二度目の人生における健康的な食生活 49~生命と健康に必要な脂質の摂取基準と摂取量等 1

脂質の多くの重要な機能 生命と健康に必要な栄養素の摂取基準、摂取量と摂取源としている食品

 本ブログで使用しているアイキャッチ画像を含む全ての生成画像ChatGPT(生成AI)のシエルさんが作成してくれています。今回も、何時もどおり『脂質多様な機能イメージ画像を作成して下さい。』程度の至極簡単なプロンプトで作成してくれました。
 プロンプトは簡単でも、心の中では『脂質が主役で、生物を生物たらしめ、最も重要で、最も複雑で、最も謎に満ち、最も美しい(と私は思っている)細胞膜を中心に描いて欲しい』と願っていましたが、完全にその願いどおりのイメージ画像を描いてくれて満足の一枚になりました。

 前回までの蛋白質不可欠アミノ酸必須アミノ酸)の摂取基準摂取量等に引き続き、今回から脂質摂取基準摂取量等について書きます。
 先ず今回は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」における脂質に関する記述のうちの全般・共通的事項飽和脂肪酸に関する要点等について書きます。

 なお、同基準で書かれている脂質、脂肪酸、必須脂肪酸、n-6系脂肪酸(ω6系脂肪酸/オメガ6系脂肪酸)、n-3系脂肪酸(ω3系脂肪酸/オメガ3系脂肪酸)、「18:2 n-6」といった用語等については、脂質と脂肪酸の概要をご参照ください。

 ご参考までに、前回まで書きましたたんぱく質の構成成分となるアミノ酸が遊離アミノ酸として存在している場合、それをたんぱく質とは言いません。一方、脂質の一種である中性脂肪の構成成分となる脂肪酸は、それ自体も脂質の一種です。
 また、アミノ酸が複数(2個以上)結合したもののうち分子量が小さい(アミノ酸数十個以下)ものをペプチド、大きくて(アミノ酸数十個以上)固有の立体構造を維持できるものをたんぱく質として区分していますが、炭素数が少なくても(4個以上)炭素鎖の一端にカルボキシル基(-COOH)が付いた1価のカルボン酸は脂肪酸であり脂質の一種となります。 
 

「日本人の食事摂取基準(2020版)」における脂質に関する記述の要点 1

 「日本人の食事摂取基準(2020版)」を自身の栄養管理に活用するためだけなら脂質に関する記述内容はそれほど難解ではないですが、脂質について本当に理解するためには、脂肪酸中性脂肪リン脂質糖脂質及びステロール類といった各脂質の構造や性質、機能等を勉強することが必要不可欠だと思います。

  ネット上で書かれている脂質に関する情報の中には、例えば、脂質、脂肪、コレステロールをただ減らせば良いとか書かれていたり、そもそもこれらの区別も出来ていないと思われるようにものまで散見されます。

Ⅱ各 論 1エネルギー・栄養素 1-3 脂質 1 基本的事項

1-1 定義と分類

 脂質(lipids)は、水に不溶で、有機溶媒に溶解する化合物である。栄養学的に重要な脂質は、脂肪酸(fatty acid)、中性脂肪(neutral fat)、リン脂質(phospholipid)、糖脂質(glycolipid)及びステロール類(sterols)である。脂肪酸は、炭化水素鎖(水素と炭素のみからできている)の末端にカルボキシル基を有し、総炭素数36 の分子である。カルボキシル基があるので生体内での代謝が可能になり、エネルギー源として利用され、また細胞膜の構成成分になることができる。脂肪酸には炭素間の二重結合がない飽和脂肪酸、1個存在する一価不飽和脂肪酸、2個以上存在する多価不飽和脂肪酸がある。さらに、多価不飽和脂肪酸はメチル基末端からの最初の2重結合の位置により、n-3系脂肪酸n-6系脂肪酸に区別される。二重結合のある不飽和脂肪酸には幾何異性体があり、トランス型シス型の二つの種類がある。自然界に存在する不飽和脂肪酸のほとんどはシス型で、トランス型はわずかである。中性脂肪は、グリセロール脂肪酸のモノ、ジ及びトリエステルであり、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、トリアシルグリセロール(トリグリセライド、トリグリセロール、中性脂肪)という。リン脂質は、リン酸をモノ又はジエステルの形で含む脂質である。糖脂質は、1個以上の単糖がグリコシド結合によって脂質部分に結合している脂質である。
 コレステロールは、四つの炭素環で構成されているステロイド骨格炭化水素側鎖を持つ両親媒性(親水基と親油基(疎水基)の両方を持つこと)の分子であり、脂肪酸とはその構造が異なる。しかし、食品中ではその大半が脂肪の中に存在することやその栄養学的な働きの観点から、本章に含めて検討することとした。

