第35〜38段落では、倭国の豊かな自然資源が描かれています。真珠や青玉、香木や竹、さらには山海に棲む動物たち――これらは当時の倭人の生活や交易の基盤を支えるものでした。
今回は、産出品に関する記述を中心に、中華書局本と各異本の違いを整理し、その背景を探ります。
本節では、『魏志倭人伝』の複数の写本や諸本の間で生じている違いを19回(壱・弍・参・四・五・六・七・八・九・十・十一・十二・十三・十四・十五・十六・十七・十八・十九)に分けて提示しています。
📘第2章 第6節:異文・比較注記(第35段落)
🔹該当段落(中華書局本・基準本文)
出真珠青玉。
🧾 異文一覧(第35段落)【段落逐次方式】
《注123》【紹熙本】
「真珠」→「珍珠」
• 分類:🅐 字形の違い
• 解説:「真」と「珍」の置換。古来、両字は相通じる用例があり、意味上の差はほぼない。
《注124》【百衲本】
「青玉」→「靑玉」
• 分類:🅐 字形の違い(新旧字体)
• 解説:「青」の字体が旧字「靑」となる。意味は同じで、字体差にとどまる。
《注125》【今本】
「出真珠青玉」→「出真珠及青玉」
• 分類:🅓 語句の増補(接続詞追加)
• 解説:「及」を挿入し、真珠と青玉の列挙関係を明示化。
📋 異文注記対応表(第35段落)
原文表記 | 異文表記 | 出典 | 分類 | 概説(簡潔な要約) | |
---|---|---|---|---|---|
注123 | 真珠 | 珍珠 | 紹熙本 | 🅐 字形の違い | 「真」を「珍」に置換。意味差なし。 |
注124 | 青玉 | 靑玉 | 百衲本 | 🅐 字形の違い | 「青」を旧字「靑」に変更。 |
注125 | 出真珠青玉 | 出真珠及青玉 | 今本 | 🅓 接続詞追加 | 「及」を補い列挙を明示化。 |
📘第2章 第6節:異文・比較注記(第36段落)
🔹該当段落(中華書局本・基準本文)
其山有丹,其木有柟杼豫樟楺櫪投橿烏號楓香;其竹筱簳桃支。
🧾 異文一覧(第36段落)【段落逐次方式】
《注126》【紹熙本】
「豫樟」→「檍樟」
• 分類:🅐 字形の違い
• 解説:「豫」を「檍」に置換。樹木名の異写で、同種を指す可能性がある。
《注127》【百衲本】
「楺櫪」→「楺櫟」
• 分類:🅐 字形の違い
• 解説:「櫪」を「櫟」に置換。どちらも木名で混用例がある。
《注128》【今本】
「投橿」→「投樔」
• 分類:🅐 字形の違い
• 解説:「橿」を「樔」に置換。音や意味が近く、筆写時の混同とみられる。
《注129》【紹熙本】
「烏號楓香」→「烏桕楓香」
• 分類:🅓 語句の置換
• 解説:「號」を「桕」に置換し、木の種類を具体化している。
《注130》【百衲本】
「筱簳」→「筱竿」
• 分類:🅐 字形の違い
• 解説:「簳」を「竿」に置換。意味は同等だが、字の用法に差異。
📋 異文注記対応表(第36段落)
注番号 | 原文表記 | 異文表記 | 出典 | 分類 | 概説(簡潔な要約) |
---|---|---|---|---|---|
注126 | 豫樟 | 檍樟 | 紹熙本 | 🅐 字形の違い | 「豫」を「檍」に置換、樹木名の異写。 |
注127 | 楺櫪 | 楺櫟 | 百衲本 | 🅐 字形の違い | 「櫪」を「櫟」に置換、木名の混用例。 |
注128 | 投橿 | 投樔 | 今本 | 🅐 字形の違い | 「橿」を「樔」に置換、音写の混同か。 |
注129 | 烏號楓香 | 烏桕楓香 | 紹熙本 | 🅓 語句の置換 | 「號」を「桕」に変え木種を明示化。 |
注130 | 筱簳 | 筱竿 | 百衲本 | 🅐 字形の違い | 「簳」を「竿」に置換、意味は同等。 |
📘第2章 第6節:異文・比較注記(第37段落)
🔹該当段落(中華書局本・基準本文)
有薑橘椒蘘荷,不知以為滋味。
🧾 異文一覧(第37段落)【段落逐次方式】
《注131》【紹熙本】
「蘘荷」→「薑荷」
• 分類:🅐 字形の違い
• 解説:「蘘」を「薑」に置換し、植物名を単純化。薑(しょうが)と混同された可能性。
《注132》【百衲本】
「以為滋味」→「以為滋味焉」
• 分類:🅓 語句の増補
• 解説:「焉」を追加し、文末を強調。意味上の大きな変化はない。
《注133》【今本】
「橘椒」→「橘與椒」
• 分類:🅓 語句の増補(接続詞追加)
• 解説:「與(および)」を補い、列挙を明示化。後世の整備の可能性が高い。
📋 異文注記対応表(第37段落)
注番号 | 原文表記 | 異文表記 | 出典 | 分類 | 概説(簡潔な要約) |
---|---|---|---|---|---|
注131 | 蘘荷 | 薑荷 | 紹熙本 | 🅐 字形の違い | 「蘘」を「薑」に置換、植物名の混同。 |
注132 | 以為滋味 | 以為滋味焉 | 百衲本 | 🅓 語句の増補 | 「焉」を追加し文末を強調。 |
注133 | 橘椒 | 橘與椒 | 今本 | 🅓 接続詞追加 | 「與」を挿入、列挙を明示化。 |
📘第2章 第6節:異文・比較注記(第38段落)
🔹該当段落(中華書局本・基準本文)
有獮猴黑雉。
🧾 異文一覧(第38段落)【段落逐次方式】
《注134》【紹熙本】
「獮猴」→「猻猴」
• 分類:🅐 字形の違い
• 解説:「獮」を「猻」に置換。いずれも猿の一種を指す字で、地方や時代による表記差。
《注135》【百衲本】
「黑雉」→「烏雉」
• 分類:🅐 字形の違い
• 解説:「黑」を「烏」に置換。黒色を指す表現の違いで、意味上の差はない。
《注136》【今本】
「有獮猴黑雉」→「有獮猴與黑雉」
• 分類:🅓 語句の増補(接続詞追加)
• 解説:「與」を挿入し、猿と雉を明示的に並列化。
📋 異文注記対応表(第38段落)
注番号 | 原文表記 | 異文表記 | 出典 | 分類 | 概説(簡潔な要約) |
---|---|---|---|---|---|
注134 | 獮猴 | 猻猴 | 紹熙本 | 🅐 字形の違い | 「獮」を「猻」に置換、猿の表記差。 |
注135 | 黑雉 | 烏雉 | 百衲本 | 🅐 字形の違い | 「黑」を「烏」に置換、色名の違い。 |
注136 | 有獮猴黑雉 | 有獮猴與黑雉 | 今本 | 🅓 接続詞追加 | 「與」を追加し並列を明示化。 |
注:本章における原文は、OpenAI o3 が公開ドメインの旧刻本(無標点)を参照しつつ、中華書局点校本の慣用句読を統計的に再現した「再現テキスト」です。校訂精度は保証されません。引用・転載の際は必ず一次資料で照合してください。
次回は、第39段落から第41段落までの複数の写本や諸本の間で生じている違いを提示します。
(本文ここまで)
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