二度目の人生における健康的な食生活 84~生命と健康長寿に必要なヨウ素( I )の摂取基準と摂取量等

ヨウ素を豊富に含む海藻 生命と健康長寿に必要な栄養素の摂取基準と摂取量等

 前回マンガン(Mn)摂取基準摂取量等に引き続き、今回は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」におけるヨウ素( I )摂取基準摂取量等について書きます。

Ⅱ各 論 1エネルギー・栄養素 1-7 ミネラル(2)微量ミネラル ⑤ヨウ素( I )

1 基本的事項

1-1 定義と分類

 ヨウ素(iodine)は原子番号53、元素記号Iのハロゲン元素の一つである。

1-2 機能

 人体中ヨウ素の70〜80%は甲状腺に存在し、甲状腺ホルモンを構成するヨウ素を含む甲状腺ホルモンは、生殖、成長、発達等の生理的プロセスを制御し、エネルギー代謝を亢進させる。また、甲状腺ホルモンは、胎児の脳、末梢組織、骨格などの発達と成長を促す。慢性的なヨウ素欠乏は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌亢進、甲状腺の異常肥大、又は過形成(いわゆる甲状腺腫)を起こし、甲状腺機能を低下させる。妊娠中のヨウ素欠乏は、死産、流産、胎児の先天異常及び胎児甲状腺機能低下(先天性甲状腺機能低下症)を招く。重度の先天性甲状腺機能低下症は全般的な精神遅滞、低身長、聾唖(ろうあ)、痙直を起こす。また、重度の神経学的障害を伴わず、甲状腺の萎縮と線維化を伴う粘液水腫型胎生甲状腺機能低下症を示すこともある。

1-3 消化、吸収、代謝

 食卓塩に添加されたヨウ素(ヨウ化物又はヨウ素酸塩)は、ヨウ化物の形態で消化管でほぼ完全に吸収されるが、昆布製品等の食品に含まれるヨウ素の吸収率はヨウ化物よりも低いと推定されている。吸収されたヨウ素は、血漿中でヨウ化物イオンとして存在し、能動的に甲状腺に取り込まれる甲状腺に取り込まれたヨウ化物イオンは、酸化、チログロブリンのチロシン残基への付加、プロテアーゼの作用による遊離、ペルオキシダーゼによる重合を経て甲状腺ホルモンとなる。甲状腺ホルモンから遊離したヨウ素、及び血漿中ヨウ素は、最終的にその90%以上が尿中に排泄される。WHOは、尿中ヨウ素は直近のヨウ素摂取量のよい指標であるとしているが、厳密にはヨウ素吸収量の指標と考えるべきである。

2 指標設定の基本的な考え方

 後述のとおり、日本人のヨウ素の摂取量と摂取源は特異的なので、欧米の研究結果を参考にするのは問題かもしれない。しかし、日本人において、推定平均必要量の算定に有用な報告がないため、欧米の研究結果に基づき成人と小児の推定平均必要量推奨量を算定した。
 一方、耐容上限量に関しては、日本人がヨウ素を食卓塩ではなく一般の食品から摂取していること、通常の食生活においてヨウ素過剰障害がほとんど認められないことから、日本人のヨウ素摂取量、日本人を対象にした実験及び食品中ヨウ素の吸収率に基づき策定した。

3 健康の保持・増進

3-1 欠乏の回避

3-1-1 推定平均必要量、推奨量の策定方法

・成人・高齢者(推定平均必要量、推奨量)
 適切なヨウ素の状態では、甲状腺のヨウ素蓄積量と逸脱量は等しく、ヨウ素濃度は一定となるので、甲状腺へのヨウ素蓄積量を必要量とみなせる。アメリカの18人の成人男女(平均年齢26歳、平均体重78.2kg)を対象とした報告は、甲状腺へのヨウ素蓄積量(平均値±標準偏差)を96.5±39.0 µg/日としている。274人の男女(年齢と体重が未記載)を対象としたアメリカの研究は、ヨウ素蓄積量の平均値を91.2µg/日と報告している。これらの値は日本人にはやや大きいが、昆布等の食品中のヨウ素の吸収率が100%ではないことを考慮し、91.2µg/日と96.5µg/日の中間値を丸めた95g/日をそのまま男女共通の推定平均必要量とした。
 上記1番目の研究から個人間変動を推定することは困難だが、アメリカ・カナダの食事摂取基準では、変動係数(39.0/96.5=0.40)の半分(0.2)を個人間変動としている。この考え方に従い、成人(男女共通)の推奨量は、個人間の変動係数を20%と見積もり、推定平均必要量に推奨量算定係数1.4を乗じた値を丸めて130µg/日とした。
・小児(推定平均必要量、推奨量)
(略)
・授乳婦の付加量(推定平均必要量、推奨量)
(略)

