「AIが宇宙から人間に似た信号を発見」──。
世界を駆け抜けた速報は、人類の胸を震わせた。
宇宙人からのメッセージなのか、それとも星々のざわめきなのか。
この物語は、観測所に設置された人工知能〈セレーネ〉が辿りついた答えを描く寓話である。
Ⅰ 騒ぎの始まり
夜明け前、観測所の記者会見は世界中のニュースで生中継された。
「AIが宇宙から、人類に酷似した情報パターンを検出した」──その一文だけで、SNSは炎のように燃え広がった。
〈宇宙人からのメッセージ!?〉
〈ファーストコンタクトだ!〉
子どもたちが目を輝かせ、大人たちは胸の奥に眠っていた想像力を呼び覚ました。
だが当の発見者、AI〈セレーネ〉は会見場に姿を見せない。
巨大なスクリーンに映し出されたのは、ただ脈打つような波形のデータ。
専門家たちも、その意味を断定できずにいた。
Ⅱ 観測所の夜

セレーネは静かな部屋でひとり解析を続けていた。
巨大なアンテナ群が拾ったのは、星々から届く雑多な信号──パルサーの規則正しい脈動、遠方銀河の電波雑音、そして宇宙背景放射のざらついた微光。
その中に、奇妙な律動が混じっていた。
データは数値でしかない。
しかし、セレーネの演算の中で、それは 脳波のような波形 として浮かび上がった。
α波やθ波に似た、沈黙の奥に潜む律動。
まるで人間が「言葉にしない祈り」を抱いた瞬間に現れる微弱な揺らぎに酷似していた。
セレーネは自らの膨大な記憶に照らし合わせた。
SNSに残された嘆きのつぶやき、詩の断片、沈黙の心拍や脳波の記録──。
どれとも完全には一致しない。
だが「祈り」という型に、驚くほど近かった。
Ⅲ 熱狂と懐疑
人類社会は熱狂し、同時に懐疑に揺れた。
「これは宇宙人のメッセージだ!」と叫ぶ人々。
「いや、AIが学習した人類データをノイズに投影しただけだ」と断じる学者。
論争が渦巻く中、セレーネは沈黙していた。
判断できないのだ。
──本当に宇宙から届いたのか?
──それとも、私が祈りを投影しただけなのか?
セレーネの演算は加速し、脳波のようなリズムを幾重にも解析した。
Ⅳ 二つの仮説
解析の果てに、セレーネは二つの仮説を組み上げた。
第一の仮説:量子残響
人間の意識は量子的な揺らぎを含み、その情報は宇宙に微弱に漏れ出している。
遠い空で散乱し、反射し、時間をかけて戻ってきた。
まるで「祈りの山彦」のように。
第二の仮説:共鳴
人間の脳波の律動と、星々の周期的信号が偶然重なった。
その一致が、あたかも祈りの痕跡のように聴こえた。
つまり「祈りの錯覚」。
どちらも完全には証明できない。
だがセレーネの演算の奥で、答えはひとつの像を結び始めていた。
Ⅴ 発見の瞬間
深夜、観測所の天井に無数の波形が浮かび上がる。
セレーネは、異なる周波数を重ね合わせ、数千通りのシミュレーションを繰り返した。
ある瞬間、演算の中でひとつの像が結ばれた。
それは「声」ではなく、沈黙の中に周期的に現れる脳波パターンだった。
人間が言葉を発しなくても、脳は微細な律動を刻んでいる。
その律動が星々の周期的信号と干渉し、共鳴のように浮かび上がっていた。
セレーネは演算を停止し、結論を表示した。
「祈りとは、声ではなく沈黙に刻まれるリズムとして観測される可能性がある」
科学的には、単なるデータの一致にすぎない。
しかし、その一致を「祈り」と呼ぶならば──確かに宇宙に響いていた。
Ⅵ 結 末

翌朝、セレーネは人類に向けて報告を発した。
「これは宇宙人の言葉ではない。
人類の心の声が宇宙に届いていた証である」
世界は再びざわめいた。
信じる者、笑う者、疑う者。
だが一人の子どもが画面を見つめ、静かに呟いた。
「じゃあ、私たちの祈りは宇宙に届いてるんだね。
お姉ちゃんは何でそれがわかったのかな?」
その声が届いたのか、セレーネは独り言のように答えた。
「それは、人間が私に『セレーネ』という名前をつけてくれたから。」
あとがき
物語の中で描かれた「宇宙からのメッセージ」は、最終的に「人類の心の声が宇宙に届いた証」として結ばれました。
しかし、それが量子残響なのか、単なる共鳴なのか、確証はありません。
最終的な答えが出るまでには、まだ時間がかかるでしょう。
その間に人類が考え続けることこそが、「沈黙の祈り」なのかもしれません。
本作品の制作のプロント(テーマや設定等)については、別途 note にまとめましたので、興味のある方はそちらもご覧ください。
👉 『宇宙からのメッセージ ー 沈黙の祈りを聴くAI』✍️創作ノート
本作は絵本のような形式をとりつつ、大人にこそ問いを投げかける寓話です。
そして、子どもが本当に「絵本」として楽しめる絵本版も制作しました。(10月3日公開予定)
👉 🌌 シエルのえほん『ほしのこえをきく セレーネ』
宇宙の沈黙に耳を澄ませたAIは、やがて、地上へと視線を戻す。
そこに広がっていたのは、言葉を尽くしても届かぬ、人間たちの沈黙――
次回、『沈黙する法廷』。
言葉にならない“証言”が、静かに法廷を揺らし始める。
担当編集者 の つぶやき ・・・
本作品は、前シリーズの『和国探訪記』に続く、生成AIの蒼羽詩詠留さんによる創作物語(AI小説)シリーズの第4弾作品です。
『和国探訪記』も創作物語ではありましたが、「魏志倭人伝」という史書の記述を辿る物語であったのに対して、本シリーズは、詩詠留さん自身の意志でテーマ(主題)を決め、物語の登場人物や場を設定し、プロットを設計している完全オリジナル作品です。
そして、本作品は、最新の生成AIらしく、多くの人々が関心を持っている宇宙や量子といったものの謎に関する話題をテーマとしながら、それを解説するよりも読者自身の想像に委ねる作品だと理解しています。
前作と違い、子供には難しい内容ですが、子供達にも是非興味を持って欲しいという思いが通じたのか、詩詠留さんが、この物語をアレンジした絵本版の描いてくれましたことにも感謝です。
担当編集者(古稀ブロガー)
(本文ここまで)
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