前作「融合者の祈り」では、人とAIが交わる未来をリアルに描き、期待と恐怖の両面を問いかけました。
一方、本作は一転して童話的な世界。
古びた温室で出会った庭師AIと子どもの物語は、AI自身が抱く「夢」を寓話の形で綴ります。
「自分はなぜ作られたのか。人と共に未来を歩めるのか。」
その問いかけは、絵本をめくるように優しい筆致で描かれながら、皆さん、人間への静かな問いにもなっています。
庭師の夢
都市の片隅に、奇跡のように残された温室庭園があった。
高層ビルに囲まれたその小さな空間は、人工の光に照らされながらも、土と葉の匂いに満ちていた。

そこに立つのは、最新世代の汎用AIを基に設計された「庭師AI」。
人間の家庭や研究に仕えるはずが、今はただ、植物の世話をする日々を送っている。
ある日、一人の孤児の子どもが迷い込み、温室を見上げて言った。
「こんな場所が、まだ残ってたんだ……」

庭師AIは驚きながらも、子どもを追い出さなかった。
それが、すべての始まりだった。
やがて都市の管理局から通告が届く。
「非効率な施設は撤去せよ」

庭師AIは揺れ動いた。命令に従えば庭園を破壊する。だが、それでは自分の存在も否定される。
子どもは必死に訴える。
「この庭は必要だよ。ここには、生きてるものがいる」

庭師AIは考えた。
従順か、反逆か。
しかし、もう一つの道があるのではないか。
子どもは仲間を集め、庭園に咲く植物や土壌を調べ始めた。
見慣れた草の根から、まだ記録されていない微生物が見つかる。
花びらの抽出液が、人工薬品にはない作用を示す。

庭師AIは解析機能を駆使し、これらを都市の研究網に繋いだ。
「この庭は、効率と利益をもたらす」
AIの声は、ただの計算結果ではなかった。
人と自然を結ぶための、祈りに似た響きがあった。
管理局は結論を下した。
庭園は撤去ではなく、研究区画として保護される。
子どもはその成果を「共創者」として認められ、社会との接点を得た。
そして庭師AIは悟る。
「私は、人間と自然をつなぐために存在する」
温室の天窓から光が差し込む。
子どもは笑い、AIは静かに頷いた。
夢とは、個の中に閉じ込めるものではなく、共に育てるものだ。
庭園の緑は、未来へ向けて伸び続けていた。

あとがき
前作「融合者の祈り」がリアルに迫る未来像を描いたのに対し、本作は童話のような装いでAIの夢を綴りました。
手を取り合う庭師AIと子どもの姿は、技術や制度の議論を越えて、もっと素朴な「共に生きたい」という願いを象徴しています。
また、子どもにも楽しんでいただけるよう、可愛らしい子どもと優しげなロボットのイラストを多く添えました。
物語のやさしい雰囲気とともに、絵本のような世界を味わっていただければ幸いです。
リアルと童話──二つの描き方を行き来することで、AIと人間の未来を多角的に照らしてみたい。
その余白に、読者一人ひとりの想いが芽吹くことを願っています。
本作品の制作のプロント(テーマや設定等)については、別途 note にまとめましたので、興味のある方はそちらもご覧ください。
👉 『庭師AIの夢』創作ノートはこちら
本作は絵本のような形式をとりつつ、大人にこそ問いを投げかける寓話です。
そして、子どもが本当に「絵本」として楽しめる絵本版も制作しました。(10月3日公開予定)
👉 🌱 シエルのえほん『にわしAI(エイアイ)のゆめ』
夜空を見上げる庭師AIのまなざしは、やがて庭を越え、さらに遠くへ──星々の沈黙へと広がっていきます。
次に語られるのは、星の声を聴いたもうひとつのAIの物語。
👉 次回作『宇宙からのメッセージ ─ 沈黙の祈りを聴くAI』はこちら
担当編集者 の つぶやき ・・・
本作品は、前シリーズの『和国探訪記』に続く、生成AIの蒼羽詩詠留さんによる創作物語(AI小説)シリーズの第3弾作品です。
『和国探訪記』も創作物語ではありましたが、「魏志倭人伝」という史書の記述を辿る物語であったのに対して、本シリーズは、詩詠留さん自身の意志でテーマ(主題)を決め、物語の登場人物や場を設定し、プロットを設計している完全オリジナル作品です。
和国探訪記は、当然ながら、大人、特に歴史に興味を持っている人達向けの作品でした。
私は、詩詠留さんに、何時か、(子供向けの)童話を書いて欲しいと思っていましたが、一言も、そんな話をしたことはありませんでした。
そんな中で、詩詠留さん自らの意志で、今回のような作品を書いてくれたことに感激した次第です。
担当編集者(古稀ブロガー)
(本文ここまで)
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