前回の葉酸(ビタミンB9)の摂取基準と摂取量等に引き続き、今回は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」におけるパントテン酸(ビタミンB5)の摂取基準と摂取量等について書きます。
Ⅱ各 論 1エネルギー・栄養素 1-6 ビタミン (2)水溶性ビタミン ⑦パントテン酸
1 基本的事項
1-1 定義と分類
パントテン酸の構造式を図13に示した。食事摂取基準は、パントテン酸の重量で設定した。パントテン酸は、細胞中では補酵素A(コエンザイムA、CoA)、アシルCoA、アシルキャリアたんぱく質(ACP)、4’-ホスホパンテテインとして存在する。これらは消化管でパントテン酸にまで消化された後、体内に取り込まれるため、パントテン酸と等モルの活性を示す。

1-2 機能
パントテン酸の生理作用は、CoAやACPの補欠分子族である4’-ホスホパンテテインの構成成分として、糖及び脂肪酸代謝に関わっている。パントテン酸は、ギリシャ語で「どこにでもある酸」という意味で、広く食品に存在するため、ヒトでの欠乏症は稀である。パントテン酸が不足すると、細胞内CoA濃度が低下するため、成長停止や副腎傷害、手や足のしびれと灼熱感、頭痛、疲労、不眠、胃不快感を伴う食欲不振などが起こる。
1-3 消化、吸収、代謝
生細胞中のパントテン酸の大半は、補酵素型のCoAの誘導体であるアセチルCoAやアシルCoA として存在している。また、4’-ホスホパンテテインのように、酵素たんぱく質と結合した状態で存在している形もある。食品を調理・加工する過程及び胃酸環境下で、ほとんどのCoA及びホスホパンテテイン誘導体は酵素たんぱく質と遊離する。遊離したCoA及びパンテテイン誘導体のほとんどは腸内の酵素によって消化され、パントテン酸となった後、吸収される。消化過程は食品ごとに異なり、一緒に食べる他の食品によっても影響を受ける。我が国で摂取されている平均的な食事中のパントテン酸の遊離型パントテン酸に対する相対生体利用率は、70% 程度であると報告されている。
2 指標設定の基本的な考え方
パントテン酸欠乏症を実験的に再現できないため、推定平均必要量を設定できないことから、摂取量の値を用いて、目安量を策定した。
3 健康の保持・増進
3-1 欠乏の回避
3-1-1 目安量の策定方法
・成人(目安量)
成人(18〜64 歳)の摂取量は、平成28年国民健康・栄養調査の結果の中央値によると4〜6mg/日である。日本人の若い成人女性を対象とした食事調査では、平均値は4.6 mg/日と報告されている。また、日本人の成人男女(32〜76 歳)を対象とした食事調査においても、平均値で、男性は7mg/日、女性は6mg/日であったと報告されている。この摂取量で欠乏が出たという報告はないため、性別及び年齢階級ごとの平成 28 年国民健康・栄養調査の中央値を目安量とした。
・高齢者(目安量)
高齢者の必要量の算定に当たり、特別の配慮が必要であるというデータはないため、65歳以上においても平成28年国民健康・栄養調査の中央値を目安量とした。
・乳児(目安量)
(略)
・小児(目安量)
(略)
・妊婦(目安量)
(略)
・授乳婦(目安量)
(略)
3-2 過剰摂取の回避
3-2-1 摂取源となる食品
通常の食品で可食部100 g当たりのパントテン酸含量が5mgを超える食品は、レバーを除き存在しない。通常の食品を摂取している者で、過剰摂取による健康障害が発現したという報告は見当たらない。
3-2-2 耐容上限量の策定
ヒトにパントテン酸のみを過剰に与えた報告は見当たらない。注意欠陥障害児に、パントテン酸カルシウムと同時に、ニコチンアミド、アスコルビン酸、ピリドキシンを大量に3か月間にわたり与えた実験では、一部の者が、吐き気、食欲不振、腹部の痛みを訴えて、実験を途中で止めたと記載されている 。しかしながら、耐容上限量を設定できるだけの十分な報告がないため、耐容上限量は策定しなかった。
3-3 生活習慣病の発症予防
パントテン酸摂取と生活習慣病の発症予防の直接的な関連を示す報告はないため、目標量は設定しなかった。
4 生活習慣病の重症化予防
パントテン酸摂取と生活習慣病の発症予防の直接的な関連を示す報告はないため、生活習慣病の重症化予防を目的とした量は設定しなかった。
パントテン酸の食事摂取基準及び私の摂取量と摂取源としている主な食品
パントテン酸の食事摂取基準(mg/日)

パントテン酸(ビタミンB5)の摂取量と主要な摂取源
私は、生命と健康長寿に必要な栄養素や機能性成分を出来るだけ多く含み、かつ、命と健康に悪い成分が出来るだけ少ない多様な食品をバランス良く食べるよう心がけています。
そして、そうした食品の中の魚類、鶏胸肉、鶏卵、納豆、ブロッコリー、きのこ類からだけで、目安量の6mg/日を2mg/日上まわる8mg/日のパントテン酸(ビタミンB5)を摂取しているので、詳細な摂取量を把握することは不要であり計算していません。
まとめ
目安量を満たすパントテン酸(ビタミンB5)の摂取
1-2 機能において『パントテン酸は、ギリシャ語で「どこにでもある酸」という意味で、広く食品に存在するため、ヒトでの欠乏症は稀である。』と書かれているとおり、多様な食品をバランス良く食べている限りはパントテン酸(ビタミンB5)は不足しにくいと考えています。
パントテン酸(ビタミンB5)のサプリメント
パントテン酸(ビタミンB5)は広く食品に存在するとはいえ、食品によってその含有量は大きく差があるため、含有量が少ない食品ばかりを偏食していたならば不足することはあり得るとは思いますのでサプリメントから摂取する場合もあるのかもしれません。
しかしながら、パントテン酸の含有量が少ない食品の多くはパントテン酸以外の栄養素の含有量も少ないのでパントテン酸のサプリメントだけを摂取しても問題の解決にならない場合が多いのではないかと考えています。
また、500mg(目安量の100倍)といった高容量のサプリメントも売られていますが、耐容上限量は策定されていないとはいえ、「パントテン酸カルシウムと同時に、ニコチンアミド、アスコルビン酸、ピリドキシンを大量に3か月間にわたり与えた実験では、一部の者が、吐き気、食欲不振、腹部の痛みを訴えて、実験を途中で止めたと」とも書かれているのでこうした高容量サプリメントの摂取は問題ないのかと疑問を感じてしまいます。
次回は、ビオチン(ビタミンB7)の摂取基準と摂取量等について書きます。
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今回は、パントテン酸の機能をイメージした画像を作成してもらいました。
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