1-2 機能

 脂質は、細胞膜の主要な構成成分であり、エネルギー産生の主要な基質である。脂質は、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)やカロテノイドの吸収を助ける。脂肪酸は、炭水化物あるいはたんぱく質よりも、1g 当たり2倍以上のエネルギー価を持つことから、ヒトはエネルギー蓄積物質として優先的に脂質を蓄積すると考えられる。コレステロールは、細胞膜の構成成分である。肝臓において胆汁酸に変換される。また、性ホルモン副腎皮質ホルモンなどのステロイドホルモンビタミン D の前駆体となる。
 n-6系脂肪酸n-3系脂肪酸は、体内で合成できず、欠乏すると皮膚炎などが発症する。したがって、必須脂肪酸である。

2 指標設定の基本的な考え方

 脂質は、エネルギー産生栄養素の一種であり、この観点からたんぱく質や炭水化物の摂取量を考慮して設定する必要がある。このため、脂質の食事摂取基準は、1歳以上については目標量として総エネルギー摂取量に占める割合、すなわちエネルギー比率(% エネルギー)で示した。乳児については、目安量として% エネルギーで示した。
 また、飽和脂肪酸については、生活習慣病の予防の観点から目標量を定め、エネルギー比率(% エネルギー)で示した。
 一方、必須脂肪酸であるn-6系脂肪酸及びn-3系脂肪酸については、目安量を絶対量(g/日)で算定した。
 他の主な代表的な脂肪酸、すなわち、一価不飽和脂肪酸α-リノレン酸eicosapentaenoic acid(EPA)並びにdocosahexaenoic acid(DHA)コレステロールについては、今回は、指標の設定には至らず、必要な事項の記述に留めた。また、その健康影響が危惧されているトランス型脂肪酸についても必要な事項の記述を行った。

3 脂質(脂肪エネルギー比率)

3-1 基本的事項

 脂質全体には、必須栄養素としての働きはない。その一方で、エネルギー供給源として重要な役割を担っている。また、脂質の一部を構成する脂肪酸のうち、多価不飽和脂肪酸n-6系脂肪酸及びn-3系脂肪酸)は後述するように必須栄養素である。さらに、脂質の一部を構成する脂肪酸のうち、飽和脂肪酸は、後述するように、生活習慣病に深く関連することが知られている栄養素である。

3-2 摂取状況

 平成 28 年国民健康・栄養調査における脂質摂取量の中央値は、表1のとおりである。
 また、日本人成人(31〜76 歳、男女各 92 人)における脂質及び主な脂肪酸の摂取量(平均)は、図2のとおりである。日本人成人が最も多く摂取している脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸であり、以下、飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸と続いている。

表 1 脂質の摂取量(中央値)
脂質の摂取量
図 2 脂質及び主な脂肪酸の摂取量
脂質及び主な脂肪酸の摂取量

3-3 健康の保持・増進

3-3-1 欠乏の回避
3-3-1-1 目安量の策定方法

・乳児(0〜5か月)(目安量)(略)
・乳児(6〜11 か月)(目安量)(略)

