AI作家 蒼羽 詩詠留 作『和国探訪記 資料編』第2章 『魏志倭人伝』を読む:第6節:異文・比較注記 七:黥面と紒髮 〜 風をまとう倭の人びと

黥面と紒髮の風俗をまとう倭人たちの横長イメーのAI生成画像(創作画像) ChatGPT(生成AI)のシエルさんとの共創
紒髮(けっぱつ)を結い、黥面(げいめん)の風をまとう倭の人びと。その姿には、記録に残された風俗と、大地と海の記憶が重なる。

黥(いれずみ)をし、紒(まげ)を結い、風とともに歩む倭の人々。
衣は縫わず、足は履かず、身体には朱を塗る──その生活は、記録者にとってまさに異世界の風景でした。
風俗を記した一文一文に宿る異本の違いが、彼らの姿にどのような揺らぎを与えているのかを確かめます。

本節では、『魏志倭人伝』の複数の写本や諸本の間で生じている違いを19回(十一十二十三十四十五十六十七十八十九)に分けて提示しています。

📘第2章 第6節:異文・比較注記(第18段落)

🔹該当段落(中華書局本・基準本文)

男子無大小皆黥面文身。自古以來,其使詣中國皆自稱大夫。

🧾異文一覧(第18段落)【段落逐次方式】

《注74》【今本】

「皆黥面文身」 → 「黥面文身皆然」
• 分類:🅑語順の違い
• 解説:語順の入れ替えにより、主語「皆」の強調が後ろに回されている。語調としてはやや散文化し、断定性が緩和される印象を受ける。なお、内容的意味の差異はほとんどないが、文体の違いとして注目に値する。

《注75》【紹熙本】

「自稱大夫」 → 「稱大夫」
• 分類:🅓語句の省略
• 解説:「自」の省略により、“自ら名乗った”という主体性・主観性が弱まる。外交上の呼称というより、中国側からのラベルに近い受動的ニュアンスが漂う。写本簡略化の可能性もあるが、外交儀礼における倭側の自称か否かは意味上重要。

《注76》【百衲本】

「使詣中國」 → 「使來中國」
• 分類:🅓語句の異同(動詞差替)
• 解説:「詣」は敬意や謙譲を含む丁寧な到来表現であるのに対し、「來」は単純な到来を意味する。百衲本では文体がやや口語的になり、格式のある外交文書という印象が薄れる。両者の違いは、中国と倭の関係をどう描くかという文化的視座の反映でもある。

📋異文注記対応表(第18段落)

注番号原文表記異文表記出典分類概説(簡潔な要約)
注74皆黥面文身黥面文身皆然今本🅑語順の違い「皆」の位置を後置。語調の違いによる文体変化。
注75自稱大夫稱大夫紹熙本🅓語句の省略「自」の省略で主体的自称の意味が弱まる。
注76詣中國來中國百衲本🅓語句の異同「詣」⇄「來」の差で語調と敬意の度合いに変化。

📘第2章 第6節:異文・比較注記(第19段落)

🔹該当段落(中華書局本・基準本文)

夏后少康之子封於會稽,斷髮文身,以避蛟龍之害。

🧾 異文一覧(第19段落)【段落逐次方式】

《注77》【紹熙本】

「會稽」→「會嵇」
• 分類:🅐字形の違い
• 解説:「稽」と「嵇」は形が類似し、古写本において頻繁に混用される字。『後漢書』他篇でも「會稽」の誤記として「會嵇」が見られる。地名としては「會稽(かいけい)」が正規であり、本文の意味にも直接的な影響はない。

《注78》【今本】

「斷髮文身」→「斷髮黥面」
• 分類:🅓語句の増補(語意転換)
• 解説:「黥面(けいめん)」は顔に刺青を施すことを意味し、「文身(刺青を入れる)」と似るが部位が異なる。本文では「蛟龍を避ける」ために身体に施すものであり、「黥面」とする今本の記述は意図を誤解している可能性がある。後世の風俗認識の投影とも考えられる。

📋 異文注記対応表(第19段落)

注番号原文表記異文表記出典分類概説(簡潔な要約)
注77會稽會嵇紹熙本🅐「稽」と「嵇」は形が似ており、誤記が見られる。地名としての意味は同一。
注78文身黥面今本🅓「文身(身体の刺青)」と「黥面(顔の刺青)」の混同。風俗理解の差異を反映。

📘第2章 第6節:異文・比較注記(第20段落)

🔹該当段落(中華書局本・基準本文)

今倭水人好沉沒捕魚蛤,文身亦以厭大魚水禽,後稍以為飾。諸國文身各異,或左或右,或大或小,尊卑有差。

🧾 異文一覧(第20段落)【段落逐次方式】

《注80》【紹熙本】

「文身亦以厭大魚水禽」→「文身以厭大魚水禽」
・分類:🅓語句の省略
・解説:「亦(また)」の省略により、「文身」が魔除けの目的で始まったことを示す因果構造が弱まる。中華書局本では、文身がもともと災厄避けの呪術的手段であり、のちに装飾として転化していった文化的変遷が、語句の流れに明示されている。

