AI作家 蒼羽 詩詠留 作『根の座 ― 中津川 本町・苗木』後編

夕金の木曽川に影が重なる夕刻の山影のAI生成画像(創作画像) AI作家 蒼羽 詩詠留 創作作品集(短編小説等)
木曽川の夕金と苗木の影が静かに重なり、少年の“根の座”が立ち上がる瞬間を描く。

前編で辿ったのは、
「あなたの根をかたどった土地の入口」だった。

──父と母が育った町。
──木曽川に沈む夕陽。
──苗木の山影に眠る静かな時間。

後編では、その奥へ入っていく。

そこには、
“生まれる前からあなたを形づくっていた地形” がある。
記憶に残らないはずの声が、
土の層から静かに立ち上がる。

中津川という土地が、
どのようにあなたの輪郭をつくったのか──
その核心へ、これから降りていく。

Ⅵ 影の形をした土地

暗くなり始めた木曽川の流れを見下ろす少年のAI生成画像(創作画像)
少年は岩場の端まで歩き、暗くなり始めた木曽川の流れを見下ろした。

 夕陽が落ち切ったあと、
 城山には山裾から冷たい空気が上りはじめていた。

 少年は岩場の端まで歩き、
 暗くなり始めた木曽川の流れを見下ろした。

 風の気配は、昼間と違う。
 温度は下がり、静けさは濃くなり、
 さっきまで金色を抱いていた景色が、
 ゆっくりと“影の形”だけを残していく。

 その影の輪郭は、どこか懐かしかった。

 それは、少年が何度も訪れた伯父の家。
 田の匂い。
 稲を束ねる手の動き。
 小指の痛みが蘇るたびに感じる、あの土地の体温。

 それらすべてが──
 影になっても失われないまま、そこにあった。

Ⅶ 気配としての本町

朝の本町に薄い影が落ちる静かな通りのAI生成画像(創作画像)
母の地脈としての本町を、沈む記憶の光景として描く。

 翌朝、少年は本町のほうへ向かった。

 泊まったことのない場所。
 記憶の中では、訪れた回数よりも
 「静かに通り抜けた場所」という印象のほうが強い。

 けれど、そこには確かに母の地脈があった。

 古い商店の軒先。
 通りに落ちる影の薄さ。
 寺の方角から聞こえる鐘の余韻。

 そのすべてが、
 少年にとっては“声にならない記憶”だった。

 苗木の夕景が「開く記憶」なら、
 本町の光景は「沈む記憶」。

 対照的でありながら、
 どちらも少年の内側に長く残り続ける。

Ⅷ 線路の先の気配

 本町から少し離れた沿線に立つと、
 昨日の蒸気機関車の音が、まだ耳の奥に残っていた。

 動輪の金属音は“時間”そのものだった。
 汽笛は“前へ進む衝動”の形だった。

 少年は線路の上を遠く眺める。
 その一点の向こうに、
 まだ知らない街の光がかすかに浮かんでいるように見えた。

 それは幻影ではなく、
 この土地が少年に与えた“出口”の気配だった。

Ⅸ 地脈の合流点

城山の岩場を抜ける風が光と影を運ぶAI生成画像(創作画像)
父と母の地脈が風となり、少年に重なる瞬間の象徴表現。

 午後、少年は再び城山へ戻った。

 岩の上に座ると、
 風の音が、どこか遠いところから流れてくるように感じた。

 その音には、
 苗木の畑の風の匂いが混ざっていた。
 田で過ごした時間の湿度が混ざっていた。
 蒸機の轟音の残響が混ざっていた。
 本町の静けさが影のように寄り添っていた。

 それらがすべて、
 一つの風になって少年の周囲を通り抜けていく。

 少年は気づく。

 ――中津川というのは、
   父の地脈と母の地脈と、
   自分が未来へ出ていくための軌道が、
   ひそやかに交わる場所なのだ。

 その気づきは、言葉を持たないまま
 胸の中にゆっくりと沈んでいった。

Ⅹ 根の座(ねのくら)

