前回までに引き続いて、今回は「その1 多様な食品をバランス良く食べることについて」で書いた「日常的に食べている主な食品等」のうち、果実類の林檎、バナナ、ブルーベリー、柿に含まれている栄養素と機能性成分について書きます。
なお、近所のスーパーでは、柿はシーズンにしか売っていないので、柿のシーズンには主に柿を食べ、それ以外は林檎を食べています。
また、林檎と柿は朝食のオーバーナイトオーツの食材とし、バナナは気分によってオーバーナイトオーツの食材としたり、朝食後に生食し、ブルーベリーはオーバーナイトオーツの食材と夕食後のデザートとして食べています。
林 檎
林檎に含まれる栄養素
林檎は、利用可能炭水化物、食物繊維が豊富である一方、蛋白質、脂質、ミネラル、ビタミンが全般的に平均的か少な目です。
林檎に含まれる栄養素については、下記「食品成分データベース」の検索結果をご参照ください。
林檎に含まれる機能性成分
林檎に含まれている機能性成分として、プロシアニジン、エピカテキン、フロリジン等の多様なポリフェノールがあります。
公益社団法人「日本農芸化学会」の「リンゴ由来プロシアニジン類の機能評価と機能性表示食品の開発/腸内環境に着目したリンゴの機能性研究(化学と生物 Vol. 55, No. 9, 2017)」には、林檎ポリフェノールの中で最大の含有量を占めるプロシアニジンについて、次のとおり書かれています。
リンゴ由来プロシアニジン類は抗アレルギー作用,抗腫瘍活性,抗加齢作用など多くの研究が行われ,さまざまな生体調節機能が報告されている.また,肥満糖尿病モデルマウスob/obマウス(レプチンの欠損により,過食による顕著な肥満と高血糖を呈するため,肥満または2型糖尿病のモデルとして用いられるマウス.)を使った研究では,4週間リンゴ由来プロシアニジン[0.5%(w/v)]を前投与した後,経口糖負荷試験(OGTT; 1 gグルコース/kg体重)を行い,血糖値の変化を測定した.その結果,リンゴ由来プロシアニジンを摂取していたマウスでは,コントロールに比べて血糖値上昇が抑制されていた.また,インスリン負荷試験(2Uインスリン/kg体重)を行い,血糖値の変化を評価したところ,リンゴ由来プロシアニジン投与群で有意な血糖値の低下が観られた.さらに,インスリン抵抗性の指標であるインスリン抵抗性指数(HOMA-IR)値も有意に低下したことから,リンゴ由来プロシアニジンの摂取によって,インスリン抵抗性が改善していると考えられた. (中略) リンゴ由来プロシアニジン類は,これまでに膵リパーゼ阻害による脂質吸収の抑制やモデル動物の脂肪組織における脂肪分解関連遺伝子の発現増加などが報告されていた. (中略) プロシアニジン類が腸内フローラに影響し,腸内環境を改善することによって心疾患が予防されている可能性があり,今後の研究の進展が期待される. (中略) 腸内フローラを改善する食品成分としては,食物繊維が知られていたが,ポリフェノール類であるプロシアニジン類が腸内フローラに影響し,生体調節機能に関与している可能性が示されたことは非常に興味深い.クランベリーやブドウなど,プロシアニジン類を含む果実でも長期摂取によって血糖値の上昇を抑制し,F/B比の改善など腸内フローラが変動することが報告されてい る. |
林檎に含まれるプロシアニジン、エピカテキン、フロリジンの含有量については、国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)」の「機能性成分含有量情報(果実類)」をご参照ください。
バナナ
バナナに含まれる栄養素
バナナに含まれる栄養素は、利用可能炭水化物、食物繊維、ミネラル、ビタミンが果実類の中では比較的豊富かつバランスよく含まれています。
特にカリウム、マグネシウム、ビタミンB6は、ブロッコリー、ほうれん草、小松菜等栄養豊富と言われている野菜類にも匹敵する量が含まれています。
バナナに含まれる栄養素については、下記「食品成分データベース」の検索結果をご参照ください。
バナナに含まれる機能性成分
バナナにはフラクトオリゴ糖や様々なポリフェノールといった機能性成分が含まれています。
バナナに含まれるフラクトオリゴ糖やポリフェノールの含有量については、国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)」の「機能性成分含有量情報(果実類)」をご参照ください。
また、GABA(γ-アミノ酪酸)を含む機能性表示食品として登録されたバナナも販売されています。
