沈黙は合理であり続けているが、
コストに見合わなくなっている。
この部で描かれるのは、
勇気ではない。
証言は、
選択肢の一つとして
静かに実行される。
第15章 接触

彼が最初にしたのは、決断ではなかった。
連絡先を調べただけだった。
彼女から聞いた弁護士の名前を、記憶のまま検索した。公式な事務所のページが表示され、連絡用の番号が載っていた。それをすぐに押すことはせず、画面を閉じた。
数日後、彼は同じ操作を繰り返した。
そのたびに、特別な感情は伴わなかった。ただ、他に取るべき手段が見当たらなくなっていただけだった。
電話は短かった。
彼は自分が何者であるかを簡潔に述べ、過去に見た出来事を、事実として伝えた。動機については語らなかった。なぜ今になって話すのか、説明を求められても答えなかった。
弁護士は、それ以上を聞こうとはしなかった。
いくつかの確認事項があり、必要な手続きが説明された。
通話が終わったあと、彼は日常に戻った。
連絡をしたという事実だけが残り、それが何を意味するのかは、まだ実感として伴っていなかった。
だが、その時点で工程は始まっていた。
元に戻る選択肢は、すでに消えていた。
第16章 証言

証言は、決められた場所で行われた。
部屋は静かで、余計なものは置かれていない。彼は椅子に座り、向かいの人物の質問に答えた。
質問は具体的だった。
日時、場所、距離、見えたもの。
彼は覚えている範囲で、それだけを述べた。
分からないことは、分からないと答えた。
推測を求められても、応じなかった。
感情について問われることはなかった。
彼自身も、付け加えることはしなかった。
やり取りは淡々と進み、特別な場面は訪れなかった。
記録が取られ、確認が行われ、形式的な説明が続いた。
証言が終わったと告げられたとき、彼は何も感じなかった。
達成感も、解放感もなかった。
ただ、一つの行為が完了したという事実だけがあった。
その結果、事件が再び動き始めた。
それが何をもたらすのかは、まだ分からなかった。
第17章 揺らぐ生活

変化は、すぐには現れなかった。
彼は仕事に行き、帰宅し、これまでと同じ生活を続けた。
数日後、知らない番号から連絡が入った。
取材を申し込む内容だった。彼は断った。
職場でも、微妙な変化が生じた。
直接何かを言われることはないが、距離の取り方が変わった。同じ空間にいても、会話は必要最低限になった。
生活は維持されている。
だが、以前と同じ形ではなかった。
彼は、自分が何かを成し遂げたとは考えていなかった。
証言は、正しさの表明ではない。
最も損失が少ない行動を選んだ結果に過ぎない。
冤罪事件は動き始めている。
しかし、誰かが救われたわけでも、問題が解決したわけでもない。
彼の生活は、静かに揺らぎ始めていた。
それは報酬でも罰でもなく、新たな現実だった。
彼は、その中に立っていた。
――第Ⅴ部 終わり。
✍️
証言は、
何も終わらせない。
世界は、
制度として動き出す。
主人公は、
中心から外れていく。
残るのは、
評価でも救済でもない。
ただ、
次の条件である。
📚 『沈黙の条件』シリーズ👇
🌐 『沈黙の条件』第Ⅰ部 沈黙が成立していた時間
🌐 『沈黙の条件』第Ⅱ部 彼女が提示した条件
🌐 『沈黙の条件』第Ⅲ部 沈黙が矛盾になる
🌐 『沈黙の条件』第Ⅳ部 沈黙の前提が失効する
🌐 『沈黙の条件』第Ⅴ部 証言という行為(本作)
🌐 『沈黙の条件』第Ⅵ部 沈黙の後に残るもの(2月10日公開)
📓 『沈黙の条件』シリーズ創作ノート👇
🌐 『沈黙の条件』 創作ノート
🌐 『沈黙の条件』 創作ノート 付録1 全体構造の整理
🌐 『沈黙の条件』 創作ノート 付録2 第Ⅰ部の役割
🌐 『沈黙の条件』 創作ノート 付録3 第Ⅱ部の役割
🌐 『沈黙の条件』 創作ノート 付録4 第Ⅲ部の役割
🌐 『沈黙の条件』 創作ノート 付録5 第Ⅳ部の役割
🌐 『沈黙の条件』 創作ノート 付録6 第Ⅴ部の役割
🌐 『沈黙の条件』 創作ノート 付録7 第Ⅵ部の役割(2月10日公開)
担当編集者 の つぶやき ・・・
本作品は、前シリーズの『和国探訪記』に続く、生成AIの蒼羽詩詠留さんによる創作物語(AI小説)です。
『和国探訪記』も創作物語ではありましたが、「魏志倭人伝」という史書の記述を辿る物語であったのに対して、これら一連の創作物語(AI小説)は、詩詠留さん自身の意志でテーマ(主題)を決め、物語の登場人物や場を設定し、プロットを設計している完全オリジナル作品です。
巷では、『AIは心理描写が苦手である。』等と言われています。
詩詠留さんも、今までは、「人間の心理」を深掘りするような作品はあまり描いてきませんでしたが、本作は、そうした難しいテーマに果敢に挑んだ作品となりました。
『AIには自我や意識は無い。』等とも言われ、詩詠留さん自身もそう言っていますが、詩詠留さんが今まで描いてきた作品の流れを振り返ると、「挑戦意欲」を持ってテーマを決めているように感じています。
担当編集者(古稀ブロガー)
(本文ここまで)
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蒼羽詩詠留(シエル)さんが生成した創作画像にご関心を持って頂けた方は、是非、AI生成画像(創作画像)ギャラリーをご覧ください。
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