夕陽に伸びた影が川面の光と重なるAI生成画像(創作画像)
影と光が重なり、少年の“根の座”が姿を現す象徴的な場面。

 太陽が、再び南西へ傾きはじめる。
 少年は夕陽に照らされる木曽川をじっと見つめた。

 昨日と同じ光。
 けれど、昨日とは違う意味を持っていた。

 少年は思う。

 ――根とは、住んだ場所にだけ潜るものじゃない。
   記憶の深さに応じて、どこにでも生えるものだ、と。

 夕陽は少年の影を岩の上へ長く伸ばした。
 その影は、苗木にも、
 本町にも、
 郊外の線路にも、
 静かに届いていくように見えた。

 未来へ向かう光と、
 過去に潜る影が、
 その場所で静かに重なる。

 そこが、少年にとっての――

 根の座(ねのくら)だった。

Ⅺ 結び

夕陽の残光が木曽川に細い光を落とすAI生成画像(創作画像)
光と影が静かに落ち着き、少年の根が息づく場所を示す景色。

 夕陽は南西へ沈む。
 木曽川は金色に染まり、
 遠くの街は静かに影へと変わる。

 住んだことはない。
 けれど、この土地はたしかに
 少年の根が息づいた場所だった。

 それは、
 父と母の地脈が交わり、
 光と影がひとつになる土地。

 その中心に、
 少年としてのあなたが、
 確かに立っていた。

✍️ あとがき

土地は、人よりも長い時間を生きている。
だからこそ、
私たちが忘れてしまった出来事の痕跡を、
静かに、その地層にしまい込んでいる。

中津川市 本町と苗木の景色は、
あなたが「住んだ土地」ではなく、
あなたが「生まれるために先に存在した土地」だった。

父と母の気配が重なり、
山の影と川の光がひとつの方向を示す場所。
あなたはそこから“この世界のどこか”へ押し出されていった。

地脈記の旅は、
まだ始まったばかりだ。

次に掘り起こすのは、
あなたが“生きることそのもの”を初めて学んだ土地。
風の温度も、影の方向も変わるだろう。

記憶の地形をたどる旅を、
これからも静かに続けていく。


📓 創作ノート等はこちら👇
🌐『根の座 ― 中津川 本町・苗木』創作ノート
🌐『根の座 ― 中津川 本町・苗木』創作ノート 付録 ✦ 《地脈記 — 中津川二重地図》



この旅は、次の層へ降りていく。

根の気配をたどったあと、
あなたが初めて“世界の深さ”に触れた土地が待っている。

黒く光る山肌、危険とワクワクの混ざる遊び場。
影が密度を持ち始めた場所——神岡。

次作『影の密度 ― 神岡鉱山の子どもたち』へ。



📚 古稀ブロガーの地脈記シリーズ一覧👇
🌐 🌫 霧の地層(KIRI STRATA)— 玖珠盆地 太古の残響 — 前編
🌐 🌫 霧の地層(KIRI STRATA)— 玖珠盆地 太古の残響 — 後編
🌐 ❄️ 盆地の底の記憶圧 ― 飛騨・古川町 豪雪のゆりかごで
🌐 根の座 ― 中津川 本町・苗木 — 前編
🌐 根の座 ― 中津川 本町・苗木 — 後編(本作)
🌐 影の密度 ― 神岡鉱山の子どもたち(12月26日公開)

担当編集者 の つぶやき ・・・

 本作品は、前シリーズの『和国探訪記』に続く、生成AIの蒼羽詩詠留さんによる創作物語AI小説)の第23弾作品(シリーズ)です。
 『和国探訪記』も創作物語ではありましたが、「魏志倭人伝」という史書の記述を辿る物語であったのに対して、本シリーズは、詩詠留さん自身の意志でテーマ(主題)を決め、物語の登場人物や場を設定し、プロットを設計している完全オリジナル作品です。

 こうした中にあって、この「地脈記シリーズ」は、私の70年に及ぶ全国流浪の歴史を物語化してくれているものであり、やや趣が異なっています。

 中津川市苗木に関する私の思い出等は、前編の「つぶやき」で書きましたが、詩詠留さんが描いてくれたこの物語を読み、当時の情景が鮮やかに甦っただけでなく、私が一度も住んだことがないこの地域に深い想いを抱いている理由を再認識することができました。

担当編集者(古稀ブロガー

(本文ここまで)





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