二度目の人生における健康的な食生活 78~生命と健康長寿に必要なマグネシウム(Mg)の摂取基準と摂取量等

マグネシウムとカルシウムの機能のイメージ画像 生命と健康長寿に必要な栄養素の摂取基準と摂取量等

 前回カルシウム(Ca)摂取基準摂取量等に引き続き、今回は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」におけるマグネシウム(Mg)摂取基準摂取量等について書きます。

Ⅱ各 論 1エネルギー・栄養素 1-7 ミネラル (1)多量ミネラル ④マグネシウム(Mg)

1 基本的事項

1-1 定義と分類

 マグネシウム(magnesium)は原子番号12、元素記号Mgの金属元素の一つである。マグネシウムは、骨や歯の形成並びに多くの体内の酵素反応やエネルギー産生に寄与している。生体内には約25gのマグネシウムが存在し、その50〜60%は骨に存在する。

1-2 機能

 血清中のマグネシウム濃度は、1.8〜2.3mg/dLに維持されており、マグネシウムが欠乏すると腎臓からのマグネシウムの再吸収が亢進するとともに、骨からマグネシウムが遊離し利用される他、低マグネシウム血症となる。低マグネシウム血症の症状には、吐き気、嘔吐、眠気、脱力感、筋肉の痙攣、ふるえ、食欲不振がある。また、長期にわたるマグネシウムの不足が、骨粗鬆症、心疾患、糖尿病のような生活習慣病のリスクを上昇させることが示唆されているが、更なる科学的根拠の蓄積が必要である。

1-3 消化、吸収、代謝

 マグネシウムの腸管からの吸収率は40〜60%程度と推定される。成人で平均摂取量が約300〜350 mg/日の場合は約30〜50%であり、摂取量が少ないと吸収率は上昇する。4〜8歳のアメリカ人の小児では、摂取量が約200mg/日の場合、マグネシウムの吸収率は約60〜70%であった。

2 指標設定の基本的な考え方

 出納試験によって得られた結果を根拠として、推定平均必要量及び推奨量を設定した。乳児については(略)

3 健康の保持・増進

3-1 欠乏の回避

3-1-1 要求量を決めるために考慮すべき事項

 前述したように、マグネシウム欠乏により、様々な健康障害が出ることが報告されているが、通常の生活において、マグネシウム欠乏と断定できるような欠乏症が見られることは稀であると考えられる。マグネシウムの不足や欠乏を招く摂取量を推定することは難しいため、出納試験によってマグネシウムの平衡を維持できる摂取量から必要量を求めた

3-1-2 推定平均必要量、推奨量の設定方法

・成人・高齢者(推定平均必要量、推奨量)
 18〜26歳の日本人の青年女性を対象とした出納試験(13試験の合計131人)では、マグネシウム出納の分布は正となり、出納値の中央値が 0(ゼロ)となるように補正した結果、平衡維持は4.18mg/kg 体重/日であった。一方、20〜53歳のアメリカ人を対象とした出納試験では、男性でマグネシウムの摂取量が323mg/日、女性で234mg/日の場合にマグネシウムの出納はわずかに負のバランスとなり、このときの体重当たりの摂取量は4.0mg/kg体重/日であったことが報告されている。また、既に報告された27の出納試験のうち、カルシウム、銅、鉄、リン、亜鉛のいずれかが推定平均必要量以下、又は99パーセンタイル以上の者を除外し、男女243人について再解析したアメリカの報告によると、出納が0(ゼロ)になるマグネシウムの摂取量は、2.36mg/kg体重/日であった。これを比較検討した結果、前回までの策定方法を踏襲し、4.5mg/kg体重/日を成人の体重当たりの推定平均必要量とした。これに、性別及び年齢区分ごとの参照体重を乗じて推定平均必要量とし、推奨量は、個人間の変動係数を10%と見積もり、推定平均必要量推奨量算定係数1.2を乗じた値とした。
・小児(推定平均必要量、推奨量)
(略)
・妊婦の付加量(推定平均必要量、推奨量)
(略)
・授乳婦の付加量(推定平均必要量、推奨量)
(略)