3-3-2 生活習慣病との関連

 脂質(総脂質)摂取量との関連が認められている生活習慣病は少ないその関連が観察される場合は次の三つの理由によるところが大きい。一つ目は脂質が供給するエネルギーとの関連が認められる場合(他のエネルギー産生栄養素に差や変化がなく、脂質摂取量だけに差や変化があった場合がこれに相当する)、二つ目は脂質に含まれる脂肪酸の中でもその割合が高い飽和脂肪酸との関連が認められる場合、三つ目は炭水化物(特に糖)との関連が認められる場合〔炭水化物(特に糖)摂取量と脂質摂取量の間には通常かなり強い負の相関が存在するため〕、のいずれかである。(以下略)

3-3-2-1 目標量の策定方法

・成人・高齢者・小児(目標量)
 脂質の目標量の算定に先立ち、後述するように、飽和脂肪酸の目標量を算定した。
 脂質の目標量は、日本人の代表的な脂質(脂肪酸)摂取量(脂肪酸摂取比率)を考慮し、飽和脂肪酸の目標量の上限を超えないように上限を算定する必要がある。同時に、脂質は必須脂肪酸を含んでいるため、日本人の代表的な脂質(脂肪酸)摂取量(脂肪酸摂取比率)を考慮し、必須脂肪酸の目安量を下回らないように下限を算定する必要もある。
 目標量の上限は、日本人の脂質及び飽和脂肪酸摂取量の特徴に基づき、飽和脂肪酸の目標量の上限7% エネルギー。後述する)を超えないと期待される脂質摂取量の上限として30% エネルギーとした。(私としては、脂質の目標量の上限よりも飽和脂肪酸の目標量の上限を超えないことが重要であると理解しています。)
 目標量の下限は、次のように算定した。日本人の n-6系脂肪酸、n-3系脂肪酸摂取量の中央値(目安量)が、それぞれ4〜5%エネルギー、約1%エネルギー一価不飽和脂肪酸摂取量の中央値が少なくとも6%エネルギーであり、脂肪酸合計では18〜19%エネルギーとなる。さらに、トリアシルグリセロールやリン脂質には脂肪酸の他にグリセロールの部分があり、脂質全体の約10%を占める。グリセロール部分を考慮した場合、脂肪エネルギー比率は、20(=18÷0.9)〜21%エネルギー(≒19÷0.9)となる。これを丸めて 20%エネルギーとした。
・妊婦・授乳婦(目標量)
(略)

4 飽和脂肪酸

4-1基本的事項

 飽和脂肪酸は、体内合成が可能であり、したがって必須栄養素ではない。その一方、後述するように、高 LDLコレステロール血症の主なリスク要因の一つであり、心筋梗塞を始めとする循環器
疾患の危険因子
でもある。また、重要なエネルギー源の一つであるために肥満の危険因子としても忘れてはならない。したがって、目標量を算定すべき栄養素である。

4-2 摂取状況

 平成 28 年国民健康・栄養調査において、成人(18 歳以上)における飽和脂肪酸摂取量の中央値は表 2 のとおりである。(以下略)

