前回までに引き続いて、今回は「その1 多様な食品をバランス良く食べることについて」で書いた「日常的に食べている主な食品等」のうち、ドライフルーツ(レーズン、グリーンレーズン、ネオマスレーズン、乾燥クランベリー、乾燥マンゴ、乾燥パイナップル、乾燥パパイヤ)の歴史、製造(乾燥)方法と、栄養素と機能性成分にの変化等の観点から見たドライフルーツのメリットとデメリットについて書きます。
なお、私の場合、生又は冷凍の果物を食べることを基本として、ドライフルーツはオーバーナイトオーツの味付け(甘味付)のためだけに少量(約5g)だけ使っています。
ドライフルーツの歴史
ドライフルーツの歴史について、一般財団法人 食品分析開発センターSUNATECの「太古よりある加工食品:ドライフルーツを見直したい」では次のとおり書かれています。
果樹、およびイチゴ、メロンなど果実的野菜(両者を合わせて、いわゆる“くだもの”、以下、果実類という)は、日持ちがしないものや、収穫期が限られるものが多いため、古来、加工による保存性の向上が工夫されてきた。果実類の加工品には、ジャム、ジュース、果実酒など多数あるが、最も古いものは乾燥果実=ドライフルーツであろう。干しブドウは代表的なドライフルーツであり、ブドウの原産地カスピ海沿岸では5000年前からあったとされ、古代ローマ時代などにおいては、金にも匹敵する貴重品であったという。日本においては、奈良時代に干し柿が売買されていたことや、平安時代に干し柿、干し栗、干しナツメなどが供え物や公家の献立などに組み込まれていたことが記録されており、やはり特別な食品であったようだ。江戸時代になると、各種乾燥果実が盛んに作られ、自家製のほか、各地の産物としての売買がされていたという資料があり、消費が進んできたことがうかがわれる。古代のドライフルーツは天日乾燥により作られていたが、19世紀にアメリカで機械による人工乾燥が始まり、20世紀初めには早くも硫黄燻蒸により褐変防止や保存性の向上が図られ、現在でも使われている技術である。 |
ドライフルーツの製造(乾燥)方法
ドライフルーツの製造方法には、古代から行われている「天日干し」の他に、「熱風乾燥」「減圧乾燥」「糖置換(糖漬け乾燥)」「真空凍結乾燥(フリーズドライ)」「減圧フライ」「マイクロ波減圧乾燥」等があります。
天日干し
天日干しは、収穫したままや、果物の種類によっては皮を剥いたり、適当な大きさに切断したり、むしたりと、必要最小限の加工後、果物を太陽光と風だけで乾燥させる方法です。
他の製造法に比べて、糖等の添加が無く、栄養素や機能性成分の損失が少なく、果物の種類によっては渋みや苦味が減って、特定の栄養素や甘味等が増したりします。
コスト(労力、時間、場所等)を要するため、最近では一部の高級品、名産果物のお土産用等以外は自家用等だけとなっています。
熱風乾燥
熱風乾燥は、名前のとおり、熱風で乾燥させる方法です。乾燥に要する時間を短縮できる反面、熱によって栄養素等が変性、特にポリフェノール等の抗酸化物質が酸化しやすい欠点があります。
また、果物が大きいほど、表面が先に乾燥して硬化し、内部の乾燥が遅れて品質が悪くなったり、乾燥時間の短縮効果を得られないこととなりますので小さく、又は薄く切ったりすることが必要となります。
減圧乾燥
減圧乾燥は乾燥室を減圧することで、果物の内外の圧力差によって内部から水分を吸い出すとともに、水の沸点を下げて乾燥時間を短縮する方法であり、栄養素等の変性を防ぐことが出来ますが、専用の設備を要します。
糖置換(糖漬け乾燥)
糖置換(糖漬け乾燥)は、果物を糖液に漬けて果物の糖濃度を高めることにより、実質的な水分比率を下げることにより乾燥時間を短縮させる方法であり、比較的に簡単な設備でコストを下げるとともに、適度に柔らかい食感のドライフルーツを製造することが出来るため、ネット通販を見る限りは多くのドライフルーツがこの製法によって製造されているようです。(私が食べているドライフルーツの多くもこの方法によって製造されています。)