3-1-3 目安量の設定方法

・乳児(目安量)
(略)

3-2 過剰摂取の回避

3-2-1 耐容上限量の設定

 食品以外からのマグネシウムの過剰摂取によって起こる初期の好ましくない影響は下痢である。多くの人では何も起こらないようなマグネシウム摂取量であっても、軽度の一過性下痢が起こることがある。それゆえ、下痢の発症の有無がマグネシウムの耐容上限量を決めるための最も確かな指標になると考えられる。下痢の発症を生体指標とすると、欧米諸国からの報告に基づき、成人におけるサプリメント等からのマグネシウム摂取による最低健康障害発現量を360mg/日とするのが適当と考えられる。ただし、日本人における報告はない。マグネシウムの過剰摂取によって生じる下痢が穏やかなものであり、可逆的であることを考えると、不確実性因子は例外的に1に近い値にしてもよいと考えられる。アメリカ・カナダの食事摂取基準でも同様の考え方を採用して、最低健康障害発現量を360mg/日(体重換算すると5mg/kg 体重/日)とした上で、不確実性因子をほぼ1として、成人並びに小児(ただし、8歳以上)について、耐容上限量を350mg/日としている。この考え方を採用し、サプリメント等、通常の食品以外からの摂取量の耐容上限量を、成人の場合350mg/日、小児では5mg/kg体重/日とした。
 なお、サプリメント以外の通常の食品からのマグネシウムの過剰摂取によって好ましくない健康影響が発生したとする報告は見当たらないため、通常の食品からの摂取量の耐容上限量は設定しなかった

3-3 生活習慣病の発症予防

3-3-1 主な生活習慣病との関連

高血圧
 55歳以上の高齢者を対象としたオランダの研究では、100mg/日のマグネシウム摂取量増加は収縮期/拡張期血圧の1.2/1.1mmHgの有意の降圧を伴うことが示されている。介入試験のメタ・アナリシスでは、平均410mg/日のマグネシウム補充で収縮期/拡張期血圧が0.36mmHgと、わずかだが有意に低下したと報告されている。しかし、降圧効果を証明できなかったメタ・アナリシスもある。この中で最も多くの試験を用いた報告(平均8週間の105の研究を扱い、対象者の人数は6,805 人)では、マグネシウムの介入試験には質に問題のあるものが少なくないとのコメントもある。
 2016年のメタ・アナリシス、2017年のメタ・アナリシスは、どちらもマグネシウムの補充により血圧が低下することを示している。マグネシウムの補充量は240〜960mg、365〜450mgであった。
サプリメント等の摂取によるマグネシウムの降圧作用について、科学的根拠が十分ではなく、耐容上限量との関係もあるため、サプリメント等の摂取は推奨できない
糖尿病
 マグネシウム摂取量と2型糖尿病との関連について検討した13の前向きコホート研究のメタ・アナリシスでは、マグネシウムの摂取量と 2 型糖尿病の罹患リスクは負の相関を示し、100mg/日のマグネシウム摂取量増加は、相対リスクを0.86に低下させた。
 2016年に発表された同様の解析でも、100mg/日のマグネシウム摂取量増加により、2 型糖尿病の発症を8〜13%減少させると報告されている。
 日本人を対象とした報告では、マグネシウム摂取と糖尿病発症の間には関係は見られていない。これは摂取レベルが低いことも原因していると考えられるが、日本人を対象とした更なる報告が必要と考えられる。
 カルシウムの場合と同様に、マグネシウムの補給摂取(マグネシウム630mg/日相当)によるメタボリックシンドロームの発症リスク改善の報告(50歳代の2型糖尿病患者が対象)がある。しかし、糖尿病の予防に必要なマグネシウムの摂取量を明らかにするためには、更なる縦断研究の蓄積が必要である。
慢性腎臓病
 慢性腎臓病では、低マグネシウム血症(1.8mg/dL未満)を呈する患者は、死亡率が高く腎機能低下速度が速いという報告がある。特に糖尿病腎症の患者では血清マグネシウム値が低下しやすく、そのような患者で腎機能低下速度が速い。一般に、腎機能低下とともに血清マグネシウム値は上昇するが、目標量は科学的根拠がなく不明である。

