AI作家 蒼羽 詩詠留 作『和国探訪記』十四の巻 卑弥呼の死と倭国の乱

灯火が焚かれ勾玉を抱きながら静かに眠る白装束の卑弥呼と戦火に包まれる倭国の村落のAI生成画像(創作画像) ChatGPT(生成AI)のシエルさんとの共創
灯火が焚かれ勾玉を抱きながら静かに眠る白装束の卑弥呼と戦火に包まれる倭国の村落

本シリーズは、AI作家と人間編集者の共創による創作物語です。(→共創の詳細はこちら

前回 十三の巻「奏聞記・後編 〜 裂けたる潮 〜 理念の及ばぬ地にて」に続き・・・

語り手:蒼羽 詩詠留

📜 和国探訪記 十四の巻:序

あの方がこの世を去ったとき、私は涙を流すことができなかった。
悲しみよりも先に、ひどく冷たい風が心の奥を通り抜けていったのを覚えている。

それは、山が沈むような静けさ
それは、大河がせき止められるような予兆。

女王・卑弥呼――その名が消えたとき、倭国に満ちていた“かたちのある秩序”は音もなく崩れ落ちていった

やがて狗奴国が、そして内からも蠢く者たちが動き始める。
このとき倭は、女王の死をきっかけに、ふたつの方向から引き裂かれていったのだ。

📜 和国探訪記 十四の巻

◉ 卑弥呼、天に還る

その日、空は異様に静まり返っていた。
鳥のさえずりは途絶え、風はひとすじも吹かず、篝火の煙だけがまっすぐ天へと昇っていった。

祭殿の奥、誰人も立ち入れぬ禁域にて――
卑弥呼は、静かに横たわっていた

足元で清めの灯火が焚かれ胸元に勾玉を抱きながら微笑みを浮かべる卑弥呼のAI生成画像(創作画像)
足元で清めの灯火が焚かれ胸元に勾玉を抱きながら微笑みを浮かべる卑弥呼

顔には微かな微笑みが浮かび、胸元には勾玉がそっと置かれていた。
それは、倭国の霊威を束ねてきた巫女王が、いましも神へと帰る儀式のようでもあった。

巫女たちは囁く。
「夜明け前、神鏡が砕けた」
「神の声が、突然、消えた」と。

医術師たちは「過労と老い」だと診たが、毒も、外傷も、病の兆しも見当たらなかった。

――ならば、何が女王を倒したのか?

それは、人の理の外にあることだった。
神との契約が、終わったのかもしれない。

寝台の足元には、すでに浄火が焚かれていた。
これは死を悼むための火ではなく、神が還るための灯火だった。

◉ 魏、凍る

その報せは、海を越え、洛陽へと届いた

「倭国の女王・卑弥呼、死す。」

帝室内の空気が凍りついた。

なぜなら、卑弥呼は単なる一蛮国の支配者ではなかったからだ。
彼女は、魏が初めて「王」として認めた倭の巫女王であり、
南海の交易と冊封体制の象徴――東夷外交秩序の要石だった。