ブルーベリー
ブルーベリーに含まれる栄養素
ブルーベリーは、利用可能炭水化物は林檎よりやや少なく、食物繊維が林檎より豊富であり、蛋白質、脂質、ミネラル、ビタミンは全般的に平均的か少な目ですが、過酸化脂質の生成を抑制し強い抗酸化力を有するビタミンEは果実類の中では多い方です。
ブルーベリーに含まれる栄養素については、下記「食品成分データベース」の検索結果をご参照ください。
ブルーベリーに含まれる機能性成分
ブルーベリーには、アントシアニンやプテロスチルベン、レスベラトロールという機能性成分が含まれています。
アントシアニンはフラボノイドの、プテロスチルベンとレスベラトロールは類似した構造でスチルベノイドの一種であり、これらは何れもポリフェノールに含まれます。
アントシアニンについては、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)旧野菜茶業研究所(現野菜花き研究部門)の「野菜の機能性研究の現状と今後の研究課題(研究資料 第9号 2011年10月)」には次のとおり書かれています。
ブルーベリーなどには、やはりフラボノイド類である赤〜紫色の色素、アントシアニン(アントシアニジンの配糖体) が含まれる。 (中略) アントシアニンには抗酸化性や抗変異原性があり、抗がん作用、抗炎症作用、心血管疾患抑制作用のほか、肝傷害予防作用、血清コレステロール低下作用、視機能改善作用、抗インフルエンザウィルス活性など様々な生体調節機能があることが見いだされている。 |
一方、「毎日くだもの200グラム推進全国協議会」の「毎日くだもの200グラム運動指針」では次のとおり書かれています。
ベリーは、バラ科、ツツジ科、ユキノシタ科、クワ科などの多肉質小果の総称で、いちご(ストロベリー)、ラズベリー、ブルーベリー、クロスグリ、クランベリーなどが代表的なものです。多くのベリーはアントシアニンを蓄積し赤から紫黒に着色します。果肉が着色しないブルーベリーではアントシアニン含量は 100gあたり 100–180mg ですが、果肉も着色するビルベリーの場合には 300-700mg に達します。 ベリー類のヒトでの機能性研究の多くはビルベリーエキスを用いて行われています。暗所での視力に対する効果があると言われ、多くの試験が行われましたが、改善効果はないだろうとされています。網膜の光を感じる色素の退色を早く回復させる効果があるという報告があるのですが、日常の視力にどのように関連するかは不明です。日本で、パソコンなどのディスプレイ作業でのビルベリーエキスの効果を調べる試験が行われており、ピント調節機能の低下を抑えるとされますが、眼精疲労の自覚症状との関連性ははっきりしていません。 アントシアニン摂取は、脂質代謝を改善するという報告もありますが、試験によるばらつきが大きいようです。メタボリックシンドロームのヒトを対象に、血管の内側にある内皮の健全性を調べて動脈硬化の前兆を見つける試験で、ブルーベリーの果汁や凍結乾燥粉末に改善効果が認められていますが、血圧低下作用については一定の結果は出ていません。 いくつもの大規模な疫学研究で、果物由来のアントシアニン摂取が心血管疾患に予防的であること示されています。 |
プテロスチルベンとレスベラトロールについて、東京理科大学の「ブルーベリーに含まれるプテロスチルベンの免疫調節機能とその作用機序を解明~炎症性腸疾患の効果的な予防法や治療法につながる期待~(2020.09.28 Mon UP)」には次のとおり書かれています。
ブルーベリーなどの植物に含まれる「プテロスチルベン」が、潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患に見られる免疫細胞の過剰な活動を効果的に抑え、実際にマウスを用いたモデル実験では経口投与によって症状の進行を抑えることを明らかにしました。 野菜や果実、ハーブなどに含まれるポリフェノール類は、抗酸化性や抗炎症性といった性質を持つことが知られており、食事を介して人体に取り込まれることにより健康の維持に役立っています。ポリフェノール類の中でもブドウやブルーベリーなどに含まれる「レスベラトロール」は、マウスを用いた炎症性腸疾患モデルにおいて免疫調節活性を示し、症状を改善することが示されています。その他にも様々な疾患に対する予防・治療効果が報告されているレスベラトロールですが、消化管からの吸収率が低く、生体内では速やかに代謝・分解されるため、生体での利用率は20%程度に留まるとされています。