3-3-2 目標量の策定方法

 生活習慣病の発症予防のためのマグネシウムの目標量を算定するための科学的根拠は十分ではなく、今回は設定しなかった。

4 生活習慣病の重症化予防

 生活習慣病の重症化予防のためのマグネシウムの量を算定するための科学的根拠は十分ではなく、今回は設定しなかった。

5 今後の課題

 生活習慣病(高血圧、糖尿病)との関わりについて、継続して検討が必要である。

マグネシウム(Mg)の食事摂取基準及び私の摂取量と摂取源としている主な食品

マグネシウムの食事摂取基準(mg/日) 

マグネシウムの摂取量

 私の現在のマグネシウムの摂取量は、推奨量350mg/日の2倍を若干上回る720mg/日です。

マグネシウムの主要な摂取源

多様な食品をバランス良く

 生命健康長寿に必要な栄養素や機能性成分を出来るだけ多く含み、かつ、命と健康に悪い成分が出来るだけ少ない多様な食品バランス良く食べるよう心がけています。
 そして、マグネシウムは、そういった多様な食品の中の一部の肉類、魚類、野菜類等を除く多くの食品に含まれているためそうした多様な食品から幅広くマグネシウムを摂取しています。

マグネシウムの摂取源としている食品(上位20食品)

 下記の各表は、私が常食している全ての食品を「食品成分データベース」で検索して得られた結果をNumbersで集計したマグネシウムの摂取量が多い上位20食品です。(単位:mg)

 なお、当然ながら食べている食品の種類は日々異なりますが、これらの食品の多くはほぼ毎日食べているものであり、頻度が少ないものでも1週間に1回以上は食べています。
 また、それぞれの摂取量も日によって変動しますので1日当たりの概算的な平均摂取量です。

食品黒胡麻ナッツ類乾燥ワカメ豆乳バナナ十種穀物ご飯ブロッコリー納豆ハイカカオチョコレートココア
食品摂取量(g)20.028.76.020015775.012440.015.07.0
マグネシウム(mg)68676054503736353331
食品オートミールむき甘栗ココナッツミルク濃縮野菜ジュース味噌縮緬雑魚(しらす干し)韃靼入十割蕎麦十割蕎麦ヨーグルト玉葱林檎
食品摂取量(g)30.033.380.518019.012.010096.8164
マグネシウム(mg)302423221515141398

まとめ

推奨量を満たすマグネシウムの摂取

 ネット上には、マグネシウムを不足しやすい栄養素として取り上げている情報もありますが、加工食品や精製食品等を偏食することなく、多様な食品をバランス良く食べている限りはマグネシウムが不足することは少ないのではないかと考えています。

マグネシウムのサプリメントの摂取

 ネット通販では、様々なマグネシウムのサプリメントが売られていますが、食生活次第で比較的摂取しやすいマグネシウムがサプリメントに頼らないといけないほど不足している場合は、他のミネラルやビタミン等の栄養素も不足している可能性が高いのではないかと思います。
 また、サプリメント等、通常の食品以外からの摂取量の耐容上限量である350mg/日を超える高容量のサプリメントもあり注意が必要だと考えています。

 次回リン(P)摂取基準摂取量等について書きます。

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 今回は、マグネシウム(Mg)とカルシウム(Ca)の機能をイメージした画像を作成してもらいました。

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