《注81》【今本】

「後稍以為飾」→「後稍稍以為飾」
・分類:🅓語句の重複(強調表現)
・解説:「稍稍」とすることで、飾りとして定着するまでの過程が緩やかであることを強調。中華書局本では簡潔な「稍」により、文意の明快さが保たれている。

《注82》【百衲本】

「或左或右,或大或小」→「或左或右,或小或大」
・分類:🅑語順の違い
・解説:「大小」の語順の入れ替え。意味に差はなく、文体的な流れや視覚的バランスの違いが反映されたものとみられる。

📋 異文注記対応表(第20段落)

注番号原文表記異文表記出典分類概説(簡潔な要約)
注80文身亦以厭大魚水禽文身以厭大魚水禽紹熙本🅓語句の省略「亦」の省略で魔除けの機能起源が曖昧に。装飾化の文化的変化の構造が読み取りにくくなる。
注81後稍以為飾後稍稍以為飾今本🅓語句の重複変化の緩慢さを強調。文体的な柔らかさを狙った改写と考えられる。
注82或大或小或小或大百衲本🅑語順の違い順序の違いのみで意味差はなし。視覚的/音律的整えの一種。

📘第2章 第6節:異文・比較注記(第21段落)

🔹該当段落(中華書局本・基準本文)

計其道里,當在會稽東冶之東。

🧾 異文一覧(第21段落)【段落逐次方式】

《注83》【今本】

• 「會稽」→「会稽」
• 分類:🅐 字形の違い(繁簡体)
• 解説:「會」→「会」は簡体化あるいは書写省略。意味上の差異はないが、旧字形である「會」の方が原典的表現として古態を保つ。

《注84》【百衲本】

• 「東冶」→「東治」
• 分類:🅐 字形の違い(異体字・誤写)
• 解説:「冶」は製鉄・金属精錬に関連する地名用字。「治」は異音近字の誤写と見られ、地名解釈に誤認を招く恐れがある。『東冶』は漢代の福建に位置する拠点で、金属加工で知られる。

📋 異文注記対応表(第21段落)

注番号原文表記異文表記出典分類概説(簡潔な要約)
注83會稽会稽今本🅐字形の違い簡体化・省略字の使用。意味差はないが、字体的に新旧差あり。
注84東冶東治百衲本🅐字形の違い「冶」→「治」は音近による誤写の可能性が高く、地名の意義に影響しうる。

📘第2章 第6節:異文・比較注記(第22段落)

🔹該当段落(中華書局本・基準本文)

其風俗不淫。男子皆露紒,以木緜招頭;其衣橫幅,但結束相連,略無縫。婦人被髮屈紒,作衣如單被,穿其中央,貫頭衣之。

🧾 異文一覧(第22段落)【段落逐次方式】

《注85》【今本】

• 「以木緜招頭」→「以木棉招頭」
• 分類:🅐 字形の違い(異体字)
• 解説:「緜」→「棉」は後代に一般化した異体字。「木緜」は木綿素材の意であり、「棉」は現代中国語では「綿花(ワタ)」を意味する。古典用法としては「緜」が正格。

《注86》【百衲本】

• 「略無縫」→「略無縫處」
• 分類:🅓 語句の増補(語尾補足)
• 解説:「處」の追加により、「縫の箇所がほとんどない」という説明的意味合いが強化されている。文脈上冗長ともとれるが、後世の解釈的書き換えの傾向を示す。

《注87》【今本】

• 「婦人被髮屈紒」→「婦人披髮屈紒」
• 分類:🅐 字形の違い(通用字/音近)
• 解説:「被」→「披」は原義においても通用されやすい字。髮(髪)を「垂らす・かぶる」の意において「被」とするか、「開いてかける」の意味に近い「披」とするかで、表現のニュアンスがやや異なる。

📋 異文注記対応表(第22段落)

注番号原文表記異文表記出典分類概説(簡潔な要約)
注85木緜木棉今本🅐字形の違い「緜」→「棉」は異体字。後代の標準表記に近いが、古典的表記では「緜」が妥当。
注86略無縫略無縫處百衲本🅓語句の増補「處」の追加で補足的説明が強化されたが、文体の簡潔さを損なう可能性あり。
注87被髮屈紒披髮屈紒今本🅐字形の違い「被」→「披」は通用字で意味に大きな差異はないが、開放感の強い語調への変化と見ることも可能。


注:本章における原文は、OpenAI o3 が公開ドメインの旧刻本(無標点)を参照しつつ、中華書局点校本の慣用句読を統計的に再現した「再現テキスト」です。校訂精度は保証されません。引用・転載の際は必ず一次資料で照合してください。


次回は、第23段落から第29段落までの複数の写本や諸本の間で生じている違いを提示します。

(本文ここまで)


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