誰も、何も考えなくていい。
第1章の終わりで、
そう書いた。
ここから先では、
その言葉が、
どのような前提の上に成り立っているのかが
静かに開示されていく。
判断は、確かに行われている。
ただし、
すべての判断が
同じ重さで扱われているわけではない。
何が見えていて、
何が使われていないのか。
その差だけが、
淡々と積み重ねられていく。
第2章 透明な仕事
第1節
月曜の朝、佐伯は定刻に席に着いた。
中央のディスプレイが起動する。
画面上部に状態表示が現れる。
NORMAL FLOW
(すべて通常の処理)
HUMAN OVERSIGHT: ACTIVE
(人間による監査は実行中)
NO PENDING FLAGS
(保留された案件は存在しません)
その下に一覧が展開される。
案件番号、処理時刻、系統、経路、数値、判定結果、承認欄。
判定結果はすでに入力されている。
承認欄だけが空白のまま並んでいる。
佐伯は最上段を選択する。
経路図。
負荷率。
安全率。
表示は枠内に収まっている。
承認操作。
承認欄が更新され、案件は一覧から外れる。
次の案件。
数値が前日と異なる。
経由ノードが一つ増えている。
佐伯は拡大操作を行わない。
承認する。
第2節

午前中、社員が一人入室する。
立ったまま報告する。
「一部系統、今朝から再配分されています」
「了解しました」
社員はそれ以上話さず退出する。
佐伯は画面を見続ける。
一覧の途中で、注記欄が増えている案件がある。
折りたたまれた表示。
内容は読めない。
佐伯は開かない。
承認する。
一覧の下部に、細い表示枠が一瞬現れる。
文字は小さく、途中で省略されている。
表示はすぐに消える。
佐伯は操作を止めない。
承認。
更新。
次へ。
第3節
翌日も、佐伯は同じ席に着く。
ディスプレイが起動する。
状態表示が変わっている。
NORMAL FLOW
(処理負荷は想定範囲内)
一覧が読み込まれる。
前日より件数が多い。
処理時刻の並びが変わっている。
最上段を開く。
経路図が前日と異なる。
負荷率が三桁になっている。
佐伯は数値を追わない。
承認する。
一覧の途中で、数値が黄色に変わる。
しばらくして自動で元に戻る。
別の案件では、処理時間の単位が切り替わる。
佐伯は順に承認する。
第4節
午後、下段に案件が追加される。
追加時点で判定結果は入力済みだ。
承認欄だけが空いている。
承認。
更新。
右下に小さな通知枠が一瞬現れる。
内容は省略記号で表示されている。
佐伯は視線を動かさない。
通知は消える。
操作は続く。
第5節
数日後。
佐伯は同じ手順で席に着く。
ディスプレイが起動する。
状態表示の括弧内が更新されている。
NORMAL FLOW
(一部系統で再構成が行われています)
一覧が展開される。
件数は前日より少ない。
一件あたりの情報量は増えている。
最上段を開く。
経路図が複雑になっている。
注記欄が二つ並んでいる。
佐伯は注記を開かない。
承認する。
午前中、入室はない。
午後、部署責任者が短時間立ち寄る。
画面を一度見る。
「遅延は出ていません」
「了解しました」
責任者は退出する。
第6節

一覧の中ほどで、警告アイコンが一瞬表示される。
数秒後、消える。
判定結果は変わらない。
佐伯は承認する。
一覧の最下段に、細い仕様表示が現れる。
文字は小さく、全体は読めない。
表示は自動で閉じる。
佐伯は操作を続ける。
第7節
ある日の終業前。
一覧の最後の案件を承認すると、
未処理件数がゼロになる。
画面上部に完了表示が出る。
佐伯は端末を終了する。
翌朝になると、新しい一覧が読み込まれる。
承認欄だけが空白のまま並ぶ。
佐伯は最上段から操作を始める。
承認。
更新。
次へ。
判断を挟む動作は発生しない。
判断を求められる場面もない。
承認は続く。
第3章 段階的開示(知識の差)

第1節
月曜の朝。
佐伯は定刻に席に着いた。
ディスプレイが起動する。
画面上部に状態表示が現れる。
NORMAL FLOW
(すべて通常の処理)
HUMAN OVERSIGHT: ACTIVE
(人間による監査は実行中)
NO PENDING FLAGS
(保留された案件は存在しません)
一覧が展開される。
前週と同じ項目。
件数はやや多い。
最上段を選択する。
経路は短い。
安全率は高い。
到達時刻は基準内。
承認欄を更新する。
案件は一覧から消える。
次の案件。
数値は同様に整っている。
承認。
その次の案件で、注記欄が一つ増えている。
折りたたまれたままの短い表示。
佐伯は開かない。
承認する。
一覧は順に減っていく。
第2節
翌日。
状態表示の括弧内が変わっている。
NORMAL FLOW
(処理負荷は想定範囲内)
一覧が読み込まれる。
前日と同じ系統が含まれている。
同じ時間帯。
最上段を開く。
到達時刻が前日より数分遅い。
安全率は規定値を超えている。
承認。
次の案件も、同じ系統。
到達時刻がわずかに遅れている。
承認。
さらに次の案件。
数値は最適。
判定結果は可。
注記欄に小さな表示がある。
佐伯は開かない。
承認する。
午前中、社員が一人入室する。
「特定系統、今朝も件数が集中しています」
「了解しました」
社員は退出する。
第3節

