平均必要量、推奨量)
(略)
・妊婦の付加量(推定平均必要量、推奨量)
(略)
・授乳婦の付加量(推定平均必要量、推奨量)
(略)

3-1-3 目安量の策定方法

・乳児(目安量)
(略)

3-2 過剰摂取の回避

3-2-1 摂取源となる食品

 ニコチンアミドは動物性食品に存在するが、多くても10 mg/100g可食部程度である。ニコチン酸は、植物性食品に存在するが、高い食品でも数mg/100g可食部程度である。通常の食品を摂取している者で、過剰摂取による健康障害が発現したという報告は見当たらない

3-2-2 耐容上限量の策定

 ・成人・高齢者・小児(耐容上限量)
 ナイアシンの強化食品やサプリメントとしては、ニコチン酸又はニコチンアミドが通常使用されている。ナイアシンの食事摂取基準の表に示した数値は、強化食品由来及びサプリメント由来のニコチン酸あるいはニコチンアミドの耐容上限量である。
 ニコチンアミドは 1 型糖尿病患者への、ニコチン酸は脂質異常症患者への治療薬として大量投与された報告が複数ある。大量投与により、消化器系(消化不良、重篤な下痢、便秘)や肝臓に障害(肝機能低下、劇症肝炎)が生じた例が報告されている。これらをまとめた論文及び関連する論文から、ニコチンアミドの健康障害非発現量を25mg/kg体重ニコチン酸の健康障害非発現量を6.25mg/kg 体重とした。この健康障害非発現量は、成人における大量摂取データを基に設定された値であるが、慢性摂取によるデータではないことから、不確実性因子を5として、成人のニコチンアミドの耐容上限量算定の参照値を5mg/kg 体重/日ニコチン酸の耐容上限量算定の参照値を1.25mg/kg 体重/日とした。これらの値に各年齢区分の参照体重を乗じ、性別及び年齢区分ごとの耐容上限量を算出し、平滑化を行った。
 なお、ニコチン酸摂取による軽度の皮膚発赤作用は一過性のものであり、健康上悪影響を及ぼすものではないことから、耐容上限量を設定する指標には用いなかった
・乳児(耐容上限量)
(略)
・妊婦・授乳婦(耐容上限量)
(略)

3-3 生活習慣病の発症予防

 ナイアシン摂取と生活習慣病の発症予防の直接的な関連を示す報告はないため、目標量は設定しなかった

4 生活習慣病の重症化予防

 ニコチン酸の多量投与が脂質異常症や冠動脈疾患に有効であるという報告はある。しかしながら、これらの治療に使用される量はニコチン酸の耐容上限量を超えており、食事での栄養素摂取の範疇ではない
 ナイアシン摂取と生活習慣病の重症化予防の直接的な関連を示す報告はないため、生活習慣病の重症化予防を目的とした量は設定しなかった

5 活用に当たっての留意事項

 ナイアシンの推定平均必要量は、ペラグラ発症という欠乏を回避するための最小摂取量であり、これを下回る日々が数週間続くと欠乏となる。ビタミン体としてのナイアシンよりも、前駆体であるトリプトファン摂取量の欠乏がペラグラ発症のリスクがより高い体内の要求量は、エネルギー消費量の増大に伴って増える
 ナイアシンは不可欠アミノ酸のトリプトファンから生合成されるので、トリプトファンの摂取量も考慮する必要があるトリプトファンの推定平均必要量は成人で6mg/gたんぱく質であるが、ナイアシン栄養を良好に維持するには12mg/gたんぱく質の摂取が望ましい

ナイアシンの食事摂取基準及び私の摂取量と摂取源としている主な食品

ナイアシンの食事摂取基準(mgNE/日)

ナイアシンの摂取量と主要な摂取源

 私は、生命健康長寿に必要な栄養素や機能性成分を出来るだけ多く含み、かつ、命と健康に悪い成分が出来るだけ少ない多様な食品バランス良く食べるよう心がけています。

 そして、ナイアシンは、そうした食品の中の魚類鶏胸肉鶏卵大豆製品きのこ類等、様々な食品に含まれているため、そういった食品の中の主要なものからのナイアシン摂取量だけで、推奨量14mgNE/日を6mgNE/日上まわる20mgNE/日を超えているので、詳細な摂取量を把握することは不要であり計算していません。

 また、トリプトファンも、ナイアシン栄養を良好に維持するため望ましいとされている12mg/gたんぱく質に達しています

まとめ

推奨量を満たすナイアシン(ビタミンB3)の摂取

 ネット上には、ナイアシンは通常の食生活では不足しにくい栄養素であるが、飲酒過多や偏食等によって不足する場合がある等と書かれている情報が多く、私の場合も、ナイアシンの摂取量と主要な摂取源で書きましたとおり、多様な食品をバランス良く食べることにより余裕を持って推奨量以上のナイアシンを摂取しています。

チームプレーで働くビタミンB群

 前回書きましたビタミンB2同様、ナイアシンも解糖系とクエン酸回路(TCA回路)に加えて、たんぱく質や脂質からのエネルギー代謝における補酵素としても必要不可欠なビタミンですあり、他のビタミンと共同連携して働きます。

 次回は、ビタミンB6摂取基準摂取量等について書きます。

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