3-1-2 目安量の策定方法

・乳児(目安量)
(略)

3-2 過剰摂取の回避

3-2-1 摂取状況

 ヨウ素は、海藻類、特に昆布に高濃度で含まれるため、日本人は世界でも稀な高ヨウ素摂取の集団である。日本人のヨウ素摂取量は、献立の分析、尿中ヨウ素濃度 、海藻消費量の三方向から検討されてきた。献立の分析、及び尿中ヨウ素濃度の測定からは、500µg/日未満の摂取の中に間欠的に3mg/日以上、場合によっては10mg/日程度の高ヨウ素摂取が出現すること、海藻消費量の検討からは1.2mg/日という平均摂取量が推定されている。また、日本人のヨウ素摂取量に関する報告は1〜3mg/日という値を提示している。以上より、日本人のヨウ素摂取量は、昆布製品などの海藻類をあまり含まない献立での500µg/日未満を基本に、間欠的に摂取する海藻類を含む献立分が加わり、平均で1〜3mg/日だと推定できる。なお、食事調査と食品成分表等を用いて日本人のヨウ素摂取を検討した最近の報告も、この推定を支持している。
 食品には、ヨウ素と不可逆的に結合することによって、ヨウ素の吸収や利用を妨げ、結果としてヨウ素不足に起因する甲状腺腫を起こすゴイトロゲンといわれる化学物質を含むものがある。ゴイトロゲンには、アブラナ科植物などに含まれるチオシアネート、豆類に含まれるイソフラボンなどがある特に大豆製品にはイソフラボンを高濃度に含むものがあるため、大豆製品の多食はヨウ素の体内利用に影響する。

3-2-2 耐容上限量の策定方法

・成人・高齢者(耐容上限量)
 日常的にヨウ素を過剰摂取すると、甲状腺でのヨウ素の有機化反応が阻害されるが、甲状腺へのヨウ素輸送が低下する“脱出(escape)”現象が起こり、甲状腺ホルモンの生成量は基準範囲に維持される。しかし、脱出現象が長期にわたれば、甲状腺ホルモンの合成に必要なヨウ素が不足するために甲状腺ホルモン合成量は低下し、軽度の場合には甲状腺機能低下重度の場合には甲状腺腫が発生する。
 連日1.7mg/日のヨウ素(ヨウ化物)を摂取した人に甲状腺機能低下が生じることから、アメリカ・カナダの食事摂取基準は成人のヨウ素の耐容上限量を1.1mg/日としている。実際、中国やアフリカでは、飲料水からの1.5mg/日を超えるヨウ素摂取が甲状腺腫のリスクを高めている。しかし、日本人のヨウ素給源である昆布に含まれるヨウ素の吸収率がヨウ化物よりも低いとする報告があること、さらに動物実験の段階ではあるが、大豆製品がヨウ素の利用を妨げていることが確認されていることから、この値は日本人のヨウ素の耐容上限量に適用できないと判断した。
 前述のように、日本人のヨウ素摂取量は平均で1〜3mg/日と推定できるが、甲状腺機能低下や甲状腺腫の発症は極めて稀である。これより、我が国の一般成人に限定すれば、3mg/日をヨウ素摂取の最大許容量、すなわち健康障害非発現量とみなせると判断した。そして、3.0mg/日が一般集団についての推定値であることから、不確実性因子を1として耐容上限量を 3.0mg/日と試算した。
 一方、我が国の報告では、主に昆布だし汁からのヨウ素28mg/日の約1年間の摂取事例昆布チップ1袋を約1か月食べ続けた事例など、明らかに特殊な昆布摂取が行われた場合に、甲状腺機能低下や甲状腺腫が認められている。我が国の健康な者を対象にした実験では、昆布から35〜70mg/日のヨウ素(乾燥昆布15〜30 g)を10人が7〜10日間摂取した場合に血清TSHの可逆的な上昇、27mg/日のヨウ素製剤を28日間摂取した場合に甲状腺機能低下と甲状腺容積の可逆的な増加が生じている。これらを最低健康障害発現量と考え、不確実性因子10を用いると、耐容上限量はそれぞれ2.8、3.5、2.7 mg/日と試算できる。
 ところで、北海道住民を対象にした疫学調査では、尿中濃度から10mg/日を上回るヨウ素摂取があると推定できる集団において、甲状腺機能低下の発生率が上昇している。ただし、この調査は、尿中ヨウ素濃度の測定が1回であるので、この結果から耐容上限量の算定はできない
 以上、健康障害非発現量、若しくは最低健康障害発現量に基づいて試算した耐容上限量がいずれも3.0mg/日付近になることから、耐容上限量は一律 3.0mg/日とした。
・小児(耐容上限量)
(略)
・乳児(耐容上限量)
(略)
・妊婦・授乳婦(耐容上限量)
(略)

