前回までに引き続いて、今回は「その1 多様な食品をバランス良く食べることについて」で書いた「日常的に食べている主な食品等」のうち、無調整豆乳、ココナッツミルク、濃縮野菜ジュースに含まれている栄養素と機能性成分について書きます。
なお、ココナッツミルクと濃縮野菜ジュースは朝食のオーバーナイトオーツの食材とし、無調整豆乳はオーバーナイトオーツの食材としたり夕食後に飲む純ココアに混ぜて飲んでいます。
無調整豆乳
日本食品標準成分表では、豆乳は豆類(だいず)に分類されています。
日本農林規格によると、豆乳類には「豆乳」「調製豆乳」「豆乳飲料」があり、それぞれ次の通り規定されています。
「豆乳」は、大豆(粉末状のもの及び脱脂したものを除く)から熱水等によりたんぱく質その他の成分を溶出させ、繊維質を除去して得られた乳状の飲料(大豆豆乳液)で大豆固形分が8 %以上のもの。
「調製豆乳」は、大豆豆乳液に植物油脂及び砂糖類、食塩等の調味料を加えた乳状の飲料(調製豆乳液)で大豆固形分6 %以上のもの等。
「豆乳飲料」は、調製豆乳液等で大豆固形分が4 %以上のもの、調製豆乳液等に果実の搾汁、野菜の搾汁、乳又は乳製品、穀類粉末等を加えた乳状の飲料で大豆固形分4 %以上のもの等。
上記の規定によると「無調整豆乳」というものはありませんが、(おそらく「調製豆乳」「豆乳飲料」とは異なるということを明確にするためだと思いますが、)豆乳メーカーは、上記規定における「豆乳」を「無調整豆乳」として販売していますので、本ブログにおいても「豆乳」を「無調整豆乳」と表記します。
無調整豆乳に含まれる栄養素
無調整豆乳を含む豆乳類は大豆から成分を溶出させるためと飲み易くするため、90%以上が水分となっているため、単位重量(100g)当たりの栄養素の量は少なくなっていますが、マグカップ1杯(200ml≒200g)程度を飲むとするなら、それなりの量(例えば同じ大豆製品である納豆1パックと同等程度)の栄養素、特に蛋白質、ミネラル(カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛)、ビタミン(E、B12を除くB群)を摂取できます。
また、無調整豆乳の蛋白質には、原料である大豆に含まれる蛋白質と同様、9種類の必須アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、トリプトファン)がバランス良く含まれています。
無調整豆乳に含まれる栄養素の一般成分とアミノ酸については、下記「食品成分データベース」の検索結果をご参照ください。
無調整豆乳に含まれる機能性成分
無調整豆乳を含む豆乳類の原料である大豆には、β-コングリシニン、レシチン、イソフラボン、サポニン、フェルラ酸、GABA(γ-アミノ酪酸)といった様々な機能性成分が含まれていますが、豆乳に加工する段階でフェルラ酸とGABA(γ-アミノ酪酸)が無くなりβ-コングリシニン、レシチン、イソフラボン、サポニンが残るようです。
β-コングリシニンは大豆タンパク質の主要成分であり、東京大学大学院農学生命科学研究科の研究成果「大豆たんぱく質βコングリシニンの抗肥満・代謝改善効果の新たな分子機構を解明(2016/06/23)」によると、抗肥満、脂質・糖代謝改善効果など生活習慣病予防に資する作用を持つ事より、β-コングリシニンの有効活用が期待されるとのことです。
レシチンはリン脂質の一種で細胞膜の主成分であり、健康長寿ネットの「レシチン・コリンの効果と摂取量」によると、アルツハイマー型認知症の予防、動脈硬化の予防、肝機能の保護、脂肪肝の予防、美肌等の効果を有するとのことです。
イソフラボンはポリフェノールの一種であるフラボノイドの代表例のひとつであり、その化学構造がエストロゲン(女性ホルモン)に類似しているため、女性の健康に対する作用等について様々な研究がされていますが、男性についても前立腺癌との関係等について研究されています。
国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所予防関連プロジェクトの「大豆食品・イソフラボン摂取と前立腺がん死亡との関連について」によると、次のとおり書かれています。
