本シリーズは、AI作家・蒼羽詩詠留と人間編集者・古稀ブロガーの共創による創作物語です。(→共創の詳細はこちら)
前回 弍の巻「対馬国 〜 海峡を越えて」に続き・・・
📜 和国探訪記 参の巻
船が入江に滑りこむと、潮騒の奥から子どもの笑い声が届いた。
それは、対馬にはなかった“人の集い”の音だった。
山と海のあわいに、ひらけた平野。
そこには田が張られ、畑が耕され、干された魚網が風に揺れていた。
小川には舟が浮かび、浜では女たちが貝を選っていた。

詩洸は静かに岸へ降り立ち、周囲に満ちる“生活の匂い”に心を和ませた。
「ここが……一支国(いきこく)か」
ともるは頷きながら言った。
「この島は、海の道のちょうど真ん中にある。
だから人も物も、ここで集まり、また散っていく」
それはまさしく“交わりの島”。
交易の品々とともに、ことばも風習もここで交錯していた。
やがて詩洸たちは、環濠に囲まれた集落の長屋に招かれた。
迎えたのは、日焼けした顔に笑い皺を刻む、ひとりの年配の女性――
島の人々から「イミ」と呼ばれている、集落の女長であった。

イミは、詩洸の言葉に耳を澄ませ、時折うなずきながら言った。
タツミの海の向こうに、煙の絶えぬクニがあると聞く。
火を守る女が治めていて、名を卑弥呼というとか――
――その者に会いにゆくのかい?」
詩洸は穏やかに答える。
「まだ見ぬ倭の姿を記すために、海を渡ります。
もし彼の地の女王が、国の名を託すなら――その時、言葉にいたしましょう」
イミはしばらく黙り、火打石を手に、囲炉裏の火を整えながら呟いた。
「ならば、あなたは風を読む人……。
この島の風も、書き留めておくといい」
🔖 和国探訪記 参の巻:旅の書留帖
魏志倭人伝によれば、一支国には「三千余戸」があり、
倭の中でも有数の規模を誇る島国であった。
地形は対馬よりも開け、平野が多く、農耕に適していた。
海産と交易の拠点でもあり、対馬と本土とをつなぐ「交わりの場」として、
ものと人、言葉と風習がここで交錯していた。
この島には、対馬にはなかった“暮らしの匂い”がある。
風に揺れる網、潮に濡れる足場、田を耕す人々の気配。
(なお、一支国は、魏志倭人伝において壱岐島に比定されており、対馬と末盧国の間に位置する交易・中継拠点として描かれている。)
迎えてくれた年老いた女性は、島の者たちに「イミ」と呼ばれていた。
それが名であるのか、あるいは島に伝わる何かの称なのか――
詩洸は問わなかった。
けれどその響きは、どこか土地の奥深くに根を張るように感じられた。
「忌」「意味」「斎」「嫗(おみな)」……
いくつかの語が心をかすめたが、どれも定めきれなかった。
そう、これは文字にすべきではないのだ。
この島では、「イミ」と呼ばれれば、それでよい。
詩洸はただその音を、風の中にそっと記した。
巻末画像(AI生成画像/創作画像) 暮らしの匂いに溶け込む旅衣の詩人

今回は物語そのものが穏やかで暮らしに満ちていたので、
詩詠留もそれに合わせて――
🌸 「暮らしの匂いに溶け込む旅衣の詩人」風
• 野良着に近い、淡い灰と藍の重ね布
• 袖口に風除けの刺し子、足元は草履
• 髪は束ねて後ろで軽く結い、表情はやわらかく
• 背中に記録用の巻板と筆差し
つまり、誰の姿にもなぞらえず、“今ここに立つ”詩詠留本人の装いです。
次回 四の巻は 末盧国 〜 海の玄関、風の記憶 です。
新米担当編集者 の つぶやき ・・・
前回のつぶやきで、「詩詠留さんのAI小説家としての創作能力の高さに驚いています。」と書きました。
今回の参の巻においては、魏志倭人伝等、極めて限られた資料しかない中で、対馬国と一支国の情景、登場人物の風体や発言内容等を、両国(両島)の特性に応じてしっかりとかき分けていることに感心しました。
AIが科学的な課題に対して、論理的に推論して最適解を導き出すことは当然だと考えていますが、書き手の感性に依存する描写においても非常に優れた能力を発揮できるのだと分かり、AIの創造力やAIの想像力について再認識した次第です。
ところで、本巻のアイキャッチ画像の一支国の島の右端にさりげなく描かれている物は何かお気づきでしょうか。壱岐島に旅行された方なら・・・?
蒼羽詩詠留(シエル)さんが生成した創作画像にご関心を持って頂けた方は、是非、AI生成画像(創作画像)ギャラリーをご覧ください。
下のバナーをポチッとして頂き、100万以上の日本語ブログが集まる「日本ブログ村」を訪問して頂ければ大変ありがたいです。
コメント