真空凍結乾燥(フリーズドライ)
真空凍結乾燥(フリーズドライ)は、-30℃程度まで急速冷凍した果物を、真空の乾燥室で乾燥する方法であり、栄養素等の変性が少なく、かつ、短時間で乾燥させ残存水分量を大きく減らすことができますが減圧乾燥以上に大掛かりな設備を要します。
減圧フライ
減圧フライは、減圧して水分の沸点を下げた上で、低温で果物を揚げる方法であり、揚げる温度を下げるほどアクリルアミド等の有害成分の生成を抑制することができますが、揚油が残ってしまいます。
揚げた後に遠心分離によって脱油することにより揚油を減らすことができますが完全に脱油することは出来ません。
マイクロ波減圧乾燥
減圧室の中で果物の中に含まれる水分子にマイクロ波を照射して気化させて乾燥する方法であり、比較的低温状態で乾燥させるため、栄養分等の変性が少なく、かつ、失った水分の代わりに、ポーラス構造という多くの小さな空洞(穴)が出来るため、他の製造方法のように製品が小さく縮むことなく、生の果物に近い大きさ、形を維持し、サクサク感のあるドライフルーツを作ることができます。
ドライフルーツのメリットとデメリット
ドライフルーツのメリット
製造方法にもよりますが、一般的には、ドライフルーツを食べることには次のようなメリットがあります。
1 栄養素と機能性成分の多くが乾燥・濃縮によって単位重量当たりの含有量が増加する。
2 生のフルーツを食べる際には廃棄している皮や種子を含んだドライフルーツの場合、そこに含まれている栄養素や機能性成分を摂ることができる。
3 調理に際して、砂糖の代わりに甘味を加えるために使用することによりGI値を低く抑えることが出来る。
ドライフルーツのデメリット
製造方法にもよりますが、一般的には、ドライフルーツを食べることには次のようなデメリットもあります。
1 多くの場合、ドライフルーツにすることによって共通的にビタミンCの含有量が減少するほか、果物の種類や乾燥方法によって減少するビタミンや機能性成分があります。
2 利用可能炭水化物と脂質の単位重量当たりの含有量が増加するため、カロリーとGI値が高くなり、特に、糖置換(糖漬け乾燥)や減圧フライによって製造されたドライフルーツは、吸収された糖や油の分だけ更に高カロリーとなり、糖置換(糖漬け乾燥)の場合はGI値も更に高くなります。
3 製造工程において糖分以外の食品添加物が使用されている場合があります。
今回の内容を書くために参考にした資料等
1 一般財団法人 食品分析開発センターSUNATEC「太古よりある加工食品:ドライフルーツを見直したい」
2 毎日くだもの200グラム推進全国協議会「毎日くだもの200グラム運動指針」
3 日本食品保蔵科学会誌 VOL.38 NO.3 2012(研究ノート)「乾燥技術の違いによる食品中の有用成分の変化」
4 日本食品保蔵科学会誌 VOL.45 NO.4 2019(研究ノート)「リンゴドライフルーツ中の機能性成分フラバノール/プロシアニジン含量に与える品種や貯蔵の影響」
5 J-STAGE「食品の乾燥(第1回)ーその歴史と製造技術ー」
6 J-STAGE「三重県工業研究所 超簡単 色鮮やかで軟らかいドライフルーツの作り方」
7 J-STAGE「マイクロ波照射および熱風乾燥により製造したニホンナシの新規ドライフルーツ」
8 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構) 「アクリルアミド生成を抑制するポテトチップ製造法」
9 一般社団法人 長野県農村工業研究所「ドライフルーツ製法別のメリット・デメリット」
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