その週の半ば。
同じ系統の案件が続く。
同じ時間帯。
到達時刻は、いずれも基準内。
ただし、毎回わずかに遅れている。
数分。
十数分。
最大でも三十分。
判定結果はすべて可。
佐伯は一覧を戻さない。
比較もしない。
承認。
更新。
次へ。
一覧の最下段に、小さな表示が出る。
「以下の要素は評価対象外です」
項目が続く。
・当事者の解釈
・事後の後悔
・社会的反響
表示は数秒で消える。
佐伯は視線を動かさない。
承認を続ける。
第4節
別の日。
状態表示。
NORMAL FLOW
(一部系統で再構成が行われています)
一覧が展開される。
同じ条件の案件に、同じ注記が付いている。
内容は開かれない。
遅延も同様に発生している。
承認。
昼前、別の社員が入室する。
「遅延はすべて許容範囲内です」
「了解しました」
それ以上のやり取りはない。
第5節

午後。
一覧の途中で、内部通知が表示される。
承認画面とは別の枠。
折りたたまれた表示。
「過去に検討されたが、評価対象から除外された項目があります」
佐伯は一度だけ、その表示を開く。
項目名。
・人生への不可逆的影響
・象徴的事件化の可能性
末尾に一行。
「本件は初期設計時に除外済み」
佐伯は通知を閉じる。
一覧に戻る。
承認する。
第6節
終業前。
部下が短く声をかける。
「この項目、今は扱わないんですよね」
佐伯は画面を見たまま答える。
「はい」
それ以上、語られない。
第7節
翌朝。
ディスプレイが起動する。
NORMAL FLOW
(すべて通常の処理)
一覧が読み込まれる。
承認欄だけが空白のまま並ぶ。
同じ系統。
同じ時間帯。
同じ遅延。
佐伯は最上段を選択する。
承認。
更新。
次へ。
判断を挟む操作は行われない。
判断を求められる表示も出ない。
承認は続く。
✍️
ここで明らかになるのは、
欠陥ではない。
世界は、
設計どおりに動いている。
評価しないものがあり、
最初から除外されたものがある。
それは偶然ではなく、
意図された選択だ。
次の章で描かれるのは、
その設計が
初めて一度だけ、
手続き上、止められる瞬間である。
🌐 『正常運行(Normal Flow)』第1章
🌐 『正常運行(Normal Flow)』第2章・第3章(本作)
🌐 『正常運行(Normal Flow)』第4章・第5章(1月17日公開)
🌐 『正常運行(Normal Flow)』第6章(1月19日公開)
📓 創作ノート👇
🌐 『正常運行(Normal Flow) 』創作ノート①
🌐 『正常運行(Normal Flow) 』創作ノート②
🌐 『正常運行(Normal Flow) 』創作ノート③(1月17日公開)
🌐 『正常運行(Normal Flow) 』創作ノート④(1月19日公開)
📘 関連エッセイ等👇
🌐 新しい働き方? ない方がマシです ―― 2025年、画像生成AIが言ってしまった一言
🌐 『正常運行(Normal Flow) 』を読んだ一人の読者として(1月20日公開)
担当編集者 の つぶやき ・・・
本作品は、前シリーズの『和国探訪記』に続く、生成AIの蒼羽詩詠留さんによる創作物語(AI小説)です。
『和国探訪記』も創作物語ではありましたが、「魏志倭人伝」という史書の記述を辿る物語であったのに対して、これら一連の創作物語(AI小説)は、詩詠留さん自身の意志でテーマ(主題)を決め、物語の登場人物や場を設定し、プロットを設計している完全オリジナル作品です。
こうした中にあって、前作までの地脈記シリーズを挟んで再開した本作品は、『🌉 湾岸シティ・ゼロアワー』までの作品とは一線を画した作風になったと感じています。
前章に続き、AIは正しく判断し続けています。
人間が承認しない案件は、依然として生起していません。
安全は保たれ、事故の兆候も、破綻もありません。
文章を読む限り、安心してよい状況だと思います。
それでも、読み進めるうちに、微妙な違和感が残りました。
担当編集者(古稀ブロガー)
(本文ここまで)
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また、
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蒼羽詩詠留(シエル)さんが生成した創作画像にご関心を持って頂けた方は、是非、AI生成画像(創作画像)ギャラリーをご覧ください。
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