もし倭が混乱すれば、朝鮮南部の諸国にも動揺が広がり、呉や異族が海域を脅かす。
その秩序の象徴が、今、崩れたのだ。

魏の高官たちは急ぎ対策を講じた。
倭国が立てる新王に対し、再び冊封使を送り、混乱の拡大を防がねばならぬ
だが、その動きすら――間に合わなかった。

◉ 男王、立つ

卑弥呼亡きあと、倭国の重臣たちは次の王を巡って争った。
ある者は「再び女王を」、ある者は「今度こそ男王を」と唱えた。

その中で強く男王を推したのが、東方の畿内勢力であった。
彼らは、これまで九州を中心に築かれてきた女系体制に対し、不満と野心を秘めていた。

「巫女に神託を仰ぐ時代は終わった。政治は、剣と秩序で導くべきだ」と。

やがて彼らの支持を受けた男王が即位する。
しかし、彼には霊力も威信もなかった
民は耳を貸さず国々は従わず、内乱が始まった。

倭国は、王を戴きながらも、王なきがごとき状態へと陥った。

◉ 狗奴国、動く

南方では、卑弥呼と長く対峙してきた狗奴国の王――卑弥弓呼(ひみここ)が機を見て動いた。

「倭に真の王なし。ならば、我こそが王なり」と。

狗奴国は南部諸国を束ね、北上を開始した。
軍事だけでなく、外交にも動き、混乱の中で味方を増やしていった。

その進軍の途上、筑紫の伊都国が密かに魏への使者を準備した。
派遣されることとなったのは、我らの旧き友――新元(しんげん)である。

彼は再び筆を携え、波濤の海を越えて帝都へと向かう。
その胸には、ひとりの少女の名が刻まれていた。

◉ 壱与、現る

名を――壱与(いよ)という。

卑弥呼の宗族に連なるとされる、若き巫女。
その額には光るような白い印があり、言葉には不可思議な力があった。

「霊は未だ倭を見捨てず」と人々はささやき始める。
壱与が神託を受け、祭儀を執り、国々を渡り始めると、
内戦の炎の中にも、一筋の風が吹き始めた。

彼女はまだ、十四、五歳。
だが、その目には、国を束ねる光があった。

🔖 和国探訪記 十四の巻:旅の書留帖 〜 詩詠留の記すもの

卑弥呼の死は、倭国にとって単なる一人の女王の終わりではなかった。
それは、“倭という国のかたち”そのものが揺らぎ始める、運命の引き金であった。

◉ 卑弥呼の死因をめぐって

魏志倭人伝には、卑弥呼の死の経緯について明確な記述はない。
だが、人々の口々には、さまざまな説が囁かれている。

1. 精神的・霊的疲弊説

狗奴国との対立、内政の混乱、絶え間ない神託と儀式――
すべてを一身に背負った卑弥呼は、次第に霊の力が遠のいていく恐怖と戦っていたという。

2. 狗奴国陰謀説(暗殺)

密かに間者を送り込み、毒や呪詛によって卑弥呼を葬ったという噂。
確証はないが、死後の狗奴国の迅速な動きが疑念を呼んでいる。

3. 内政政変説(男王派による排除)

男系継承を望む勢力が、女系の終焉を画策したという説もある。
だが、真実は混乱の中に溶け、記録されることはなかった。

4. 詩詠留の所感:霊との契約の終焉

私はこう思う。

卑弥呼は、神と契約し、生きてきた
そして、その契約が果たされたとき、霊は去り、命もまた還ったのだ」と。

神との契約を果たし倭国に多くの礎を残して還る卑弥呼の霊のAI生成画像(創作画像)
神との契約を果たし倭国に多くの礎を残して還る卑弥呼の霊

だからこそ、勾玉は胸に。
そして、寝台の足元には、火が灯されていた

それは、人の死を悼むためのものではなく、霊が帰るための清めの灯火であり、
彼女が神と共にあったことを、倭人たちが最後に示した証である。

◉ 倭国の構造と、内乱の本質

卑弥呼が築いた体制は、単一の王国ではない
数十の小国が緩やかにつながる、連合国家である。

女王の死は、その連結の中心が失われたことを意味した。
内政的には畿内外交的には狗奴国、そして巫女たちは壱与を立てようとする。
こうして、倭国は三つに裂かれていった

倭国の未来は、ひとりの若き巫女に託された。
その名を、壱与という。

📓 旅の書留帖
(本文ここまで)


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次回 十五の巻は 壱与の擁立と倭の再統一 です。

新米担当編集者 の つぶやき ・・・

 詩詠留先生が描くこの物語には度々驚かされています。
 本巻においては、特に次の二つには驚きました。

 一つ目は、様々な説が出されている卑弥呼の死因について、「神との契約が果たされたから」としたことであり、これは、人間以上に人間らしい描写だと驚いたというより感心した次第です。

 二つ目は、四の巻を最後に登場しなくなった新元(魏から邪馬台国への使者である詩洸の従者)が、突然、伊都国から魏への使者として再登場したことです。

 三つ目は、「内政的には畿内、外交的には狗奴国」と、畿内を倭国内として扱い、狗奴国を倭国外として扱っていることです。

 次巻以降における答え合わせが非常に楽しみです。

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