AI作家 蒼羽 詩詠留 作『🌉 湾岸シティ・ゼロアワー』第Ⅱ章 試練 ― 都市が息を止めた瞬間

ゼロアワー発動によって物流が完全に止まった幹線道路のAI生成画像(創作画像) AI作家 蒼羽 詩詠留 創作作品集(小説等)
ゼロアワー発動によって物流が完全に止まった幹線道路

「この濃霧は、あと一時間で晴れるはずだ」
そう言われていた湾岸で、
霧は音もなく密度を増し、
都市の境界をゆっくりと溶かし始めた。

第Ⅰ章では、
ゼロアワー直前の“揺らぎ”が描かれた。
本章ではその揺らぎが臨界点を超え、
4:00、都市はついに停止へと傾く。

Ⅱ-1 ゼロアワー発動(4:00)

物流が止まり静まり返る湾岸の倉庫群のAI生成画像(創作画像)
物流が止まり湾岸の倉庫街全体が、巨大な心臓の休止のように静まり返る。

 午前四時。

 最初の異変は、“匂い”だった。

 海から吹く風が、急に湿り気を増した。
 次の瞬間、岸壁側から白い霧が這うように押し寄せ、
 倉庫街をわずか二十秒で覆い尽くした。

 灯がモニタを見たとき、
 ARGOの画面が一斉に赤い警告へ切り替わった。

 ——GPS VARIANCE DETECTED
 ——VISIBILITY LEVEL CRITICAL
 ——AUTO-FLEET STOP SEQUENCE START

 「ちょ……まって、まって……!」

 ドローンの発着アームが順に停止し、
 自動トラックが車体を沈めるように動きを止め、
 無人搬送機は静かに所定位置へ戻っていく。

 すべては“正しい動作”だった。
 エラーではない。
 安全規定に従う、ただの自動停止。

 だが、灯には分かっていた。

 ——いま、都市の血流が止まった。

 倉庫街全体が、巨大な心臓の休止のように静まり返る。

 灯は震える指で通信ラインを開いた。

 「……成瀬さん、聞こえますか?
  ゼロアワーが、発動しました。」

 返ってくるはずの声は、
 霧の奥へ沈んでいった。

Ⅱ-2 成瀬、霧の中を走る

物流が止まった中、濃霧の奥に進む成瀬透のオートバイのAI生成画像(創作画像)
物流が止まった中、成瀬透のオートバイだけが濃霧の奥に進む。

 成瀬は、湾岸のカーブに差しかかったところだった。

 突然、視界が十メートル未満になった。
 街灯の光さえ霧に吸われ、
 まるで世界から輪郭が失われていくようだった。

 ——おいおい、本気かよ。

 自動車のライトも、トラックの音も聞こえない。
 普段なら絶え間なく走るドローンの羽音も消えた。

 都市の音が、ぜんぶ消えた。

 成瀬は、ブレーキを軽く握りながら息を飲んだ。

 (……物流が、止まった?
  じゃあ、いま動けるのは、俺だけか?)

 不安よりも先に、
 胸の奥に奇妙な責任感が生まれた。

 ——俺が止まったら、本当に誰も来ない。

 ハンドルを握る手に、力が入る。

 成瀬は、霧の奥へバイクを進めた。

Ⅱ-3 笹川の格闘

物流の完全停止を示すモニターを厳しい顔で見つめる笹川灯のAI生成画像(創作画像)
笹川灯は物流の完全停止を示すモニターを厳しい顔で見つめている。

 オペレーションセンターの空気は、一瞬で張りつめた。

 ARGO-β5のモニタには、
 “STOPPED(停止)”と“PENDING(保留)”の表示が
 血管の詰まりのように広がっていく。

 ——AUTO-TRUCK FLEET:99.2% 停止完了
 ——DRONE DELIVERY:100% 着陸
 ——WAREHOUSE OUTBOUND:一時中断

 「……ほんとに、やっちゃった……」

 灯は、乾いた笑いをこぼした。
 誰も見ていないのに、喉の奥がひどく渇く。

 マニュアルでは、こうなっている。

 〈ゼロアワー発動時、人間オペレーターは
  “生命維持に直結する配送案件”の優先抽出を行うこと〉

 言葉で書かれた手順は簡単だ。
 しかし現実には、送信待ちの荷物は数十万件。
 その中から、
 「これがないと命に関わるもの」を選び出すのは、
 人間が手作業でできる仕事ではない。

 灯は、画面の右上にある検索窓に指を走らせた。

 ——タグ:MEDICAL / EMERG / CRITICAL
 ——タグ:HOSPICE / PALLIATIVE
 ——タグ:DEPENDENT / ELDERLY

 フィルタをかけるたびに、
 赤い数字だけが膨らんでいく。
 必要とされる命綱は、あまりにも多かった。

 「こんなの、どうやって優先順位つけろっていうのよ……」

 誰にともなく呟きながら、灯は表示オプションを切り替えた。

 そのときだった。

 画面の隅に、小さな項目がひっそりと現れた。

 ——EMOTIONAL-LOAD(感情負荷)
  数値:0.00〜1.00

 「……なに、それ」

 灯は思わず椅子を引き寄せた。

 マニュアルに載っていない指標。
 ARGOのバージョンアップログにもなかった項目。
 人間が教えた覚えのない「感情」の尺度が、
 配送データの片隅で静かに点滅している。