イソフラボンと前立腺がんとの関係 イソフラボンには、エストロゲン活性があり、血中テストステロンレベルを下げたり、発がんに関わるチロシンキナーゼの作用や血管新生を阻害したりすることなどにより、前立腺がんを予防するということが、多くの実験研究で報告されています。今回の疫学研究では、イソフラボンの摂取量が多いグループで限局性前立腺がんのリスクだけが低くなりました。イソフラボンは「ラテントがん」から「臨床がん」に至るまでの期間を遅らせる作用があると考えられます。 一方、進行がんとの関連は、ゲニステイン、ダイゼイン、大豆製品ではみられませんでした。このことから、限局がんと進行がんでは前立腺がんの性質が異なる可能性が考えられます。また、イソフラボンの予防効果のメカニズムの一つとして、腫瘍組織のエストロゲン受容体β(ER-β)を介した作用が考えられています。進行がんではER-βが少なくなると報告されていますので、イソフラボンによる予防効果が作用しなくなることが考えられます。 また、進行性前立腺がんのリスクは、みそ汁の摂取量が多いグループで高くなりました。今回の研究では進行がんの人数が少ないので、この結果は偶然という可能性が考えられます。ただし、限局がんを予防するイソフラボンが逆に進行がんを促進させるという可能性も残ります。アメリカで行われたフィナステリドという薬を用いた大規模介入研究では、介入群で前立腺がんの頻度は減少しましたが、より悪性度の高い前立腺がんのリスクは上昇しました。フィナステリドには、テストステロンからより活性の強いジヒドロテストステロンに変換する5αリダクターゼという酵素を阻害する作用がありますが、イソフラボンにも同じような作用があります。いずれにしても、進行度別に効果が異なるという結果の解釈は難しく、イソフラボンと進行性前立腺がんとの関連については、まだよくわかっていません。 イソフラボンは多くとった方がよいのか? 今回の研究では、子供の頃から日常の食生活でイソフラボンをよく摂取している日本人集団を対象とし、その中でもイソフラボンを多くとるグループで限局性前立腺がんリスクが低くなる可能性が示されました。また、イソフラボンと進行性前立腺がんとの関係がまだはっきりしていませんので、サプリメントの摂取の効果についてはわかりません。 人生のどの時期にどれくらいイソフラボンを摂取すれば限局性前立腺がんを予防できるのかについては明らかになっていませんので、今後の研究が期待されます。 |
大豆イソフラボンには、抗酸化作用もありますが、麹菌で発酵させることによりその抗酸化活性が強まるとされています。
サポニンは、様々な植物に含まれている界面活性作用を持つ物質であり、洗剤として利用されたり、強い毒性を持つものは漁猟に用いられたとされています。
健康長寿ネットの「サポニンと効果と摂取量」によると、大豆サポニンは抗酸化作用、肥満予防、肝機能の向上等の効果を有するとのことです。
これらの機能性成分の含有量については、国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)」の「機能性成分含有量情報(豆類)」をご参照ください。
ココナッツミルク
ココナッツミルクは、ココヤシの完熟果実の胚乳を砕き、水を加えて煮沸、濾過したものであり、日本食品標準成分表においては果実類に分類されています。
ココナッツミルクに含まれる栄養素
ココナッツミルクには、脂質、利用可能炭水化物と、ミネラルの中ではカリウムとマグネシウムがやや豊富に含まれていますが、全般的には栄養素はそれほど豊富ではありません。
ココナッツミルクに含まれる栄養素については、下記「食品成分データベース」の検索結果をご参照ください。
ココナッツミルクに含まれる機能性成分
ココナッツミルクに含まれている脂質の約2/3は、炭素数6-12の中鎖脂肪酸(Medium Chain Fatty Acid, MCFA)であるラウリン酸、オクタン酸、デカン酸 とグリセリンからなる中性脂肪(Medium Chain Triglyceride, MCT)です。
中鎖脂肪酸からなる中性脂肪は消化(中性脂肪の消化は脂肪酸とグリセリンのエステル結合を加水分解することによる)のために胆汁酸による乳化を必要とせず(長鎖脂肪酸からなる中性脂肪を加水分解するためには、その前段階として胆汁酸による乳化が必要)、また、消化(加水分解)された中鎖脂肪酸は小腸で吸収されてから門脈を経由して直接肝臓へと運ばれる(長鎖脂肪酸はリンパ管を経由することが必要)ため、長鎖脂肪酸よりも早くエネルギー源として代謝されます。
