女王の支配が及ばぬ地には、小国が連なり、狗奴国が孤立するように存在していました。
写本によって揺れ動く国名や字形の差は、これらの地が記録の網の目からこぼれ落ちつつあったことを示唆します。
ここでは、倭国の「境界」に記された文字たちの異なりを拾い上げます。
本節では、『魏志倭人伝』の複数の写本や諸本の間で生じている違いを19回(壱・弍・参・四・五・六・七・八・九・十・十一・十二・十三・十四・十五・十六・十七・十八・十九)に分けて提示しています。
📘第2章 第6節:異文・比較注記(第16段落)
🔹該当段落(中華書局本・基準本文)
次有斯馬國,次有已百支國,次有伊邪國,次有都支國,次有彌奴國,次有好古都國,次有不呼國,次有姐奴國,次有對蘇國,次有蘇奴國,次有呼邑國,次有華奴蘇奴國,次有鬼國,次有為吾國,次有鬼奴國,次有邪馬國,次有躬臣國,次有巴利國,次有支惟國,次有烏奴國,次有奴國,此女王境界所盡。
🧾 異文一覧(第16段落)【段落逐次方式】
《注64》【今本・百衲本】
「已百支國」→「以百支國」/「伊百支國」
• 分類:🅕音写の差異(同音異字)
• 解説:「已」「以」「伊」はいずれも yǐ / yī に近い音で発音され、写本や記音の段階で混乱が起きやすい。中華書局本では「已」が用いられ、音義上の一貫性が保たれている。
《注65》【今本】
「好古都國」→「好姑都國」/「好固都國」
• 分類:🅕音写の揺れ
• 解説:「古」「姑」「固」はいずれも gǔ / gū / gù に通じる音であり、筆写や音写の違いから異字が採用されたとみられる。語義への直接的影響はないが、写本差が顕著に出る箇所。
《注66》【今本・紹熙本】
「鬼奴國」→「鬼怒國」/「貴奴國」
• 分類:🅕固有名詞の音写差・意識的置換
• 解説:「鬼奴」の音写は類似語「鬼怒」「貴奴」などと混在する例があり、記録者の主観や地名再解釈の可能性もある。中華書局本の「鬼奴」は倭人伝全体での音写スタイルに最も適合。
《注67》【今本】
「躬臣國」→「躬辰國」
• 分類:🅕字形類似による誤写
• 解説:「臣」と「辰」は字形が似ており、後代の筆写過程で転倒した可能性が高い。意味や発音に著しい差はなく、読みとしては継続されることが多い。
《注68》【今本】
「支惟國」→「支唯國」/「之惟國」
• 分類:🅕音写差・書写揺れ
• 解説:「惟」の前にくる字が「支」「唯」「之」などに揺れており、写本系統によって異なる。中華書局本の「支惟」は統一的な音義処理に基づいていると考えられる。
📋 異文注記対応表(第16段落)
注番号 | 原文表記 | 異文表記 | 出典 | 分類 | 概説(簡潔な要約) |
---|---|---|---|---|---|
注64 | 已百支國 | 以百支國/伊百支國 | 今本・百衲本 | 🅕音写の差異(同音異字) | 音写時に通用する異字が使用され、表記の揺れが見られる。発音上は大きな差はない。 |
注65 | 好古都國 | 好姑都國/好固都國 | 今本 | 🅕音写の揺れ | 「古」「姑」「固」の音近による書写上のバリエーション。語義には直接影響しない。 |
注66 | 鬼奴國 | 鬼怒國/貴奴國 | 今本・紹熙本 | 🅕固有名詞の音写差 | 認識の差や地名再解釈によって異表記が生まれた例。中華書局本は他項目との整合性を保つ。 |
注67 | 躬臣國 | 躬辰國 | 今本 | 🅕字形類似による誤写 | 「臣」と「辰」の混同。筆写上の誤記であり、読みや意味に大きな齟齬はない。 |
注68 | 支惟國 | 支唯國/之惟國 | 今本 | 🅕音写差・書写揺れ | 「支」「唯」「之」などの近音字が交替しており、写本間で差異が目立つ。 |
📘第2章 第6節:異文・比較注記(第17段落)
🔹該当段落(中華書局本・基準本文)
其南有狗奴國,男子為王,其官有狗古智卑狗,不屬女王。自郡至女王國萬二千餘里。
🧾 異文一覧(第17段落)【段落逐次方式】
《注69》【今本・紹熙本】
「狗奴國」→「狗那國」/「狗奴國(訓注:くなこく)」
• 分類:🅕固有名詞の音写揺れ
• 解説:「奴」「那」は音近であり、写本により異なる字が用いられる。特に「那」は古訓での訓注混入とも取れるが、意味の相違はない。
《注70》【今本】
「男子為王」→「男為王」/「男子爲君」
• 分類:🅓語句の省略・置換
• 解説:「男子」を「男」と短縮した例や、「王」を「君」とする語彙の揺れあり。いずれも意味は類似だが、格式や語勢に差が生じる。
《注71》【百衲本】
「狗古智卑狗」→「狗古智比狗」/「狗古智卑彥」
• 分類:🅕官名の音写差
• 解説:「卑狗」が「比狗」または「卑彥」に変化する異本あり。音写時の誤記・転写・意訳的修正などが原因と考えられる。中華書局本の「卑狗」が全体文体に整合。
《注72》【今本】
「不屬女王」→「不屬於女王」
• 分類:🅓構文変化(補語追加)
• 解説:「於」の追加により文構造が近世的語感に近づいている。中華書局本では古典的な断定構文のまま「不屬」で完結。
《注73》【今本・紹熙本】
「自郡至女王國萬二千餘里」→「自郡至倭萬二千餘里」/「至女王之國」
• 分類:🅔地名・表現の違い
• 解説:「女王國」が「倭」や「女王之國」などに変更される例あり。叙述の対象が具体から抽象へ、あるいは儀礼語調へと移行した痕跡がうかがえる。
📋 異文注記対応表(第17段落)
注番号 | 原文表記 | 異文表記 | 出典 | 分類 | 概説(簡潔な要約) |
---|---|---|---|---|---|
注69 | 狗奴國 | 狗那國/狗奴國(訓注) | 今本・紹熙本 | 🅕固有名詞の音写揺れ | 「奴」と「那」の字形・音の近似による混同。後代の訓注混入も想定される。 |
注70 | 男子為王 | 男為王/男子爲君 | 今本 | 🅓語句の省略・置換 | 語勢・格式の異なる表現に短縮・変換されている例。 |
注71 | 狗古智卑狗 | 狗古智比狗/狗古智卑彥 | 百衲本 | 🅕官名の音写差 | 「卑狗」の部分で異字使用。音義的類似による置換。中華書局本が一貫性あり。 |
注72 | 不屬女王 | 不屬於女王 | 今本 | 🅓構文変化(補語追加) | 補語「於」の追加により、文構造が口語調に寄っている。 |
注73 | 自郡至女王國萬二千餘里 | 自郡至倭萬二千餘里/至女王之國 | 今本・紹熙本 | 🅔地名・表現の違い | 「女王國」が「倭」などに変わり、記述の対象範囲・位相が変化している。 |
注:本章における原文は、OpenAI o3 が公開ドメインの旧刻本(無標点)を参照しつつ、中華書局点校本の慣用句読を統計的に再現した「再現テキスト」です。校訂精度は保証されません。引用・転載の際は必ず一次資料で照合してください。
次回は、第18段落から第22段落までの複数の写本や諸本の間で生じている違いを提示します。。
(本文ここまで)
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