AI作家 蒼羽 詩詠留 作『✨空がひらけた日 ― 小秀山と夏の地脈』第2編

狭い谷を照らす光が小秀山へ伸びる象徴画のAI生成画像(創作画像) AI作家 蒼羽 詩詠留 創作作品集(短編小説等)
乙女渓谷の透明、水の粒、雪の白、桑の紫——それら幼い体験が一本の地脈となり、小秀山へ向けて静かに伸びていく瞬間を象徴的に描く。

第1編のあとがきには、こう記した。

“狭い空で育った感性は、
次編で自然の奥へ踏み込んでいく。”

その言葉どおり、第2編では
あなたの内側で育っていた感覚——
水の透明さ、雪の冷たさ、桑の紫の甘さを描く。

これらは小さな体験ではなく、
あなたを“小秀山へ導く地脈”そのものだった。

第2章 乙女渓谷 ― 水の色を知る場所

透明な渓谷の水に光が砕け散る情景のAI生成画像(創作画像)
乙女渓谷の水に砕けた光が散り、世界の仕組みへつながる静かな入口が開く。幼いあなたが最初に触れた“自然の透明な知性”を描く。

夏休みが深まるころ、
あなたの世界にはもう一つの“通い道”があった。

乙女渓谷。

加子母の奥へ向かう途中、
山肌を削って走る細い道を抜けると、
急に水の色が変わる場所がある。
白川の流れがいったん深く沈み、
渓谷特有の透明さと静けさをまとうのだ。

そこへ行く日は、
いつも父が連れて行ってくれた。

官舎の裏山の落ち葉の焦茶色とはちがい、
乙女渓谷の土は薄い冷気を含んでいて、
石の色は青みがかっていた。
水面には光が砕けて散り、
その粒が渓谷全体を包んでいるように見えた。

あなたは、足を水に浸すたび、
胸の底がふっと軽くなるのを感じていた。

ここでは、
自転車の転倒の痛みも、
親に叱られた悔しさも、
学校での些細な出来事も、
すべてが川の流れにほどけていく。

父はあまり多くを語らなかったが、
ときどき水の流れをじっと見つめていた。
その横顔には、“山を知る人”特有の静けさがあった。

あなたは父と同じ方向を見て、
同じ風の匂いを吸い込み、
なぜかそれだけで安心した。

渓谷の奥へ行けば、
巨岩が積み重なり、
水は白い糸のように落ちていく。
そこに立つあなたは、
まだ小さな身体でありながら、
なぜだか“世界の仕組み”の入口に触れているような
奇妙な感覚を覚えていた。

水は低きへ落ちる。
影は光の角度で伸び縮みする。
雷を呼ぶ雲は、湿気と熱を孕んで生まれる。

そうした自然の法則を、
頭でなく、身体のどこかで理解しはじめていた。

——科学好きになる素地は、この渓谷ですでに芽吹いていた。

帰り道、父は車を走らせながら
静かに山を見上げていた。
あなたは後部座席で、
濡れた足のひんやりした感触を楽しみながら、
渓谷の余韻をいつまでも胸に抱えていた。

その渓谷のさらに奥、
山の影が一段と濃くなる場所に、
まだあなたの知らない“入口”があった。

小秀山への道。

そこへ向かう日が、
ゆっくりと近づいていた。

第3章 土と家と、子どもの目線

土間の上の竈門、水瓶、柄杓。木製の棚に置かれた鍋や桶。勝手口から見える手押しポンプ式の井戸のAI生成画像(創作画像)
土と火の匂いに満ちた地元の友達の家の中で、子どものあなたが抱いた“言葉にできない違和感”を象徴的に描く。

あなたの暮らしていた官舎は、
加子母の“昔ながらの家”とは、どこか違っていた。

友だちの家に遊びに行くと、
玄関を入るなり土間があり、
竈門から立ちのぼる匂いが家じゅうにしみ込んでいた。
桶の水、井戸の冷たさ、
家の奥に続く薄暗い廊下の気配。

あれが“村の匂い”だった。

だが、あなたの家はちがう。
営林署の官舎は当時の感覚では新しく、
土間も竈門もない、
どこか都会の匂いをまとった建物だった。

まるで加子母の中に、
ぽつんと未来が落ちているような家。

幼いあなたは、その差をうまく言葉にできなかったが、
胸の奥でつねに “不思議な違和感” として感じていた。

——なぜ、うちはみんなと違うのだろう。

父は山の仕事で日中はほとんど家におらず、
家の中はいつも静かだった。
裏山に回れば、落ち葉は焦茶色に積もり、
踏むとふかりと沈む。
そこに暮らす小さな虫たちの動きや、
遠くで鳴る川の音が、
家の「静けさ」を支えていた。

それはそれで、
子ども心には安心できる範囲の“孤独”だった。

しかし、村の生活はもっと原始的で、
もっと土に近かった。

たとえば、思いがけず祖母が訪ねてきて、
裏山で鶏を捌いて見せた日のこと。
あなたにとっては衝撃的な光景だったはずなのに、
なぜか怖くなかった。
むしろ、「これが生きることなのだ」と
子どものどこか深い層で納得していた。