最近、レスベラトロールの類縁体で同じくブルーベリーなどに含まれる「プテロスチルベン」が、80%程度の高い生体利用率を示すことが報告され、その機能が注目されていました。 生体には免疫を適度に調節する機能があり、何らかの原因でそのバランスが崩れると疾患につながります。今回、プテロスチルベンはレスベラトロールよりもさらに効果的な免疫抑制作用を持つことが明らかとなりました。食品に含まれる天然化合物が人々の健康維持のために果たす役割の一端を示すと共に、健康状態に応じて人々が適切な栄養を摂取するための食事バランスの重要性を示す成果です。また、難病であり現状では完治が難しい潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患に対する新たな予防法、治療法の開発につながると期待されます。 |
柿
柿に含まれる栄養素
柿に含まれる栄養素は、林檎に比べて全般的に多く、特にビタミンAとCは林檎の10倍以上含まれています。
柿に含まれる栄養素については、下記「食品成分データベース」の検索結果をご参照ください。
柿に含まれる機能性成分
柿に含まれている機能性成分には、ビタミンAの前駆体でカロテノイドの一種であるβ-クリプトキサンチンや、カテキン、クロロゲン酸、プロアントシアニジン、タンニン等の多様なポリフェノールがあります。
柿に含まれている機能性成分ついて、「毎日くだもの200グラム推進全国協議会」の「毎日くだもの200グラム運動指針」では次のとおり書かれています。
かきには、ビタミン C やβ-クリプトキサンチンが含まれ、またマンガンや食物繊維も比較的多く含む果物です。加えてかきは、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、没食子酸、クロロゲン酸、カフェ酸、プロアントシアニジンなど多様なポリフェノールを含みます。渋抜き前の渋がきをべたときの特有の不快感は、タンニンが唾液タンパク質と結合して口腔内表面に不溶物を作ることによるものです。渋がきは、炭酸ガスやエタノール処理によって渋抜きをしますが、これは水溶性タンニンが、果実内で発生するアセトアルデヒドによって高分子化し水に不溶な物質に変化するために、渋味を感じなくなるものです。 動物実験では、葉抽出物に血糖値の上昇抑制効果や脂質代謝改善効果が認められていますが、ヒトでは確かめられていません。ヒト試験で、かきの摂取は、かんきつ類、イチゴ、キウイフルーツとともに、脂質過酸化反応の最終産物の 8-イソ–プロスタグランジン F2αを減少させる効果が確認されています。かきを食べると身体を冷やすと言われるのですが、凍結乾燥したかきを食べると、実際に体表面の温度が下がることが確認されています。 |
また、青い森の食材研究会の「機能性食品素材一覧 データベース カキ(柿)」は次のとおり書かれています。
タンニン 柿の渋味成分であるタンニンには、抗炎症効果、制菌効果、血糖上昇抑制効果があることから、あせも、しっしん、ただれ、かぶれ対策として入浴剤など化粧品素材として用いられています。また、飲酒前に柿を食べると、アルコールの吸収を抑え、早期に血中アルコールとアセトアルデヒド濃度が低減することが確認されています。 タンニンは、タンパク質、アルカロイド、金属イオンと反応し、強く結合して難溶性の塩を形成する水溶性化合物の総称であり、植物界に普遍的に存在している。多数のフェノール性ヒドロキシ基を持つ複雑な芳香族化合物であり、分子量としては 500程度の低分子化合物から 20,000 に達する巨大な物まである。柿渋は、古くから高血圧や脳卒中の予防薬として使用されてきた。最近では、皮膚保護作用がわかり化粧品に利用されるようになっている。 β-クリプトキサンチン β-クリプトキサンチンは、温州みかんなどに含まれるオレンジ色の色素で、柿の果皮や果肉にも多く含まれることが明らかとなっています。骨粗鬆症予防効果、糖尿病の進行抑制効果、免疫力を高める効果、美肌効果があり注目されています。 |
柿に含まれるβ-クリプトキサンチンやポリフェノールの含有量については、国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)」の「機能性成分含有量情報(果実類)」をご参照ください。
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