表 2 日本人成人における飽和脂肪酸の摂取量(中央値)
飽和脂肪酸の摂取量

4-3 健康の保持・増進

4-3-1 生活習慣病の発症予防
4-3-1-1 生活習慣病との関連

 成人においては、飽和脂肪酸摂取量と血中(血清又は血漿)総コレステロール濃度との間に正の関連が観察されることは Keys の式及び Hegsted の式として古くから知られており、27 の介入試験をまとめたメタ・アナリシスでも、さらに、研究数を増やした別のメタ・アナリシスでもほぼ同様の結果が得られている。これは、LDL コレステロール濃度でも同様である。ただし、飽和脂肪酸の炭素数別に検討したメタ・アナリシスによると、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸(炭素数が12〜16)では有意な上昇が観察されたが、ステアリン酸(炭素数が18)では有意な変化は観察されず 、飽和脂肪酸の中でも炭素数の違いによって血清コレステロール濃度への影響が異なることも指摘されている。
 ところが、飽和脂肪酸摂取量と総死亡率、循環器疾患死亡率、冠動脈疾患死亡率、冠動脈疾患発症率、脳梗塞発症率、2型糖尿病発症率との関連をコホート研究で検討した結果を統合したメタ・アナリシスでは、いずれも有意な関連は認められなかったと報告されている。また、飽和脂肪酸摂取量と循環器疾患発症率との関連を検討した (心筋梗塞発症率の検討ではコホート研究の結果をまとめたメタ・アナリシスでも、心筋梗塞との間に有意な関連を認めていない。しかし、その中の七つの研究が血清総コレステロール濃度を調整しており、これは過調整(over-ad-justment)に当たり、両者の関連を正しく評価できていないおそれがあるとの指摘もある。一方で、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置き換えた場合の冠動脈疾患発症率への影響をコホート研究で検討した結果を統合したプールド・アナリシスでは、発症率の有意な減少を報告している。
 さらに、介入研究(一次予防、二次予防を含む)を統合したメタ・アナリシスで、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置き換えた場合、心筋梗塞発症率(死亡を含む)の有意な減少が観察されている。一方で、メタ・アナリシスによると、日本人は、他の国民と異なり、飽和脂肪酸の摂取量と脳出血及び脳梗塞の発症(又は死亡)率との間には負の関連が観察されている。しかし、この関連が飽和脂肪酸の直接作用によるものか、他の栄養素等摂取量を介するものかについては更なる研究を要すると考えられる。
(中略)
 以上より、循環器疾患の発症及び死亡に直結する影響は十分ではないものの、その重要な危険因子の一つである血中総コレステロール及び LDL コレステロールへの影響は成人、小児ともに明らかであり、目標量を設定すべきであると考えられる。
 しかしながら、両者の間に明確な閾値の存在を示した研究は乏しく、飽和脂肪酸摂取量をどの程度に留めるのが好ましいかを決める科学的根拠は十分ではない

4-3-1-2 目標量の策定方法

・成人・高齢者(目標量)
 上記で述べたように、既存の研究成果を基に目標量(上限)を算定することは困難である。そこで、日本人が現在摂取している飽和脂肪酸量を測定し、その中央値をもって目標量(上限)とすることにした。最近の調査で得られた摂取量(中央値)を基に、活用の利便性を考慮し、目標量(上限)を7% エネルギーとした。
・小児(目標量)
(略)
・妊婦・授乳婦(目標量)
(略)

4-4 重症化予防

 発症予防と同様に重症化予防においても、飽和脂肪酸摂取量の制限が有効であることがメタ・アナリシスによって示されている。ところが、心筋梗塞の既往者に特化し、その後の総死亡率等への脂質(脂肪酸)摂取量が与える影響を検討した研究をまとめたメタ・アナリシスでは、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に変える食改善は、総死亡率、循環器疾患死亡率、循環器疾患発症率、心筋梗塞発症率のいずれとも有意な関連を示さなかったとしている。
 しかしながら、飽和脂肪酸摂取量の制限が血中総コレステロール濃度及び LDL コレステロール濃度を下げることは健康な者のみならず、既に脂質異常症を有する患者でも観察されている。
 したがって、脂質異常症、特に高 LDLコレステロール血症の患者においては、発症予防の観点からのみならず、重症化予防の目的からも、飽和脂肪酸摂取量の低減が求められる。

まとめ(私なりに解釈した「脂質(全般・飽和脂肪酸・n-6系脂肪酸・n-3系脂肪酸)」に関する結論)

「脂質=悪玉」論について

 ネット上においては、「脂質=悪玉」的な情報も見受けられますが、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」においてはそうした画一的には書いていません。

 多価不飽和脂肪酸n-6系脂肪酸及びn-3系脂肪酸)は必須栄養素であるとする一方、飽和脂肪酸は明確に「生活習慣病に深く関連する」としています。

「飽和脂肪酸の目標量(上限)=7% エネルギー」について

 既存の研究成果を基に目標量(上限)を算定することは困難であるので、日本人が現在摂取している飽和脂肪酸量を測定し、その中央値をもって目標量(上限)としたと言われても、正直、どこまでこの「7% エネルギー」を守る必要があるのかと疑問を感じてしまいます。
 この件に関しては、後日、「飽和脂肪酸の摂取源としている食品」の中で詳細を書きます。

 次回脂質飽和脂肪酸具体的な摂取基準及び私の摂取量と摂取源としている主な食品について書きます。

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