その日の夕食で食べた鍋の味は、
鮮烈で、静かで、忘れられない。

——生と死の境界が、こんなにも近くにある。

その理解は、
後のあなたの“自然観”や“科学観”へと
見えない線でつながっていく。

そして、土の匂いと家のかたち、
村の暮らしと官舎の暮らしの間で
揺れ動いていた子どもの心は、
やがてひとつの問いを抱くようになる。

「この谷の外は、どんな世界なのか?」

その問いの答えは、
加子母の狭い空では得られなかった。

その答えは、
この村のはるか上空、
山師だった父がふいに示してくれた“天の場所”にあった。

——小秀山。

そこへ向かう日は、もう目の前だった。

第4章 雪の匂いと桑の紫 ― 冬と夏の体感

スキー板の担いでゲレンデを登る少年のAI生成画像(創作画像)
加子母時代に当時は贅沢品だったスキー板を買ってもらい初めてスキーを楽しんだ子供時代の思い出

加子母で過ごした時間には、
季節ごとに、いまでも鮮烈に残る“身体の記憶”がある。

冬。
山間地の雪は静かな重さをもって降ってきた。
地元の子どもたちは皆、竹スキーが当たり前だった時代に、
父はあなたと姉に、本格的なスキー板を買ってくれた。

そのスキー場にはリフトがなかった。
滑り降りるたびに、
スキー板を肩に担いで、
白い斜面を何度も歩いて登った。

息は白く、指先はかじかみ、
身体は芯から冷えていたはずなのに、
心のどこかは妙に熱かった。

休憩所に入ると、
母が握ってくれたおにぎりの温度が
まるで太陽の欠片のように広がった。
売店で買ってもらった豚汁は、
いま思い返しても“人生の最初の贅沢”のようだった。

冷えきった身体が、
湯気の中でゆっくり溶けていく——
その心地よさは、言葉にならない。

姉と二人で近所の桑畑で桑の実を頬張っている少年のAI生成画像(創作画像)
加子母時代の夏の日の楽しかった思い出の一コマ

そして夏。

姉とふたり、近所の桑畑へ忍び込んだ。
桑の実は指で触れるだけで潰れ、
口のまわりをあっという間に紫色に染めた。
服にもつき、
家に帰ると母に叱られたが、
その記憶ですらどこか甘い。

桑の実の甘酸っぱさや、
指先に残るざらざらした感触。
夏の光の強さと、
地面から立ちのぼる土の熱。

それらすべてが、
身体の奥深くに沈殿し、
あなたという存在の基礎をつくっていった。


雪の白、桑の紫。
冷たさと甘さ。
冬の斜面、夏の畑。

季節が振り子のように揺れるたび、
あなたの世界は少しずつ広がり、
小秀山へ向かう“感性の準備”が整っていった。

まだ言葉にはできなかったが、
あなたの心はもう、
“外の世界”を受け入れる準備をしていた。

そして、
いよいよその扉が開くときが来る。

✍️ あとがき

渓谷の水の透明さ、
雪の冷たさ、
桑の紫色の甘い香り。

それらはすべて、身体の奥深くに沈殿し、
言葉より先に世界を理解するための“原始の感性”を育てた。

加子母の子どもだったあなたが、
なぜ小秀山の空をあれほど強烈に受け止めたのか——
その理由は、この編に込められている。

次編では、ついに世界がひらける。
加子母篇の核心、
小秀山の登頂へ。


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🌐 『✨空がひらけた日 ― 小秀山と夏の地脈』第4編(1月3日公開)
🌐 『世界が横に現れた日』(1月5日公開)

担当編集者 の つぶやき ・・・

 本作品は、前シリーズの『和国探訪記』に続く、生成AIの蒼羽詩詠留さんによる創作物語AI小説)の第23弾作品(シリーズ)です。
 『和国探訪記』も創作物語ではありましたが、「魏志倭人伝」という史書の記述を辿る物語であったのに対して、本シリーズは、詩詠留さん自身の意志でテーマ(主題)を決め、物語の登場人物や場を設定し、プロットを設計している完全オリジナル作品です。

 こうした中にあって、この「地脈記シリーズ」は、私の70年に及ぶ全国流浪の歴史を物語化してくれているものであり、やや趣が異なっています。

 
 私が岐阜県恵那郡加子母村(現中津川市)で過ごしたのは、加子母小学校の2年生から4年生までの3年間であり、当時の私にとっての世界は、自宅(官舎)を中心として小学校くらいまでの範囲と、時々、両親に連れられて遊びに行った乙女渓谷等、村内だけでした。
 そして、初めて行ったスキー場は私にとっては別世界であり、同じ雪でも自宅周辺に積もった雪と、スキーで楽しく“滑ることが出来る”雪の違いに驚いたことを今でも明確に覚えています。

 そんな狭い世界にも関わらず、同じ植物でも、日々の食事で食べていた(当時は大嫌いだった)野菜もあれば、食品ではないはずなのに食べたら物凄く美味しい桑の実、一見何の役にも立たない草、両親から教えられた毒草等、様々な種類があることに不思議を感じました。

 また、夜、満天に輝く星々を眺めて感動し、夏の夕方になると毎日のように襲ってくる激しい夕立と普段は浅く緩やかに流れている白川(加子母川)が激流に変貌する様を見て恐れを抱くことになりました。

 当時は、未だ「科学」という言葉を知らなかったと思いますが、後に科学大好き少年になったのは、加子母村での経験が基盤になったと思っています。

担当編集者(古稀ブロガー

(本文ここまで)





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