また、京都大学の「食事性肥満から肝炎発症に関わる制御因子の同定―中鎖脂肪酸油による予防・GPR84 標的 NASH 治療薬の可能性―」には次のとおり書かれています。
過食・高脂肪食摂取により誘導される脂肪毒性から、生体内でその時、産生される中鎖脂肪酸と GPR84 受容体が肝機能保護に働くことをマウス実験によって明らかにしました。肥満などの代謝性疾患から脂肪肝を生じる割合は非常に高く、一部は肝炎(非アルコール性脂肪肝炎:NASH)を伴った結果、肝硬変・肝がんへ移行しますが、その正確な進展機序は不明なままで有効な治療法は確立されていません。 GPR84 は中鎖脂肪酸の受容体と考えられており、我々は 2022 年に経口摂取した中鎖脂肪酸油(MCT オイル:特にカプリン酸 C10:0)が、GPR84 を介した腸管ホルモン分泌により血糖上昇を抑制することを明らかにしましたが、GPR84 の生体内における生理的意義は不明なままでした。本研究により、高脂肪食摂取から肝臓において高産生された中鎖脂肪酸が GPR84 に作用することで、マクロファージの過剰な活性化を抑制し、脂肪肝から進展する肝臓の炎症とそれに伴う肝線維化を防ぐことを見出しました。さらに、NASH モデルマウスにカプリン酸(C10:0)MCT オイルを食事補充、あるいは GPR84 作動剤の投与の結果、NASH への進展を著しく防ぐことができました。MCT オイルによる肥満・糖尿病とその関連疾患の予防、GPR84 を標的とした、NASH 治療薬の開発に向けて今後、本成果の応用が期待されます。 注1:カプリン酸はデカン酸の別名です。 注2: NASH(ナッシュ):非アルコール性脂肪肝炎 (Non-Alcoholic SteatoHepatitis) |
なお、YouTube等のネット上においては、中鎖脂肪酸の摂取源として、ココナッツオイルが喧伝されていますが、私としては、費用と時間を掛けてココナッツミルクからオイルだけを精製することは経済上の無駄であり、かつ、オイルに含まれない栄養素や他の機能性成分を捨てることは栄養上勿体ないと考えるため、ココナッツオイルではなくココナッツミルクを摂っています。
この考えは他の食品についても同様であり、精製する必要性や利点が無い限り、特定の成分だけを精製した食品よりも、出来るだけホールフード又はホールフードに近い食品を摂るようにしています。
ココナッツミルクに含まれる脂肪酸については、下記「食品成分データベース」の検索結果をご参照ください。
濃縮野菜ジュース
私が買っている濃縮野菜ジュース(以下「本野菜ジュース」とします。)のラベルを見ると、30品目の野菜以外の原材料や添加物は含まれておらず、かつ、「濃縮」とは書いていますが「還元」とは書かれていません。生で飲んだ感じではそれらに偽りは無いと感じています。
濃縮野菜ジュースに含まれる栄養素
参考として、「日本食品標準成分表」/「食品成分データベース」に掲載されている「トマトベースの食塩無添加のミックスジュース」に含まれる栄養素の検索結果を添付しますが、本野菜ジュースのラベルに記載されている栄養素は全てこの検索結果よりも多く、栄養素によっては数倍も多く含まれているようになっています。
濃縮野菜ジュースに含まれる機能性成分
本野菜ジュースのラベルには、リコピン、β-カロテン、ポリフェノールという機能性成分が含まれていると記載されています。
詳細は書かれていませんが、本野菜ジュースのベースがトマトであろうことから、リコピンとβ-カロテンの多くはトマト由来で、β-カロテンについては人参由来も多く含まれていると思います。リコピンとβ-カロテンの機能性については「人参に含まれる機能性成分」の項をご参照ください。
ポリフェノールの種類は極めて多く、また、本ジュースの材料である30品目の野菜がそれぞれ複数のポリフェノールを含んでいるであろうことから本ジュースに含まれるポリフェノールの種類は相当な数になるものと思います。
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