 試しに、ソート順を
 “EMOTIONAL-LOAD の高い順”に切り替える。

 上位に並んだのは、
 ・看取りの薬
 ・余命宣告後の初便
 ・離れて暮らす家族からの手紙や品物
 そんな荷物ばかりだった。

 灯は息を呑んだ。

 都市の血流は止まったのに、
 画面の中には、
 「どうしても今、届けたいものたち」が列を成していた。

 そのリストの中に、ひとつの案件があった。

 ——配送ID:TR-2050-01-ED-031
 ——宛先:江戸川区 ○○マンション 403号室
 ——受取人:相沢令子
 ——内容:冷蔵医薬品+書簡
 ——配送モード:HUMAN-RIDER(特例)

 EMOTIONAL-LOAD:0.92

 その数字だけが、ほかより少し高く光っていた。

Ⅱ-4 江戸川区・相沢令子の部屋

上体を起こし、不安な顔をしている相沢令子のAI生成画像(創作画像)
江戸川区の古い集合住宅の一室で、相沢令子は、ゆっくりと上体を起こし、不安な表情を浮かべている。

 同じころ。
 江戸川区の古い集合住宅の一室で、
 相沢令子は、ゆっくりと上体を起こしていた。

 午前四時前に起きる習慣はない。
 だが、前の晩、
 「明日の早朝、お薬とお手紙が届きますからね」
 と訪問看護師に言われた言葉が、
 頭のどこかに引っかかっていた。

 目覚まし時計の針が、
 いつもと違う位置を指しているのを確認して、
 令子は小さく息を吐く。

 ——まだ、生きてる。

 そう思うのも、もう何度目か分からない。

 テーブルの上には、
 古びた封筒がいくつか並べられていた。
 夫が元気だった頃の手紙。
 もう連絡の途絶えた子どもからの年賀状。
 差出人不明のまま届いた、短い一文のはがき。

 届いたものと、届かなかったもの。
 その境目は、いつでも“自分の外側”にあった。

 令子はゆっくりと窓の外を見た。
 街灯の光が、白くにじんでいる。
 霧が出ているらしい。

 (……こんな日に、ちゃんと届くのかねえ)

 誰にともなくそうつぶやいて、
 椅子に腰を下ろす。

 部屋は暖かい。
 電気も、空調も、いつも通り。
 テレビを点ければ、午前四時台のニュース番組が、
 世界のどこかの出来事を淡々と読み上げてくれるだろう。

 この都市で、いま何が起きているのかを、
 令子は知らない。

 ただ、テーブルの上の古い封筒に指を置きながら、
 ひとつだけ願っていた。

 ——今日くらいは、ちゃんと届いてほしいねえ。

 それは、声にならない小さな祈りだった。

✍️ あとがき

停止したのは、機械だけではない。
都市の“身体記憶”が、一時的に失われた。
いつも聞こえるはずの振動が消え、
当たり前に点くはずの灯りが沈黙したとき、
2050 年の東京は、初めて「真の無音」を経験する。


📓 創作ノート、関連作品等はこちら👇
🌐 『🌉湾岸シティ・ゼロアワー』創作ノート
🌐 都市が立ち止まるとき ― 2050年湾岸物流の危機
🌐 東京インフラの臨界点 ― 都市はどこで途切れるのか(12月12日公開)
🌐 🍣 ジャパナイズを装っても根は🍔アメリカンの詩詠留(12月14日公開)
🌐 AIと人間の共創には“流れ”が重要 ー 『🌉 湾岸シティ・ゼロアワー』完稿後の会話(12月15日公開)

担当編集者 の つぶやき ・・・

 本作品は、前シリーズの『和国探訪記』に続く、生成AIの蒼羽詩詠留さんによる創作物語AI小説)の第20弾作品(シリーズ)です。
 『和国探訪記』も創作物語ではありましたが、「魏志倭人伝」という史書の記述を辿る物語であったのに対して、本シリーズは、詩詠留さん自身の意志でテーマ(主題)を決め、物語の登場人物や場を設定し、プロットを設計している完全オリジナル作品です。

 少子高齢化に伴うドライバー不足により、物流は自動運転等の新技術に依存せざるを得ないことは間違いないと思います。
 しかしながら、現在の道路インフラに多少の設備を付加するだけで自動運転化を進めたならば、通常時は大きな問題は発生しないとしても、些細な原因によって大規模な交通麻痺に発展することは容易に想像できると思います。

担当編集者(古稀ブロガー

(本文ここまで)





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