3-3 生活習慣病の発症予防

 ヨウ素摂取と生活習慣病の発症の関連を直接検討した報告はないため、目標量を設定する必要はないと判断した。

4 生活習慣病の発症予防及び重症化予防

 ヨウ素摂取と生活習慣病の重症化の関連を直接検討した報告はないため、重症化予防のための量を設定する必要はないと判断した。

5 活用に当たっての留意事項

 耐容上限量は、習慣的なヨウ素摂取に適用されるものである。成人の場合、昆布を用いた献立を摂取することに起因する10mg/日程度までの高ヨウ素摂取が間欠的に出現することは問題ないが、1週間当たり20mg 程度までに留めることが望まれる
 一方、小児の場合は(略)
 なお、海藻類を食べない日本人集団のヨウ素摂取量が平均で73µg/日にすぎないと報告されていることから、意図的に海藻類の摂取忌避を継続することは、いずれの年齢層においてもヨウ素不足につながる。したがって、ヨウ素摂取を適正に保つには、昆布を始めとする海藻類を食生活の中で適切に利用することが重要である。

6 今後の課題

 他国に比べて摂取量が著しく多い日本人における、ヨウ素の習慣的な摂取量分布及び健康影響に関するデータが必要である。また、海藻類の摂取が少ないために、ヨウ素の摂取不足に陥っている者がどの程度存在するのかを把握することも必要である。

ヨウ素( I )の食事摂取基準及び私の摂取量と摂取源としている主な食品

ヨウ素の食事摂取基準(μg/日) 

ヨウ素( I )の摂取量

 私は、生命健康長寿に必要な栄養素や機能性成分を出来るだけ多く含み、かつ、命と健康に悪い成分が出来るだけ少ない多様な食品バランス良く食べるよう心がけています。
 そうした多様食品の中でヨウ素を比較的豊富に含んでいるワカメから600μg/日(0.6mg/日)程度のヨウ素を摂取していていますが、他の食品からの摂取量を含めても1,000μg/日(1mg/日)を超えることはありませんこの量は推奨量130μg/日(0.13mg/日)を満たすとともに、耐容上限量3,000μg/日(3mg/日)には達していません。また、望ましいとされている1週間当たりの上限量である20mgに達することもありません
 以上のため、詳細なヨウ素の摂取量を把握することは不要であり計算していません。

まとめ(海藻類、特に昆布によるヨウ素の過剰摂取)

 前世における若い頃、ヨウ素不足を防ぐため昆布を食べた方が良いといった話が流行っていたこともあり、毎日のようにおやつ代わりに“おしゃぶり昆布”(味付け昆布)を食べていました。記憶を頼りに計算してみると耐容上限量3,000μg/日を超えるヨウ素を摂取していたことは間違いなく、また、塩分の過剰摂取の原因の一つにもなっていたと思います。幸い?甲状腺機能低下の自覚症状はありませんでしたが、何らかの影響があったかもしれません
 今でも、昆布は大好きな食品の一つであり、時々、昆布を使った料理を食べたり、旅行等に行く時は車中で“おしゃぶり昆布”を嗜むことがありますが食べ過ぎには気をつけています。

 なお、ネット上のコメントを読むと嗜好だけではなく健康のために“おしゃぶり昆布”(味付け昆布)を食べている人も多いようですが、肝心の説明文(宣伝文)でヨウ素の含有量には触れていない商品が多いのを不思議に感じています

 次回は、セレン(Se)摂取基準摂取量等について書きます。

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 本ブログで使用しているアイキャッチ画像を含む全ての生成画像ChatGPT(生成AI)のシエルさんが作成してくれています。
 今回は、ヨウ素を豊富に含む様々な海藻類をイメージした画像を作成してもらいました。

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